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凡例:〔 〕内は訳註
法務部が立法予告した差別禁止法案で非差別対象として「学歴、家族形態および家族状況、性的志向、出身国家、言語、犯罪および保護処分の前歴」等7項目が削除されたものと知れわたるや、社会的な抵抗が激しくなっている。法務部は保守的なキリスト教界と財界の圧力で、はじめ国家人権委員会(註1)が勧告した内容に比べても非常に不充分な差別禁止法案を立法予告すると、主要な非差別事由7項目(註2)を最初から除外してしまった。性少数者団体を含めて人権社会団体では、差別を助長する差別禁止法案という評価とともに立法阻止運動までしなければならない笑えない状況が広がっている。
韓国社会を含めて人類の歴史において組織的で大規模な人権侵害の根幹には差別と不平等が占めていた。そのうえ脆弱集団は日常において、または非常時期に彼らがもっている特質と特性による差別から社会的な排除と人権侵害にさらされてきた。それゆえ国際人権規範において非差別と平等は、主要な価値であると同時に権利を実現する適用原則として定着してきた。性的志向、家族形態、出身国家等、ある個人の特別な特質やある人間を他人と区別する特徴が、その人が享受しなければならない人権の程度と種類に影響を及ぼすはずがない。人間がもつ多様な実体性が差別事由になり得ないことは明らかだ。それでも法務部は、そのような特質を分離して、あるものは非差別領域に区分し、またほかの領域は差別領域に分ける、実にあきれる振る舞いを演出している。
特に戸主制および戸籍制廃止以後、新しい身分登録制制定運動を行ってきた目的別身分登録法制定共同行動(以下、共同行動)は、法務部が差別禁止対象として「家族形態および家族状況」を排除したことを強力に糾弾する。法務部の発想は、変化する韓国社会の人口学的な分布を無視することはもちろん、血縁に基づく正常家族の規範性を制度として定着させるという発想だ。統計庁資料によれば、両父母と未婚の子女で構成される典型的な核家族は全体家族形態中で50%にすぎない。そのほかは、ひとり親家族、再婚家族、子女をもたない夫婦家族、雁がねパパ(註3)として通う別居家族、同棲、同性愛パートナーシップ、非婚等、多様な形態の家族および個人間結合が存在する。
多様な家族とその構成員に対する差別はあまりにも日常的にできあがっているが、これを規制すべき法自体がないためになおさら可視化できていない。去る2005年、共同行動の調査によれば、30大大企業および系列社の75%が入社志願時、家族関係情報を要求して採用可否を判断する直間接的基準としている。学校でひとり親家族の子女たちが「欠損家庭」だと後ろ指さされることは一度や二度ではないし、離婚した女性はチョンセ(註4)資金貸し出しはおろか、金融機関で「信用不良者」扱いされるのが常だ。離婚すれば職場通いを嫌われ、いわゆる「結婚適齢期(!)」を越した非婚ならば昇進も難しい職場文化、依然として明らかにならない深刻な差別様態だ。
それにもかかわらず、法務部が国際人権規範を云々しながら家族形態と家族状況による差別を事実上助長するなりふりこそは、国際人権規範を真っ向から歪曲し、逆らうことだ。法務部に問いたい。差別禁止法制定を通じてどんな差別を予防したかったのかと。財界と保守的なキリスト教集団が望むならいつでも非差別対象を削除することができるのかと。またわれわれは、法務部が戸主制および戸籍制廃止運動過程でもっとも人権親和的でない代替法案を提示したことを記憶しているし、国家身分登録業務を法務部の所管業務に移すために代替立法が遅延した事実を想起したい。このような法務部が人権基準に符合もしない法案を発議するとは情けないことだ。法務部は今すぐ非差別項目に削除した「学力、家族形態および家族状況、性的志向、出身国家、言語、犯罪および保護処分の前歴」等七つを復元し、きちんとした差別禁止法を制定しろ!
ひとつ、法務部は削除された家族形態および家族状況等七つの非差別事由と差別救済制度を即刻復元しろ!
ひとつ、一部保守キリスト教界は性少数者たちに対する魔女狩りを即刻中断しろ!
2007年11月29日 16:56:52
(2008-02-04 井上和彦・仮訳 訳文未定稿
声明の訳文については"Copyleft"を宣言します。)
- 韓国国家人権委員会法 第1条
- この法は、国家人権委員会を設立し、すべての個人が有する不可侵の基本的人権を保護し、その水準を向上させることにより、人間としての尊厳と価値を具現して民主的基本秩序の確立に寄与することを目的とする。
2001年11月25日設立された国家人権委員会は、立法・司法・行政のどの機関からも独立した、国際人権法に基づいて作られた国内人権機関であり、私人間の人権侵害を救済するだけではなく、既存の権力機関による人権侵害を牽制・監視できる権限を持っている。また、韓国の国民だけでなく韓国内に住む外国人すべてをも対象としている。
発足以来2500件を超える平等権侵害、差別行為に関わる申し立てを受理し、権利救済を図ってきた。2006年7月には国務総理に対して「差別禁止法」の制定を勧告した。また2003年3月にはイラク戦争に反対する公式意見書も発表している。
【原典:移住労働者と連帯する全国ネットワーク「イベント情報」】
李明博当選者の大統領引き継ぎ委員会は、2008年1月16日、立法・司法・行政のいずれの機関からも独立した国家人権委員会を大統領直属機構に改編するという計画を発表した。国家人権委員会の大統領直属機構化に反対する人権活動家たちは、1月24日、ソウルの独立門前で記者会見を開いた後、明洞聖堂前で籠城に入った。
【写真3の1:2008年1月24日、ソウル独立門前で横断幕を広げて記者会見を行う人権活動家たち。横断幕には「国家人権委員会/大統領直属機構化反対する/独立的国家人権委員会保障せよ」と書かれている。(撮影:茶山人権委員会 パクキムヒョンジュン)】
【写真3の2:2008年1月27日、明洞聖堂前で、「2Mb大統領」(「2」は「イ」と発音し、イ・ミョン・バクの頭文字)と書かれたシャベル(強圧的な経済開発の象徴)をもつ悪魔が「国家人権委員会」を背後から操り人形のように操るパフォーマンス。(撮影:ウンチェ)】
【写真3の3:2008年1月29日夜、明洞聖堂前のろうそく集会参加者たち。プラカードには「機能はそのままなのに所属なんかなぜ変えるのか?国家人権委員会大統領直属反対!民家協」と書かれている。(撮影:茶山人権委員会 パクキムヒョンジュン)】
【写真:青瓦台(大統領府)迎賓館前で差別禁止法案に反対する一人デモ。七色の虹より多い八色に塗り分けられたメッセージボードには、次の8項目が書かれている。(原典:민중언론-참세상〔民衆言論−チャムセサン(真実の世のなか)〕「[액트48호-이슈]무지개 너머, 차별 없는 세상을 꿈꾸다〔[アクト48号−イシュー]虹を越え、差別のない世のなかを夢見る〕」)】
- 性的志向
- 学力
- 家族形態/家族状況
- 犯罪/保護処分前歴
- 病歴
- 出身国家
- 言語
- そして
性別実体性も
渡り鳥の雁がねのように、家族と赴任先の間を行ったり来たりする単身赴任パパ
不動産の所有者に一定の金額を預けてその不動産を一定期間借りるときの関係を言う語。家賃を月々支払う必要がなくその不動産を返すときは預けた金の全額が返済される。(小学館『朝鮮語辞典』)