若年性黄斑変性(近視性黄斑変性など)   1.004   13.6.25 本文へジャンプ

滲出性中心性網脈絡膜症、特発性黄斑下脈絡膜新生血管、強度近視性脈絡膜新生血管、新生血管黄斑症、近視性黄斑変性等

中医学による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)への鍼灸治療(全3部) WEB公開版

(第1部) 問診から得られた脈絡膜新生血管(CNV)の新たな概要と課題
 
2009.10.1
(第2部) 鍼治療の脈絡膜新生血管(CNV)への短期成績と抗VEGF療法 
2009.11.1
(第3部) 脈絡膜新生血管(CNV)への鍼治療による長期成績と、変視症の変化、千秋針灸院の取り組み
 2009.12.1

・千秋針灸院では2009年、50名を超える症例を基に、針治療による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)の、統計的な症例報告を行いました。2007年に当院が報告した中医学による加齢性黄斑変性症への鍼灸治療に続き、若年性の黄斑変性に対する日本初の針治療の統計報告になります。針治療の効果や再現性の高さが証明された報告であり、全国から来院いただいた患者の皆様や、ご協力いただいた治療院の先生方、支えてくれた当院のスタッフや家族に感謝し、微力ながら黄斑変性に苦しむ患者さんの助けとなることを願っています。

○現代医学での概要と当院の針治療
○千秋針灸院で行う測定法
○千秋針灸院で行う治療法について
○千秋針灸院での針灸治療の特色と現状
○患者さんからよくある質問 
○院長からひとこと
○患者さんに気をつけていただくこと(若年性黄斑変性サポート情報)  
○関連リンク・参考文献 

現代医学での概要と当院の針治療


特発性黄斑下脈絡膜新生血管(CNV)
・50歳未満で網膜黄斑部に発症する脈絡膜新生血管で、発症の原因が特定できない場合の診断名です。女性に比較的多く片眼性ですが、両眼に発症する場合もあります。新生血管は小型で網膜下出血は少なく、漿液性網膜剥離(網膜浮腫)も小さい傾向です。無治療の場合には再発を繰り返して瘢痕が拡大し悪化します。一般に50歳以上で発症した場合には、加齢黄斑変性の診断名になる疾患です。

近視性脈絡膜新生血管(mCNV)
・強度近視眼(-6D以上)に発症する脈絡膜新生血管で、強度近視者の5~10%に発症するとされています。強度近視眼では眼軸長の延長に伴い網膜が引き延ばされるため、mCNV以外にも特徴的な網脈絡膜萎縮、黄斑出血、裂孔原性網膜剥離、黄斑円孔、緑内障、白内障、硝子体混濁等が生じやすくなります。視力予後は眼科での経過観察から、10年後には96.3%でmCNV発症後の脈絡膜萎縮により、矯正視力は0.1以下まで低下するとされます。

・近年では新生血管消退を目的に抗VEGF製剤(ルセンティス、アバスチン等)が用いられますが、1年経過時の報告は良好なものの、2年以上の経過例では評価が定まっていません。現在の眼科医療では脈絡膜萎縮に進行すると、治療手段はありません。


・抗VEGF製剤(アバスチン等)が登場する以前は、50才未満の新生血管症はPDT(光線力学療法)も健康保険適用とはならず、また視力の改善効果は期待できなかったため、有効な治療法の登場が待たれていました。現在は抗VEGF製剤の登場により、初回発症や早期に投与した場合など、病巣が小さく網膜の損傷が比較的軽度な場合には、抗VEGF製剤単独で視力や変視の改善効果があります。しかし再発を繰り返したり、疾病の遷延化等、病巣の規模や網膜の損傷程度によっては、抗VEGF製剤も対応しきれない症例もあります。

