カラスザンショウ

烏山椒

(ミカン科 サンショウ亜科 イヌザンショウ属)


 雌雄異株落葉高木。高さは5m~20m程度になる。サンショウ類では唯一の高木で、和名は全体が大きいことによる。長さ80㎝にも及ぶ巨大な奇数羽状複葉を繁らせてそびえたつ様子は、さながら熱帯のシダ植物のようである。暖帯性常緑広葉樹林(照葉樹林)に混生し、優占種にはならないが、林冠ギャップが発生した場合には先駆的に進出する。イヌザンショウとの混生地では、しばしばこれとの種間雑種であるコカラスザンショウ(f. × fauriei)が発生する。


分布:本州、四国、九州、伊豆諸島、南西諸島全域。 国外では朝鮮半島南部、中国大陸南部、台湾、フィリピンに分布する。県内では全域に広く分布するが、北部では少なく、南部の丘陵地帯に多い。

樹幹:灰褐色。若木の樹皮には鋭い棘を密生するが、老木ではこれがコブ状の突起に変わり、ゴツゴツする。幹は直立する。
枝葉:大型の奇数羽状複葉で、長さは30㎝~80㎝。葉軸は明瞭で翼などはなく、互生する。小葉は19枚~33枚程度で、小葉柄は明瞭。長さ5㎝~15㎝の広披針形。基部は丸く、先端は鋭く尖る。比較的顕著な羽状脈をもち、脈端は側縁に達する。側縁は微細な鋸歯があり、わずかに波打つ。洋紙質で、表面は鈍い光沢をもち、裏面は粉白色。葉や若枝にはサンショウのような芳香はないが、やや脂っこい臭いがある。若枝や葉柄の基部には、鋭い棘が密生し、他のサンショウ類のように整然と並ぶことはない。
単性虫媒花。花期は7月~8月で、葉の萌芽より遅い。当年枝の先端に散形花序を出し、黄緑色の花を多数つける。花弁と萼片は5個。
果実分離果(2裂)。直径6㎜~7㎜の楕円状球形で紅紫色、他種と違って熟しても裂けず、一部は房ごと落下する。落下した果実は乾燥すると裂けて種子を出す。種子は直径6㎜~7㎜の球形。黒紫色で硬く、光沢をもつ。動物散布型で、鳥類が主だが、落下したものを小型齧歯類が貯蔵することがある。
増殖法実生が可能。
保護:人間にはほとんど利用されていない。
その他:遠目に見るとニガキ科のシンジュ(ニワウルシ)に似るが、これには樹皮に棘や瘤はないので近寄れば簡単に見分けられる。

休眠芽 未熟果 壮年木

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