<10、加減速時の姿勢変化(ダイブ、スカット)>
加速すると車の後ろが下がったり、逆にブレーキをかけると前が沈み込んだりすることはよく経験があると思います。これらの現象は車両諸元のみならずサスペンションジオメトリとも深く関連しています。ここではこのような加減速時に車両がピッチング方向に姿勢変化する、ダイブ、スカットと称される現象について説明したいと思います。
ダイブ(ノーズダイブ、リアリフト)とはブレーキング時に車体が前のめりに傾く現象で、スカット(=スクワット:しゃがむ)は逆にアクセルを踏んで加速した時にリアが沈み込む(フロントが浮き上がる)ように傾く現象を言います。戦後モータリゼーション黎明期の某国産車の中にはノーズダイブが顕著で停止するたびにお辞儀をするようにピッチングするため、「礼儀正しい車」などと揶揄されたものもあったようです。また、バブル絶頂期に一世を風靡した某国産高級車は大排気量ターボエンジンにマルチリングが主流になる前のセミトレーリングアーム式リアサスペンションという組み合わせだったこともあり、例えば高速のゲートを抜けた後の全開加速時等に激しくスカットするので有名でしたが、今ならどうかと思われるようなレベルでも当時は「高出力エンジン車らしい」と言われたりした時代でした。
それはさておき、加減速時のあまり大きな姿勢変化は好ましいことではありません。ここではなぜそのような姿勢変化が発生するのか、そしてそれを抑制するサスペンションの「アンチスカット」「アンチダイブ、アンチリフト」ジオメトリについて説明します。
<10−4、内部力についての補足及びエンジンブレーキの場合のアンチリフト>
<10−番外、もしスカットやダイブ量をゼロやマイナスにしたら?>