・基本的に病変部のみを治療の対象とする現代の眼科医学では、新生血管症の根本的な問題となる眼底周辺の血流改善には結びつかず、悪化や再発、健側への発病の可能性は依然として残ってしまいます。針治療は特に局所(目周囲)の血流を改善することにより、眼底部の炎症や出血を効果的に吸収させる治療法であり、現代医学の治療に比較して目周囲の血流は改善され良好な状態が維持される為、悪化や再発の危険性を大きく減らすことができます。新生血管症により、眼科専門医療機関で抗VEGF剤の眼内注射や外科的な治療を薦められていた患者さんの多くは視力が上昇、状態が好転した結果、「当面の治療は必要無し」と診断されています。

・適切な針治療による視力の改善は他の現代医学的な治療法にも劣らず(当院での測定や、眼科専門医療機関の検査による結果)、薬物や手術法のような副作用や後遺症も無く、眼底の健康状態を改善させる優れた特徴があります。また当院では針治療における様々な症例が蓄積され、治療のためのプログラムが完成しています。最新の治療法である抗VEGF製剤との併用も含めて、現代医学とは異なる角度からのアプローチとして、選択肢に加えていただきたいと考えています。


・鍼治療により瘢痕化し視力低下や変視症が顕著な症例等でも好転するケースが数多くあります。他にも過去に抗VEGF製剤の投与により、効果がみられなかったり悪化した場合や、眼内注射を避けたい場合にも鍼治療を試されることをお勧めします。

網膜の黄斑部は、本来、自然の治癒力を持っています (外傷性黄斑円孔の症例から)

・『眼科プラクティス2 黄斑疾患の病態理解と治療』 文光堂 という眼科専門医向けの書籍があります。杏林大学、樋田哲夫教授が報告しているP14-図18では、外傷性黄斑円孔の自然閉鎖過程を示すOCT像が5枚の画像で紹介されており、発症後四ヶ月で黄斑部が自然に修復された症例が掲載されています。また同じくP248でも同様な症例が紹介されており、OCTの画像と共に、視力も0.3→0.6へと回復したと報告されています。黄斑円孔とは、網膜の黄斑部が硝子体に引っ張られ穴が開いたものです。またOCTとは光干渉断層計という最新の検査機器です。大切なことは黄斑部の物理的な損傷が自然に閉鎖して、元どうりの黄斑部を形成していく姿こそ自然治癒力そのものであるという事実です。外傷性で元々の病気は無いことから、自然治癒力が十分に発揮されたものと考えられています。

・病気は外傷などの突発的なものを除けば必ず原因があり、ゆっくりと時間をかけて発症してくるものです。眼の病気も例外ではなく、当院では現代医学や中医学に加え、多くの患者さんからの問診等から、病気によって異なるものの、目への過大な負荷(OA作業、コンタクトレンズ、携帯等)、食生活(甘いお菓子、アルコール、大食等)、睡眠不足、喫煙、紫外線曝露(屋外作業、スキー等)、出産(体への過負荷)、医薬品等の副作用、遺伝・・・が分かっています。多く場合で複数の原因が関与しているものと思います。

・針灸治療を含めた中医学では、これらを含めた患者さんごとの体質を捉えて治療を進めていきます。重要なことは、患者さん自身も発病の原因と考えられるものを取り除いたり、別の方法で解決していただくことが大切になります。煙草を止めたり、甘いお菓子は控えていただいたり、コンタクトレンズは眼鏡に替えたり、OA作業は仕事なら止められませんが液晶ディスプレイを調整したり、医療向け遮光レンズを使ったりという対策は立てられます。針灸治療に加えて病気が発症した環境が変われば、自然治癒力は発揮され易くなり、多くの眼の病気は回復に向かいます。逆にどんなに優れた治療をしても、病気が発症した環境が変わらなければ、悪化する可能性が無くなることはありません。

