イヌザンショウ

犬山椒

(ミカン科 サンショウ亜科 イヌザンショウ属)


 雌雄異株落葉低木小高木。高さは2m~4m程度になる。和名はサンショウと似るが、これと比較して芳香がないことによる。温帯性落葉広葉樹林~暖帯性常緑広葉樹林の林内に自生するが、密生することはあまりない。特に林冠ギャップや大量伐採跡地などの植性撹乱が起こった場所に多く見られる。カラスザンショウと混生する場所では、しばしばこれとの種間雑種であるコカラスザンショウ(f. × fauriei)が発生する。


分布:本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国大陸に分布する。県内では全域に広く分布し、各種の樹林内で低木層に混生する。

樹幹:灰褐色。若木の樹皮には鋭い棘を持つが、老木ではこれがコブ状の突起に変わり、ゴツゴツする。幹は直立することが多く、特に1m以下の若木では、頂芽が健在な場合にはほとんど枝を分けることはない。
枝葉:中型~やや小型の奇数羽状複葉で、長さは10㎝~20㎝程度。葉軸は明瞭で翼などはなく、互生する。小葉は11枚~21枚程度で、小葉柄はごく短い。長さ2㎝~4㎝の長楕円形広披針形。先端は尖らない。比較的顕著な羽状脈をもち、脈端は側縁に達する。側縁は細かい鋸歯があり、わずかに波打つ。洋紙質で、表面は光沢をもつ。サンショウのような芳香はない。若枝や葉柄の基部には、鋭い棘が互生する。
単性虫媒花。花期は7月~8月で、葉の萌芽より遅い。当年枝の先端に散形花序を出し、黄緑色の花を多数つける。花弁と萼片は5個。
果実分離果(2裂)。直径6㎜~7㎜の楕円状球形で赤褐色、熟すと裂けて内部の種子を出す。種子は直径5㎜の球形で、黒色で硬く、光沢をもつ。動物散布型で、鳥類が主。熟した果実はわずかにハッカに似る弱い芳香を持つ。
増殖法実生が可能。 発芽率は80%前後。
保護:指定されていない。
その他:人間にはほとんど利用されていない。種子の寿命は20年以上とされ、 周囲の植性撹乱が起こるのをじっと待ち続ける強さを持つ。

種子

メイン ページトップ