2006年5月1日

社会保険庁長官 村瀬 清司

やぶれっ!住基ネット市民行動
代表 〔氏名省略〕〔註1〕

年金改革と住基ネットについての質問書

私たちは、住民基本台帳ネットワーク・システム(住基ネット)に対して、住民票コードによって個人情報の照合・結合が容易・迅速になり、住基カードにより個人の行動が追跡可能となり、行政による監視・管理が強化されて個人の人格的自立と民主主義が脅かされていくことを危惧し、住基法改正時より住基ネットの導入に反対をしてきた市民団体です。

このたび「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」と略記)が国会に提出され、住基ネット・システムと年金システムとの連携の強化が計画されています。また実施が予定されている国民年金の現況届の廃止や、すでに実施されているという20歳に到達することにより第1号被保険者となる者の対象者把握など、住基ネットと年金システムとの間では、大規模な連携がはじめられています。

これらにより行政機関の中でデータ照合・結合のための番号として住民票コードが利用されることになり、住基ネットが「国民総背番号制」に成長していくのではないか、という不安を私たちは抱いています。

しかし複雑な年金システムの中で具体的にどのように住基ネットからの情報が使われており、それが今後のシステム再構築のなかでどのように変わっていくのか、不明な点が数多くあります。

つきましては、以下の質問をいたしますので、ご多忙のこととは思いますが、5月19日までに、末尾に記載した代表連絡先までご回答をお願いするとともに、質問内容が多岐にわたるため、回答内容について説明の場を設けていただくようお願いいたします。

なお質問と回答は、私たちのウェブ・サイト(http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/)にて公開を予定しています。

質問事項

(1)本人確認情報との照合について

「法律案」では、住基ネット・システムから本人確認情報の提供を受けることにより

  • 被保険者の氏名・住所の変更等や死亡の届出の原則廃止(2011年4月施行)
  • 国民年金未加入者への勧奨(公布日施行)

を行うとされています。

  • ア、その際に、住基ネットから提供される本人確認情報と社会保険庁が管理する被保険者情報が、同一人であることの確認はどのように行うのか。4情報(住所・氏名・性別・生年月日)の照合によるのか、住民票コードにより照合するのか。
  • イ、4情報(住所・氏名・性別・生年月日)の照合によるのであれば、どの情報をどこまでの一致によって同一人と判断するのか。不一致があった場合の照合はどのように行うのか。
  • ウ、住民票コードにより照合するのであれば、被保険者情報にすでに住民票コードが付番されているのか。付番されているのであれば、付番の際の同一人性の確認はどのように行ったのか。
  • エ、照合の際、住民登録のない者(外国人登録者、海外居住者、職権消除者、転出後転入届がされない等で住民登録がない者、等)については、どのように確認するのか

(2)他事務・他機関との連携について

「法律案」では、以下の他事務・他機関との連携が計画されています。

  • 生活保護受給者や学生等の免除手続きのための福祉事務所や医療保険者等からの情報提供
  • 国民年金保険料未納者に対し国保短期被保険者証を交付するための市町村との情報交換
  • 年金保険料未納の保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者、介護保険事業者・介護保険施設及び社会保険労務士の指定等や更新を認めないための、健康保険法事務、社会保険労務士法、介護保険法事務との情報交換
  • ア、これらの対象者であることの確認は、その都度4情報(住所・氏名・性別・生年月日)等の照合によるのか、それとも、共通のコード番号をそれぞれの個人情報データベースに付番することによって行うのか。コード番号を使用する場合は、基礎年金番号を使うのか、住民票コードを使うのか。
  • イ、もし住民票コードを使用するのなら、「国の機関等と他の国の機関等との間で住民票コードを利用してデータマッチングをすることはできない」(「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み〔註2〕」 http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/030512_1_1.pdf)という住基ネットについての総務省の説明に反しないか。

(3)国民年金未加入者への適用勧奨のための住基ネット利用について

「法律案」では、34歳到達者のうち国民年金未加入者への適用勧奨を行うため、住民基本台帳ネットワークシステムから本人確認情報の提供を受けることができる事務として、「国民年金法による被保険者に係る届出に関する事務」等を追加するとされています。

  • ア、この事務は、住基ネットから全国民のうち34歳の人の本人確認情報の提供を受け、それと基礎年金番号システムとを照合し、基礎年金番号を有していない者(第1号未加入者)を把握するものと理解してよいか。
  • イ、住基ネットにおいて本人確認情報は、住民の居住関係の確認のための求めがあったときに限り提供するものと説明されてきた(住基法を改正した第145国会での自治大臣提案説明〔註3〕)。届出を行っていない未加入者の把握に住基ネットを利用することは、データマッチングにより新たに「年金未加入者」という個人情報を作り出すものであり、届出等を行った者の居住確認という住基ネットの目的を越える利用とはならないか。

(4)基礎年金番号の法定化について

「法律案」では、ねんきん事業機構の業務と他の社会保険に関する業務の連携を図るため、基礎年金番号を年金原簿の記載事項として法定化するとともに、国民年金事業の運営に関する事務等の遂行のため特に必要がある場合を除き行政機関等による基礎年金番号の告知要求を禁止し、それ以外の者による基礎年金番号の利用を禁止する利用制限等の措置を講じるとされています。