本物の治癒のために大切なのは、病気の起きてきた環境を変えること、あなた自身の治癒力を発揮させること。

・最新の優れた治療法や様々なサプリメントを摂取していても、何度も再発を繰り返してしまうのは、病気が発症した環境が変わらず、十分な自然治癒力が発揮されにくいことが原因かもしれません。私は針治療が比較的良好な結果を残す理由に、治療者と患者さんが向き合う時間が長く、患者さん自身が原因を自覚して、環境を変える努力をされることが大変大きいと感じています。患者さん自身が発症した原因を自覚して、環境を変える努力を始めることができたら、眼の治療の半分は成功です。現代医学も中医学も関係なく、残り半分は医師や治療者の技量でもあります。高度に発達した現代医学と、伝統的な中医学による針灸。私はアプローチ方法は異なっても目指すものは同じと思います。


・黄斑変性症には様々な症例があり、何度も再発を繰り返した場合には、眼底写真上でも分かるほどに、網膜の損傷が激しい場合もあります。しかしそのような場合でも、自然治癒力は働いており、少しでも回復しようと体は努力しています。当院では針治療と共に、中医学、現代医学両面でのサポートや豊富な症例数を基に、様々な状態の患者さんが「どうすれば自然治癒力が発揮され、最大限の回復が得られるか」を第一に、脈絡膜新生血管症の治療に取り組んでいます。

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千秋針灸院で行う測定法


・当院では網膜黄斑変性症に対して、視力、変視部位・大きさの特定、変視(中心暗点や歪み)の度合いを数値化する評価法を用いています。全て眼科医学にもとづいた医学的根拠のある評価法であり、網膜疾患を専門とする眼科医療機関でも用いられています。

○リンク・・・眼科針灸の測定・評価法について

・当院では様々な眼科医学にもとづいた医学的根拠のある評価法により、網膜黄斑変性の特徴である視力低下や変視症に対し、鍼治療の確実な効果や適応の可能性を捉える作業を続けています。当院との提携治療院では、視力表や鈴木式アイチャートを導入している治療院もあり、連携治療として測定したデータを生かすことが可能です。(全ての提携治療院が導入している訳ではありません。)

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千秋針灸院で行う治療法について


・脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)、加齢黄斑変性をはじめ、眼科疾患に関してはほぼ共通した治療法になります。患者さんの証(体質)や症状の重さにより若干変わりますが、後頚部、背部、下腿、目の周囲の経穴に対して針をします。

・特に
脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)では、新生血管等の活動期かどうかも関係しますが、活動期では最初に眼底での出血や浸出液を抑えることが大切であり、この時期は週に2回程度の治療が必要です。主に低下していた視力が向上しはじめ、眼科医から「出血が落ち着いてきた」「眼底が乾いてきた」等と診断されるまでが目安ですが、概ね3ヶ月程が平均的です。アバスチン等を併用する場合には、抗VEGF製剤の効果が完全に無くなる2ヶ月後から更に3ヶ月はペースを落とさず様子を見ます。その後は眼底での出血や浸出液の吸収を促し、可能な限り良好な視力の確保や変視症の改善を目標として週1回の治療に(3~12ヶ月程度が目安)、その後は視力等の維持や再発を防止するための治療間隔として隔週1回から月に1回程度へ徐々に治療間隔を延長していきます。週1回以上の治療が必要な治療期間は平均1年程度です。

・非活動期では、低下している視力の向上や変視症の改善を目標として、週に2回(通常3ヶ月)、週1回(3~12ヶ月程度まで)の治療としており、その後は患者さんの都合や視力をはじめとした測定結果等から、無理なく続けられる治療間隔を設定しています。また当初から視力が十分に保たれている場合等、治療上の課題が少ない場合は、より少ない治療回数で良い状態を保つことができます。

・これまで当院の指示通りの間隔で治療を行えた多くの症例では良好な結果を得ていますが、概ね指示通りの間隔で治療できない場合には、十分な効果が得られない場合もあり、効果が判然とせずに治療が続けられなくなるケースもあります。当院では眼科医学に基づいた評価法により、患者さんに必要最小限の通院で済むように治療計画を立てています。指示通りの治療間隔で治療を行えても、回復の難しいケースはありますが、ご自身で回復の可能性を潰してしまわないよう、お願いいたします。

