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〈遺言について〉
1.遺言とは
広くは、「家族全員協力し合って・・・」というような内容を思い浮かべる方も多いかと思いますが、ここでは、より狭い意味、法律上の効力を有するという意味での「遺言」について紹介していきます。
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2.遺言の要件(書き方)
遺言が、法的効力を持つためには、下記の(1)(2)を満たしていることが必要です。
(1) 法律に定められた一定の方式に従って作成されること。
(2) 法律に定められた事項に関する内容であること。
(1)について
遺言には、何種類かの形式がありますが、一般的には、自筆証書遺言、公正証書遺言の方法が利用されています。そこで、この2つに絞ってその形式を紹介していくことにします。
(2)については、項を改めて「3.遺言でなし得る行為」のところで紹介しています。
自筆証書遺言(←クリックしてください)
公正証書遺言(←クリックしてください)

3.遺言でなし得る行為
民法に定められている意味での「遺言」では、大きく分けて下記の2つの事項が認められています。
(1)相続および財産の処分に関する事項(代表的なものを挙げてみました)
・相続分の指定
法定相続分とは異なった相続分割合を定めることができます。
(例)「妻には全財産の5分の3を相続させ、子供2人にはそれぞれ5分の1ずつを相続させる。」
※その結果、相続財産(全財産)がそれぞれ5分の3、5分の1、5分の1ずつの共有となります。
・遺産分割方法の指定
相続開始後に相続人間で遺産分割協議をするのではなく、遺言者が、遺産分割方法を指示することによって、個々の財産の帰属を定めることができます。
(例)「妻には港区赤坂3丁目〜の土地を相続させ、長男にはA銀行の預金全部を相続させる」
・包括遺贈
遺言者が遺産の全部または割合的一部を示して、相続財産を無償で譲渡することです。包括遺贈によって財産を譲り受けた者(包括受遺者)は、相続人と同一の権利義務を有し(民法990条)、これによって、包括受遺者は相続人と共に遺産分割協議に参加できることになります。
(例)「内縁の妻に全財産の2分の1を遺贈する。」
※この結果、内縁の妻が2分の1、残りの2分の1は相続人が法定相続分にしたがって権利(義務)を有することになるため、相続財産(全財産)が内縁の妻と法定相続人の共有となります。
・特定遺贈
特定の財産を示してなされた遺贈です。この場合、遺産分割協議の余地はなく、受遺者に権利が帰属します。
(例)「港区赤坂3丁目〜の土地を遺贈する。」
※お金を遺贈しようとお考えの場合、「金100万円を遺贈する」という遺言よりも、あらかじめ、その方のために金融機関に口座を作成しておいて、「A銀行○支店・普通預金○○番の預金すべてを〜に遺贈する」というスタイルにした方が、執行手続きがスムーズにいくでしょう。
(2)身分行為に関する事項(代表的なものを挙げてみました)
・子の認知
男性が妻以外の女性との間に生まれた子との間には、法律上当然には父子関係はなく、男性が認知することによって、その子の出生時にさかのぼって法律上の父子関係が発生します。認知することによって、その子にも相続権があることになります。
遺言で認知した場合には、相続開始後、遺言執行者が認知の届出をすることになります。必ずしも遺言で遺言執行者を指定しておく必要はないのですが、相続人に歓迎されず協力をえられないことが多く、さらに、家庭裁判所による選任手続きが必要になることから、認知とともに遺言執行者の指定をもしておいた方がいいでしょう。

