ホリスティック医学・健康学“コラム”No.52

動物性タンパク質を過剰に摂取している現代人

2024/01/22

欧米型食事という“間違った食”の最大の特徴は―「動物性食品が食の中心を占めている」という点にあります。動物性食品の代表が、肉と牛乳(乳製品)と卵です。これらは、欧米型食事を形成する中心的な食品です。欧米諸国では長い間、肉・乳製品・卵といった動物性食品を栄養価の高い食品と考えてきました。「動物性タンパク質」を豊富に含むそれらの食品は頑強な体をつくるとされ、積極的な摂取が勧められてきました。

ところが近年、動物性タンパク質の過剰摂取が、さまざまな「生活習慣病」を引き起こす元凶であることが明らかにされるようになりました。動物性タンパク質が生活習慣病を発症させるメカニズムが、最新の科学によって解明されるようになったのです。

穀類・野菜・果物・豆類などの「植物性食品」には、炭水化物や脂肪・タンパク質が含まれていますが、ビタミンやミネラルといった微量栄養素や食物繊維など、さまざまな栄養素も豊富に含まれています。そのため植物性食品をたくさん食べても、タンパク質の過剰摂取に陥るようなことはありません。一方、肉類や乳製品などの「動物性食品」には、タンパク質や脂肪が多量に含まれているため、少量食べたつもりでも、すぐにタンパク質の過剰摂取に陥ってしまいます。

現代栄養学では、タンパク質の摂取量の目安を、大人では体重1kgにつき、1日に0.8g(*アスリートや妊婦など必要量が増す人もいます)としています。つまり体重60kgの人では、48gが推奨量ということになります。(*2015〜2020年のアメリカのガイドラインでは、成人男性の1日のタンパク質の推奨量は56g、成人女性は46gとなっています。一方、日本人のタンパク質の推奨量(2020年版)は、15〜64歳の男性は65g、65歳以上では60g、18歳以上の女性は50gとなっています。)

2017〜2020年におけるアメリカ人のタンパク質の平均摂取量(*20歳以上)は、1日81.0g(男性94.2g 、女性68.8g)で、体重100kgの人の推奨量を摂っていることになります。これでは、いくら体の大きいアメリカ人であっても過剰摂取は明らかです。一方、2019年における日本人のタンパク質の平均摂取量(*20歳以上)は72.2g(男性78.8g、女性66.4g)になっています。このうち動物性タンパク質の占める割合は、5割以上となっています。こうした数字を見るかぎり、明らかに過剰摂取に陥っていることが分かります。

今や動物性タンパク質の過剰摂取は、欧米だけでなく日本やアジアの新興国家における共通の問題になっているのです。

日本人のタンパク質の摂取量は戦後から増加し、1995年には1日平均80g以上にも及びました。その後、2010年には60g台にまで低下しましたが、それ以降、再び増え続けています。また、タンパク質の摂取量のうち、動物性タンパク質の割合は、戦後は2割ほどでしたが、1980年代から5割以上となり、現在でも植物性タンパク質を上回る状況が続いています。さらに2000年代後半には、動物性タンパク質のうち肉類の占める割合が魚介類よりも高くなり、現在も肉類の割合は増加しています。農林水産省の調査では、2021年の1人当たりの食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)の年間消費量は33.8kgで、過去最高となり、1960年(3.5kg)に比べて、約10倍となっています。


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