・時々問い合わせがあるのですが、治療効果が高いとされる眼窩内刺針は出血の恐れが高いため、当院では通常用いることはありません。当院の治療は眼窩内へ刺針を行わなくても充分な効果が得られています。上海では実際に眼窩内刺針により効果を上げているのですが、効果が早く現れることと引き替えに目周囲が腫れてしまう確率も高く、私は積極的にお薦めはできません。当院では目周囲が腫れる可能性の無い安全な治療方法を確立しています。

・脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)では、治療を開始してから数ヶ月以内に視力が上昇し、視野中心部の曇りや暗点が消えたり薄くなる、部位が縮小することを多くの症例で確認しています。なお脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)では発症後早い段階での治療が効果的で、視力が短期間に大幅に上昇したり、歪みなどの変視症が改善・治癒する確率も高くなるようです。針治療は眼底での血流を改善し治癒力を促すため、網膜の受けたダメージが少ない程、回復する可能性が高まるものと推測されます。

・初期の視力上昇の仕方は個人差はあるものの加齢黄斑変性より早く、数回で視力が上昇を始めるケースもみられます。また視力の上昇に伴って、歪みなどの変視症が一時的に目立つものの、軽症例では3ヶ月~半年程で歪みが消失したり、軽減する症例もあります。重症例では視力は向上しても、暗点や歪みなどの変視は若干の軽減に留まる場合が多くなります。「中心に光の穴ができて拡がっていった」「曇りが薄くなり明るくなった」「歪みが少なくなった」等と患者さんは表現されています。眼科医院での検査でも明らかな変化が確認されており、視力の向上はもちろん、黄斑部浮腫や眼底出血等の病変部の改善が確認できる症例が多くあります。


症例報告 黄斑変性の典型的な症例(強度近視由来の新生血管症の長期、短期症例)

(当院での病名毎の典型例を紹介していますので、全ての方に良好な結果を保証するものではありません)

①強度近視由来(滲出型網膜黄斑変性症)の症例 30代 発症後1年半程 発症は左眼

開始時直近の視力 右0.7 左0.4 (矯正視力・眼科検査) 視野中央及び周囲にリング状の暗点
3ヶ月後の視力 右1.0 左0.7 (矯正視力・眼科検査) 視野中央及び周囲のリング状の暗点が薄くなる
6ヶ月後の視力 右1.0 左0.9 (矯正視力・眼科検査) 眼底出血等の病変の改善が眼科医で確認される
1年後の視力 右1.0 左1.0 (矯正視力・眼科検査) 眼底に問題なく、視野内の暗点のみ薄く残る状態
3年後の視力 右1.0 左1.0 (矯正視力・眼科検査) 1年後同様に良好な状態が維持されている。

・現在は状態の維持を目的に治療間隔を空けつつ治療を継続されています。視力は充分確保できていますが、物が歪んで見える変視症は残っています。薄くなってきた視野内の暗点は徐々に移動しており、更に縮小してきています。治療開始半年経過時の眼科検査で一部の視野欠損や病変部位も改善という診断がされています。この患者さんは眼科医院で継続した検査がしっかり行えていたため、根拠ある症例として紹介させていただきました。針治療では患側だけでなく、健側の視力も上昇する場合が多いのが特徴です。

②強度近視由来の特発性脈絡膜新生血管の症例 30代 発症後5週間(違和感は約半年) 発症は左眼

開始時の視力 右1.0 左0.6 (矯正視力・当院測定) 視野内中心部に白濁色の暗点および歪みがある。
1ヶ月後 右1.5 左0.8 (矯正視力・当院測定) 自覚症状は不変、眼科では出血が続き活動期との診断。
3ヶ月後 右1.5 左1.0 (矯正視力・当院測定) 白濁色の暗点は小さく薄くなる。眼底出血は収束と診断。
6ヶ月後 右1.5 左1.2 (矯正視力・当院測定) 暗点はほぼ無く歪みも若干程度。活動期の終息と診断。
1年後  右1.5 左1.5 (矯正視力・当院測定) 視力が完全に回復し、2週に1度の寬解期治療へ移行。