4.どのような方が遺言を残されているのか
近年、遺言を残されている方が増えています。
では、どういった方が、どういう目的をもって、遺言書を書いているのでしょうか。
大きく2つに分けられるのではないかと思います。
1つは、お世話になった方に感謝の気持ちを込めてというケースです。
介護をしてくれた長男に、あるいは、長年苦楽を共にしてきた配偶者に法定相続分よりも多くの相続分を与えたいという希望を持っている場合です。
2つめは、むしろ、遺言書を残しておいた方が望ましいというケースです。
あらかじめ遺言書が作成されていることによって、相続問題が適切かつスムーズに解決できるケースが多くあります。もっと言えば、相続人間で争いが生じやすい場合、または、残しておかなければ自分の希望が実現されないと考えられるような場合です。
次に掲げる(1)から(6)は、残された家族等のために、特別な配慮が必要な場合(典型例)です。相続財産をめぐってトラブルが起きないよう、遺言を残しておきたいものです。
(1)内縁の妻がいる場合
同居はしているけれども、婚姻届を提出していないため、法律上の夫婦関係にはない場合です。
内縁の妻は、法定相続人とはなれませんので、財産を譲りたい場合には遺言で遺贈する旨残しておくといいでしょう。
(2)子供の配偶者が、その子供の亡くなった後も義理の親である自分の世話をしてくれているような場合(息子の妻が、夫たる息子の亡くなった後も義理の親である自分の世話をしてくれている場合)
息子の妻は法定相続人とはなれませんので、財産を譲りたい場合には遺言で遺贈する旨残しておくといいでしょう。
(3)夫婦の間に子供がいない場合
この場合、両親がすでに亡くなっていると、被相続人の兄弟姉妹も相続人になります(法定相続分割合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります)。
今まで、色々な遺言作成にたずさわってきましたが、このケースに当てはまる方が非常に多いです。全財産を配偶者にという内容の方が多いですが、配偶者とともに特にお世話になった特定の兄弟にという内容の遺言をされる方もいらしゃいます。
現在独身(または配偶者が先に亡くなられている方)で子供がいない場合にも同じことが言えます。
遺言をもって相続人の相続分を指定する場合、後日の争いをさけるために、通常、遺留分を配慮した方がいいのですが、兄弟姉妹には遺留分がないために、配偶者などに全財産を相続させる旨の遺言を残しておいたとしても、遺留分をめぐって争いになることはありません。
(4)離婚した配偶者との間に子供がいる場合
すでに亡くなっている配偶者との間に子供がいる場合
現在の配偶者と、離婚(または、亡くなった)配偶者との間の子とで遺産分割をめぐるトラブルが起きやすいものです。
再婚配偶者との間に子供がいる場合には、腹違いの兄弟間で、遺産分割をめぐるトラブルが起きることもあります。そこで、このような場合にも遺言書を作成するほうがいいでしょう。
(5) 相続人の中に行方不明になっている方がいる場合
この場合、遺言を残しておかないと、相続人間で、遺産分割協議をする際に、困ったことになります。
詳しくは、ここをご覧になって下さい(「相続手続きの紹介」中の「3.遺産分割協議」です)。
(6)個人事業をされている場合
法人成りしていない場合、事業用の財産も相続の対象となるため、遺産分割協議がまとまらないと、事業の継続に支障がきたされる場合があります。事業用の財産は後継者の方が単独で相続することができるように遺言を残しておくといいでしょう。
このように、遺言の必要性というのは、必ずしも多額の資産をお持ちであるかどうかとは直接関係ないということをご理解いただければと思います。

5.その他、遺言に関するQ&A
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(1)遺言を残しておこうと考え、遺言に関する本を読んでいたら、相続人の遺留分には配慮するようにした方がいいということが記載してありました。いったい、遺留分とはどういう制度なのですか。また、どうして配慮した方がいいと言われているのですか。
(2)遺留分のある相続人と、その遺留分割合を教えてください。
(3)遺贈を考えています。特定遺贈と包括遺贈の2種類あるそうですが、どうちがうのですか。
(4)遺言を残しておくにあたって、遺言で遺言執行者を指定しておくべきなのでしょうか。
(5)恩人に相続財産の一部を遺贈することを考えています。ところが、その方も高齢なのですが、私よりも先に亡くなってしまった場合、遺言の効力はどうなるのですか。
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