  • ア、ねんきん事業機構の業務と他の社会保険に関する業務の連携とは、具体的にどのような利用を想定しているのか。
  • イ、「連携を図る」ことが目的ということは、基礎年金番号をつかった社会保険業務間のデータの結合を想定しているのか。
  • ウ、住民票コードのように、利用事務は法定化されるのか。
  • エ、住民票コードのように、本人の申出による基礎年金番号の変更は可能か。
  • オ、基礎年金番号と住民票コードとは、なんらかのデータの連携を行うのか
  • カ、基礎年金番号では、同一人に対し複数の番号が付けられているケースが相当数あると言われているが、この重複付番をどのように解消しようとしているか

(5)「年金カード」について

2005年から2006年にかけて、「年金カード」について報道されています。

それによれば、次のようなことが報じられています。

  • 年金手帳に代わるものとしてクレジット機能などを付加したICカードの2008年導入を計画し、2006年度にニード調査を行うこと
  • カードの付加機能として健康保険証、住民票の写しなどの自動交付、年金担保借り入れなどの金融、カード情報と携帯電話の連携システム、高齢者用身分証明書、年金の加入記録や自分の受け取り見込み額のチェックなどを検討していること
  • カード読み取りを社会保険事務所のほか金融機関のATMなどでも可能にすること
  • 将来的には医療、介護、年金などを集約した「社会保障総合カード」としたり、年金カードを住民基本台帳カードと統合することも視野に入れていること

そこで、以下の点を明らかにしてください。

  • ア、2006年度ニード調査の内容
  • イ、現時点で計画している年金カードの内容と今後の導入スケジュール
  • ウ、年金カードと「社会保障総合カード」や住基カードとの関係
  • エ、今回の「法律案」ではカードにふれていないが、導入の際は法律に規定するのか。

(6)20歳到達者の本人確認情報の利用について

20歳に到達することにより第1号被保険者となる者について、現在すでに、住基ネットから情報提供を受け対象者の把握を行っているとされています。

私たちが総務省に質問した際には、20歳到達者の本人確認情報については、住民基本台帳法第30条の7第3項別表第1の76、並びに「住民基本台帳別表第一から別表第五までの総務省令で定める事務を定める省令」第1条第76項第1号の定めにより、住基ネットから提供しているとの回答でした。〔註7〕

しかし上記法令により社会保険庁に提供が認められる事務は、「資格取得の届出」「裁定請求」「支給停止解除」「受給権者の届出」等、届出や請求などのなんらかの能動的な行為に対する本人確認とされています。総務省の「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み〔註4〕」(http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/030512_1_1.pdfでも、「行政機関が申請・届出を行った者、年金受給者等についての情報が正確であるかどうかの照合を行う場合に、都道府県・指定情報処理機関から本人確認情報を提供。したがって、市町村の全住民の本人確認情報を行政機関に提供するような情報提供形態は全く想定されない。」と説明されています。

  • 「日本国内に住所を有する20歳に達した者」すべての本人確認情報を一括して提供を受けることは、この法令や説明と矛盾すると私たちは考えますが、見解をお示しください。

(7)住基ネットを利用した「現況届」の廃止について

国民年金・厚生年金受給者の生存確認のために年1回の提出を義務づけている「現況届」を、2006年10月から、住基ネットの本人確認情報の提供をうけることにより廃止すること、そのために住基ネットによる年金受給者の生存確認システムを開発することが報道されています。

  • ア、この住基ネットによる年金受給者の生存確認システムの内容を明らかにされたい。
  • イ、住民登録のない年金受給者(外国人登録者、海外居住者、職権消除者、転出届後転入届をしていない等で住民登録のない者、等)について、生存確認はどのように行うのか。
  • ウ、「法律案」で死亡届がなくなるが、本人確認情報のあった者がない状態に変われば、直ちに「生存していない」と判断するのか。それとも、改めてなんらかの生存確認を行うのか。
  • エ、いわゆる住基ネット不参加自治体(矢祭町、杉並区、国立市)に住民登録のある年金受給者について、どのように生存確認を行うのか。
  • オ、部分的な住基ネットへの送信となっている横浜市は、「非通知者は死亡した方など他の消除者同様、現存してないと判断されてしまい、年金の支給を停止する可能性があり、これを避けるため、横浜市の本人確認情報は通知者を含め全て利用できない状況である。」と説明〔註5〕している。職権消除されていない市民について本人確認情報により生存確認することはできないか。〔註6〕

(8)現行の被保険者の個人データを管理するシステムと、住基ネットから提供された本人確認情報との関係について

  • ア、本人確認情報を照会する端末機はどこに何台設置されているか。その使用記録はどのようにとっているか。2005年12月5日、業務目的外閲覧行為の調査結果が報告されているが、本人確認情報を照会する端末機の業務外閲覧はあったか。
  • イ、磁気媒体により一括提供をうけている本人確認情報の利用事務と、提供後の媒体の処分方法。
  • ウ、社会保険庁の管理する年金受給者のデータベースにおいて、現在、住民票コードが付加されているシステムがあるか。付加されたシステムがある場合
    • その内容と住民票コードの利用方法、住民票コードの保存年限(いつ消去するか)。
    • 住民票コードが付加された被保険者情報は、他の事務や他の機関に情報提供されているか。
    • 被保険者情報が業務外閲覧された際に、その閲覧画面に住民票コードは表示されていたか。
  • エ、住基ネットからの本人確認情報の提供は、指定情報処理機関である地方自治情報センターとの協定書に基づいて行われていることと思われるが、その協定書を示されたい。

(連絡先)〔省略〕