・発症当初は急速に視力が低下する過程でしたが、アバスチン等の手術療法に頼ることなく、順調に回復した症例です。現在は2週間に1回以下の寬解期治療へと移行していて、万一の再発や健側への発症予防を目的に通院されています。毎週の測定ごとに視力が低下していくような場合でも、針治療を開始すれば視力低下に歯止めがかかる場合が多いので、少しでも早く治療に取り組むべきでしょう。また最近では初回はアバスチンを使い、後から針治療で根本的な改善を目指す症例も増えてきています。早期治療例では歪みや暗点の回復も期待でき、良好な経過を辿る症例が多くあります。

・現在、遠方から来院される患者さんが増えてきましたので、一部の地域から提携先治療院と当院が連携した治療方式を始めています。当院への来院回数は数ヶ月に一回と少なく済みますので、当院へ通院するのに比べ経済的・時間的な労力を少なく針灸治療を受けることができます。
眼科領域の難病治療を提携治療院で

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千秋針灸院での針灸治療の特色と現状


○治療開始より1ヶ月程(週2回治療)で多くの場合に視力向上の始まりが認められます。
・治療開始半年時点の当院での視力向上の目標は3段階以上(例えば0.2→0.5)です。但し矯正視力で1.0前後が確保されている方は、上昇の余地が少ないため3ポイントにはなりません。
当初抗VEGF製剤(アバスチン等)やレーザー治療、ステロイド療法等が必要と診断されていた患者さんは、当院の推奨する治療間隔で続けられたほとんどの方で、視力が改善するなどの結果、当面は必要無し(要経過観察)と診断されています。 
 
○治療開始より6ヶ月程度で、約半数の症例は患側視力は健側と同程度まで回復することが多いです。
・健側は治療開始時の視力です。針治療により健側が上昇することも多く、眼鏡を作り直す必要が生じる場合もあります。視力差は矯正視力で健側との差が3ポイント以内(例えば健側1.0、患側0.7)です。脈絡膜新生血管・若年性黄斑変性の活動期の場合に当てはまりますが、発症から長期の経過例では個人差が大きい傾向です。

○視界内の変視症(暗点や歪み)についても良好な変化が見られる症例が多いです。
・視野内の暗点(黒点もしくは白点)は部位が縮小したり薄くなったりと、治療開始3ヶ月程度で多くの方に変化が見られます。鈴木式アイチェックチャート等で確認できるものですが、患者さん本人でも自覚できることが多く、眼底検査等でも良好な診断をいただける場合もあります。視野内の歪みについては視力の向上よりも遅れますが、少しずつ回復が進む症例が多いです。歪みや暗点を鈴木式アイチェックチャートを用いて大きさや部位、程度を継続して測定することで、歪みや暗点の変化を確認できます。また初回発症や比較的軽度な症例では、歪みが消えることもあります。一方暗点が薄くなったり視力の向上により、分かり難かった歪みが相対的に目立つ場合もあります。視野内の歪みの軽減や解消については、良好な結果も多いのですが、引き続き当院の課題となっています。
 
○針治療はほとんどの場合に、再発や健側への発症を防ぐことができています。
・当院での治療を継続中に、再出血等が起こり症状が悪化する例は、新生血管の活動が特に活発な一部の方を除けばありません。患者さん全体の1%程度です。針治療は両眼に効果が期待できる治療法のため、再発や健側での発症も防止できていると考えられます。治療を一定間隔で行っていれば視力はほぼ全ての例で、良好な状態のまま維持されています。ただし最も長い方で治療開始から10年程ですので、20年後・30年後といった長期間の結果は未知な部分があります。

