私たちは、住民基本台帳ネットワーク・システム(住基ネット)に対して、住民票コードによって個人情報の照合・結合が容易・迅速になり、住基カードにより個人の行動が追跡可能となり、行政による監視・管理が強化されて個人の人格的自立と民主主義が脅かされていくことを危惧し、住基法改正時より住基ネットの導入に反対をしてきた市民団体です。
このたび「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」と略記)が国会に提出され、住基ネット・システムと年金システムとの連携の強化が計画されています。また実施が予定されている国民年金の現況届の廃止や、すでに実施されているという20歳に到達することにより第1号被保険者となる者の対象者把握など、住基ネットと年金システムとの間では、大規模な連携がはじめられています。
これらにより行政機関の中でデータ照合・結合のための番号として住民票コードが利用されることになり、住基ネットが「国民総背番号制」に成長していくのではないか、という不安を私たちは抱いています。
しかし複雑な年金システムの中で具体的にどのように住基ネットからの情報が使われており、それが今後のシステム再構築のなかでどのように変わっていくのか、不明な点が数多くあります。
つきましては、以下の質問をいたしますので、ご多忙のこととは思いますが、5月19日までに、末尾に記載した代表連絡先までご回答をお願いするとともに、質問内容が多岐にわたるため、回答内容について説明の場を設けていただくようお願いいたします。
なお質問と回答は、私たちのウェブ・サイト(http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/)にて公開を予定しています。
「法律案」では、住基ネット・システムから本人確認情報の提供を受けることにより
を行うとされています。
「法律案」では、以下の他事務・他機関との連携が計画されています。
国の機関等と他の国の機関等との間で住民票コードを利用してデータマッチングをすることはできない」(「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み〔註2〕」 http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/030512_1_1.pdf)という住基ネットについての総務省の説明に反しないか。
「法律案」では、34歳到達者のうち国民年金未加入者への適用勧奨を行うため、住民基本台帳ネットワークシステムから本人確認情報の提供を受けることができる事務として、「国民年金法による被保険者に係る届出に関する事務」等を追加するとされています。
「法律案」では、ねんきん事業機構の業務と他の社会保険に関する業務の連携を図るため、基礎年金番号を年金原簿の記載事項として法定化するとともに、国民年金事業の運営に関する事務等の遂行のため特に必要がある場合を除き行政機関等による基礎年金番号の告知要求を禁止し、それ以外の者による基礎年金番号の利用を禁止する利用制限等の措置を講じるとされています。
2005年から2006年にかけて、「年金カード」について報道されています。
それによれば、次のようなことが報じられています。
そこで、以下の点を明らかにしてください。
20歳に到達することにより第1号被保険者となる者について、現在すでに、住基ネットから情報提供を受け対象者の把握を行っているとされています。
私たちが総務省に質問した際には、20歳到達者の本人確認情報については、住民基本台帳法第30条の7第3項、別表第1の76、並びに「住民基本台帳別表第一から別表第五までの総務省令で定める事務を定める省令」第1条第76項第1号の定めにより、住基ネットから提供しているとの回答でした。〔註7〕
しかし上記法令により社会保険庁に提供が認められる事務は、「資格取得の届出」「裁定請求」「支給停止解除」「受給権者の届出」等、届出や請求などのなんらかの能動的な行為に対する本人確認とされています。総務省の「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み〔註4〕」(http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/030512_1_1.pdf)でも、「行政機関が申請・届出を行った者、年金受給者等についての情報が正確であるかどうかの照合を行う場合に、都道府県・指定情報処理機関から本人確認情報を提供。したがって、市町村の全住民の本人確認情報を行政機関に提供するような情報提供形態は全く想定されない。
」と説明されています。
国民年金・厚生年金受給者の生存確認のために年1回の提出を義務づけている「現況届」を、2006年10月から、住基ネットの本人確認情報の提供をうけることにより廃止すること、そのために住基ネットによる年金受給者の生存確認システムを開発することが報道されています。
非通知者は死亡した方など他の消除者同様、現存してないと判断されてしまい、年金の支給を停止する可能性があり、これを避けるため、横浜市の本人確認情報は通知者を含め全て利用できない状況である。」と説明〔註5〕している。職権消除されていない市民について本人確認情報により生存確認することはできないか。〔註6〕
(連絡先)〔省略〕