2006年7月6日

社会保険庁長官 村瀬 清司

やぶれっ!住基ネット市民行動
代表 〔氏名省略〕〔註1〕

年金改革と住基ネットについての再質問書

ご多忙中、私たちの5月1日付け「年金改革と住基ネットについての質問書」(以下「質問書」と略記)に、6月8日付けでご回答(以下「回答」と略記)いただき、ありがとうございます。

ご回答いただいた中で、何点か再確認したい点があり、できれば説明の場を設けていただきたいところですが、場の設定は難しいとのことでしたので、改めて質問をさせていただきます。

つきましては、ご多忙とは思いますが、7月28日までに、末尾に記載した代表連絡先までご回答をお願いするとともに、改めて説明の場を設けることのご検討お願いいたします。

なお質問と回答は、私たちのウェブ・サイト(http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/)にて公開を予定しています。

再質問事項
(番号は質問書の番号に準じます )

(3)国民年金未加入者への適用勧奨のための住基ネット利用について

「質問書」では、「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」と略記)で、住基ネットから本人確認情報の提供を受け34歳到達者のうち国民年金未加入者を把握することについて、届出等を行った者の居住確認という住基ネットの目的を越える利用とはならないか、おたずねしました。

「回答」では、住民基本台帳法第30条の34に定められた事務であれば、その「遂行に必要な範囲で利用できるものと承知しています」とされています。しかし「法律案」で追加される「国民年金法による被保険者に係る届出に関する事務」で、届出をしていない「未加入者」について本人確認情報を利用し、しかもデータマッチングにより新たに「年金未加入者」という個人情報を作り出す利用法が定められているとは、理解できません。

改めて見解をおうかがいします。

(4)基礎年金番号の法定化について

「質問書」を提出して以降、政府の経済財政諮問会議が年金や介護、医療に関する給付と負担の情報を一元管理するための「社会保障番号」導入の検討を「骨太の方針」に盛り込むことを決め、導入検討のため厚生労働省、総務省、国税庁など関係省庁による連絡会議を設置することが報じられました。

私たちは基礎年金番号が住民票コードの代わりに、あるいは住民票コードとデータ連携して、社会保障番号として、行政内外でさまざまな業務に「統一コード」として汎用的に使用されることを危惧しています。そこで、基礎年金番号について、改めておたずねします。

ア、具体的な活用方法

「回答」では、併給調整等が示されています。今後とも利用は年金事務とこれら併給調整に限られるのでしょうか。

イ、基礎年金番号をつかった社会保険業務間のデータの結合の有無

「回答」では、「基礎年金番号を用いることにより、各種給付金の併給の有無等をより正確に確認することができる」とされています。

これは正確に確認するために、健康保険や労災年金事務に基礎年金番号を付番し、データ照合をしていくと理解してよろしいですか。

ウ、利用事務の法定化について

「現在、国会に提出中の国民年金法改正案で位置付ける」と回答されています。

改正案をみるかぎり、基礎年金番号の利用事務については、第14条(国民年金原簿)の中で「基礎年金番号(政府管掌年金事業の運営に関する事務その他当該事業に関連する事務であつて厚生労働省令で定めるものを遂行するために用いる記号及び番号であつて厚生労働省令で定めるものをいう。)」とあるだけだと思われますが、他に利用事務を規定した箇所があればお示しください。

また、この第14条の規定では「その他当該事業に関連する事務」とされるなど、利用事務が不明確です。改正案第108条の四(基礎年金番号の利用制限等)では、住基法の利用制限規定を準用するとしつつ、住基法のように利用事務を別表で法定せず厚生労働省令に委ねるとしたのは何故ですか。