・現在、最新の治療法である抗VEGF療法(ルセンティス、アバスチン、マクジェン等)を受けられた患者さんが来院されています。鍼治療を開始したところ、これまで悪化する度に繰り返し抗VEGF療法を続けていた方が、眼内注射を続ける必要がなくなる症例が続いています。特に初期の脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)の場合に、抗VEGF療法を用いることで新生血管を一旦消退させ、その上で鍼治療を加え、新生血管発生の根本原因(眼底周囲の健康状態)を時間をかけて改善していく方法は、検討される価値があります。当院の統計症例報告から鍼治療を併用することで、必要以上に抗VEGF製剤を用いることなく、健側への発症や再発リスクも軽減されることが分かっています。(2006年までの当院症例報告から、針治療単独でも十分な効果は見込めます。)

・脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)の患者さんは、近年来院される方が増えている疾患です。来院される患者さんは、全国各地の大学病院など、高度な専門医療機関に通われている方が多く、これまで以上に確実な診断結果をいただけるようになりました。特に視力向上と手術の回避については確信を持てる診断結果が得られています。このことから現在までのところ、当院での脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)の針治療は、現代医学を含めた様々な治療法の中でも最も確率の高い治療方法の一つです。両眼への発症や遷延化した難治症例についても、時間はかかるものの良好な治療結果が得られる可能性があることが分かってきました。針治療を試してみる価値は十分にあると思われます。

・当院は2007年10月7日、(社)日本鍼灸師会 全国大会in大阪 での一般口演において、
演題 『中医学による加齢性黄斑変性症への鍼灸治療』を報告させていただきました。(内容の半数は脈絡膜新生血管です。)症例数は多くはないものの、国内の鍼灸治療としては、初めての統計的な発表になります。
 (日本鍼灸師会、全日本鍼灸学会の抄録検索での未発表を確認しています。)


・また2009年10月1日~12月1日、若年性黄斑変性について、50症例を超える規模による
中医学による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)への鍼灸治療(全3部) WEB公開版 を報告しました。若年性黄斑変性への針治療としては、日本で初めての統計的な意味合いを持つ症例報告になります。単なる症例報告に止まらず、世界的にも問題となっている黄斑変性に対して、針治療を中心に「どうしたら眼の健康を取り戻すことができるのか」を、テーマとした内容です。多くの方に見ていただきたいため、鍼灸の学術大会や学会には出さず、WEB上での公開とさせていただくことにしました。

・当院は今後も引き続き針治療を研鑽し、臨床を蓄積して、脈絡膜新生血管への取り組みを続けていきます。これまで来院していただき、勉強させていただいた多くの患者の皆様に感謝いたします。


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患者さんからよくある質問


Q 針治療により、脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性症)が治るのですか?

A 初回発症など、病歴が短く症状が軽い程、完全に治癒する可能性が高くなります。

・網膜黄斑変性症には様々な病態がありますが、脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)については加齢黄斑変性に比較して回復は良く、視力の向上や変視症の改善等で、手術法を中心とした現代医学での治療法に比較しても良好な結果が得られています。特に軽症例では視力が健側並に向上し、歪み等の変視が消失する等、治癒として差し支えない程の著効を示す症例に度々出会います。抗VEGF製剤(アバスチン等)との併用については問題はなく、長期経過後の針単独治療に対して差異は認めません。(抗VEGF製剤投与の直後効果は、1ヶ月程度までは針治療を上回りますので、重症例など状況により併用は効果的とも考えられます)

・非常に強い強度近視(病的近視)に由来する網膜黄斑変性症では網膜自体の脆弱性から程度により、一定期間治療した後でも状態がやや安定し辛い傾向が一部の方で見られています。また過去にPDT(光線力学療法)、レーザー(光凝固術)、アバスチン眼内注射やステロイド注射(テノン嚢下注射、硝子体内注射)等を繰り返した症例では、病気の遷延化や網膜が様々な後遺症などの障害を受けるため、治療効果として一定期間治療した後でも状態が安定し辛かったり、やや劣る傾向が見られています。

