4.遺産分割協議について


〈具体例で紹介〉(いままであった相談の一部をまとめてみました)


Q1
夫が亡くなり、妻の私と子供2名が相続しました。遺産分割協議をおこないたいのですが、次男はまだ、15歳で未成年です。どうすればいいのでしょうか。

A 家庭裁判所で、次男のために、特別代理人を選任する必要があります。
 
この場合、母である貴方は、未成年者である次男を代理して遺産分割協議をすることはできません。貴方も相続人となっているために、母と子の間に利益が相反するもの考えられるからです。





Q2
夫が亡くなり、妻の私と夫の兄弟3名が相続しました。遺産分割協議をおこないたいのですが、夫の兄弟の中に、10年近く生死不明で行方不明の者がいるため,遺産分割協議ができません。どうすればいいのでしょうか。

A 
不在者の財産管理人選任という手続きと失踪宣告という手続きの2通りが考えられます。 
 遺言が残されていない場合、または残されていても相続分の指定がされているにとどまるときには、遺産分割協議をしなければ、個々の相続財産も相続分割合に基づいた共有になります。これは、相続人中に行方不明者がいたとしても変わることはありません。
 この場合には、他の相続人等の利害関係人は、行方不明者のために、家庭裁判所に対して不在者の財産管理人の選任を求め、不在者の財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加することができます。
不在者の財産管理人は、原則として、財産の管理行為しかおこなうことができませんが、家庭裁判所の許可を得ることによって、遺産分割などの処分行為をおこなうことができます。したがって、この相談例では、不在者の財産管理人の選任申し立てと共に、権限外の行為(遺産分割協議)をおこなうについての家庭裁判所の許可も得る必要があります。
 もうひとつ、この相談例の場合には、失踪宣告という手続きをとることも可能です。これは、原則として、7年以上、生死が分からない場合に、利害関係人の請求により生死不明の者について失踪の宣告をして、死亡したものと取り扱う制度です。この方法を採ると、失踪宣告を受けた者は、失踪期間の満了の時に死亡したものとみなされるため、不在者に子供がいる場合には、その子供が代襲相続人として遺産分割協議に参加することになり、不在者に妻子がいない場合には、残りの兄弟2名が相続人となり、事実上、貴方とご主人様の兄弟2名との間で、協議することができます。ただし、この失踪宣告は、大変重大な効果を生じさせるものであり、また、親族としては、元気に戻ってきてもらいたいと願うのが通常であるため、実際には、始めに紹介した不在者の財産管理人を選任する方法が多く採られています。





Q3
父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。相続財産と言えるものは、事実上、私と父が一緒に住んでいた土地建物だけです。引き続き、この家に住み続けたいのですが、遺産分割をしようにも、他に遺産がありません。他の相続人も納得するようないい方法はありませんか。

A 代償分割という遺産分割方法が考えられます。
 遺産分割の原則的な方法は、現物分割という方法です。これは、「A不動産は相続人Xに、B不動産は相続人Yに」というような、遺産(現物)そのものを相続人に分けるものです。しかし、この相談例では、1人の相続人(貴方)が不動産を取得してしまうと、他の相続人が遺産を取得することができなくなってしまうため、現物分割はできません。このような場合には、ある特定の相続人に、その相続分を超える遺産を与える代わりに、他の相続人が、遺産を得た相続人から金銭を支払ってもらう方法(代償分割)が認められています。実務でも多くみられる分割方法です。
ただし、この方法を採るにあたって一番問題になるのが、代償金を支払わなければならない貴方にその資力があるかということです。相続人によっては、一括払いを求めてくる場合も多く、実際、後日のトラブルなどを考えると一括払いの方が望ましいとも言えるでしょう。しかし、一括では無理だけれども、分割であれば支払えるということであれば、保証人をつけたり、その不動産に抵当権をつけることを認めることで話しをまとめることもできるかもしれません。

また、遺産分割協議書を作成するにあたっては、必ず、代償分割する旨を明記しておくことです。代償金に贈与税が課されないように注意する必要があります。



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