また、利用事務に関する厚生労働省令案(意思形成過程文書を含む)があれば、その条文案をお示しください。

エ、変更履歴について

基礎年金番号を変更した場合、変更履歴を管理していますか。

オ、「社会保障番号」導入の検討について

関係省庁で設置される導入検討のための連絡会議において、社会保険庁としては、社会保障番号と基礎年金番号の活用について、どのような立場でのぞまれますか。

(5)「年金カード」について

「回答」では、「導入を検討することとしていますが、現時点において、具体的な内容やスケジュールについては未定」とのことでした。

新聞では、2006年度にニーズ調査を行うと報じられており、調査の予算等、未定とは思われません。現時点で予定されていることをお示しください。

(6)20歳到達者の本人確認情報の利用について

回答では「住民基本台帳法第30条の7第3項同法別表第一第77項及び住民基本台帳法別表第一から別表第五までの総務省令で定める事務を定める省令平成14年総務省令第13号)第1条第77項〔註2〕第1号の定めにより、本人確認情報の提供を受けている」となっています。

総務省令第1条第77項第1号は「被保険者の資格の取得の届出を行う者の氏名、出生の年月日、男女の別及び住所の確認」となっています。届出を行っていない20歳に達した者すべての本人確認情報をあらかじめ一括して利用できるとは、私たちには解釈できません。

利用がどのような解釈によるものであるか、具体的にご説明ください。

(7)年金受給者データベースと住民票コードについて〔註3〕

「質問書」の(7)「住基ネットを利用した現況届の廃止について」と(8)に対する回答で、年金システムと住民票コードの関係について、以下のことがわかりました。

  • 現在、社会保険庁の管理する年金受給者のデータベースに、住民票コードが収録されているものはない。
  • 今後、「現況届」の廃止をするにあたり、事前準備として、社会保険庁で保有している情報(氏名、性別、生年月日、住所)と住基ネットの情報を突合し、本人特定ができた方については住民票コードを受給者情報に収録し、住民票コードを確認できた方については、住民票コードにより住基ネットに照会し、現況確認を行う。

この回答をうけ、住民票コードの利用についておたずねします。

  • ア、従来、「氏名、性別、生年月日、住所」で行っていた照合を、今後、住民票コードを使用しなければならない理由。
  • イ、事前準備での本人特定を誤れば、誤った現況確認がされるおそれがあります。事前準備での突合方法と作業日程を、以下の2点をふくめ説明してください。
    • 突合の際、4情報のどこまでの一致をもって本人と特定するのか。
    • 社会保険庁から地方自治情報センターに年金受給者全件の4情報を照会し、該当すると思われる者の本人確認情報の回答をうけるのか、それとも地方自治情報センターから年金受給年齢の全国民の本人確認情報の提供をうけ社会保険庁で年金受給者情報と突合するのか。
  • ウ、受給者情報に収録した住民票コードは、いつ「消去」されるのか。
  • エ、今後再構築される予定の年金システムにおいて、住民票コードはどのような範囲で、どのように年金システムの端末機に表示されるのか。
  • オ、収録した住民票コードは、現況届の廃止以外に、どのような年金関連事務に利用されるか。
  • カ、地方自治情報センターへの照会以外に、住民票コードを利用することはあるか。
  • キ、「質問書」(2)の回答で、たとえば国保短期被保険者証交付のための市町村との情報交換などは、「氏名・生年月日・住所等又は基礎年金番号を活用して確認を行います」とされているが、今後この確認に住民票コードを使用することはないか。
  • ク、死亡届の省略にあたっての確認方法は今後検討となっているが、検討が必要などのような課題があるか。なぜ、「現況届」の廃止といっしょに実施できないのか。
  • ケ、収録した住民票コードの管理について、社会保険庁と財団法人地方自治情報センターとの協定書でどのように規定されるのか。
  • コ、社会保険庁内での住民票コードの利用・管理についての規程の有無、今後の作成予定。

(8)現行の被保険者の個人データを管理するシステムと、住基ネットから提供された本人確認情報との関係について

  • ア、本人確認情報を照会する端末機の設置場所や設置台数は、セキュリティ確保の観点から回答できないとのことでした。その公表がセキュリティに関わるとは思われませんが、どのような理由によるのでしょうか。
  • イ、本人確認情報を照会する端末機の業務外閲覧はなかった、との回答でしたが、どのようにそれを確認したか(アクセスログによる確認か、その他の方法か)、ご説明ください。
  • ウ、20歳到達による第1号被保険者の適用勧奨のために提供をうけた本人確認情報について、保存の期間、磁気媒体の保管方法、磁気媒体の初期化方法をお知らせください。

(連絡先)〔省略〕