  
・鍼治療の効果は黄斑変性症の病態や程度により様々ですが、少なくとも現代医学でのアプローチのみに比べ、視力の向上や変視症の改善などの点で好結果が得られます。また5年以上鍼治療を続けられた症例などから長期的に多くの場合で悪化を回避し、健側への発症も防いでいると考えられます。現代医学での治療で完全な治癒が見込めないことも多い疾患ですが、鍼治療を加えることで病状は改善、安定し、生涯に渡って加齢黄斑変性への移行や失明の危険から眼を守ることができるものと思われます。なお、千秋針灸院では統計症例報告として、数年以内を目標に100名以上の規模による黄斑変性の報告をまとめる予定です。黄斑変性への鍼治療を科学的に明らかにしていきますので、ご期待下さい。

Q 医師から手術療法(アバスチン、ステロイド眼注等)を勧められましたが、どうしたら良いでしょう?

A 患者さん自身の眼の状況を正確に掴み、手術が本当に必要かどうか慎重に判断する必要があります。

・眼科医学は検査機器が急速に進歩している分野です。高度な医療機関でも最新の検査機器が入っているかは大変重要で、網膜分野の専門医がいるかどうかもポイントになります。当院に来院される患者さんで複数の大学病院で診察を受けられた方は、診断結果が異なる場合が多くあります。また抗VEGF製剤(アバスチン等)の適応についても、医療機関ごとに異なる場合が多い現実があります。急激に視力が下がる等、緊急を要する場合もありますが、医師に手術療法を勧められた時は、可能な限り別の医療機関でも意見を聞いた方が良いと思います。但し同一地域や出身医科大学の系列が関係して、折角のセカンドオピニオンは意味をなさない場合もあります。眼科医の立場上、当たり障りのない説明に終始されてしまうことも少なくありません。

・現在なら抗VEGF製剤(アバスチン等)の硝子体内注射は、活動期の新生血管の消退に関して最も効果があるようです。しかし患者さんの中には、硝子体内注射後に更に視力が落ちてしまった例もあり、副作用も少なからず生じています。また硝子体内注射を行ってもほとんど改善しない場合もあり、こうした場合に漫然と注射を繰り返していくことは、副作用や合併症のリスクを高めてしまうことになります。(アバスチンなどの硝子体内注射は過去の様々な手術療法に比較すれば、安全かつ効果が見込める治療法です)

・最近注意すべき副作用として、網膜色素上皮裂孔のリスクが問題視されています。光線力学療法(PDT)や坑VEGF抗体硝子体内注射(アバスチン、ルセンティス、アイリーアなど)を行った後に、新生血管の消退や萎縮した網膜色素上皮などから牽引が起こり、網膜色素上皮が裂けたり小型の傷ができるもので、黄斑部を巻き込んで裂孔が生じると大幅な視力低下に繋がります。特にアバスチンでの発生率は、ルセンティス等の4倍と報告されています。このことは近視性黄斑変性の患者さんの網膜は元々脆弱であり、網膜色素上皮剝離(網膜浮腫)などを伴うことが多いため、網膜が薬剤による急速な変化に耐えられないことを意味しています。たとえ時間が掛かっても適切な鍼治療などにより、網膜を健全にする方向が長期的な観点からも無理なく正しいことは言うまでもありません。また長期に渡る繰り返し投与も緑内障や脳梗塞などの様々なリスクを負う可能性が指摘されるようになっています。

・非常に活発な活動期で、短期間に大幅な視力低下を伴う緊急の場合を除き、針治療により数ヶ月の治療を行えば、良好な状態に変化していく可能性が十分にあります。緊急の場合を除き、まず3ヶ月程の針治療を試してみることをお勧めします。多くの方で視力の向上や眼底病変の改善等により、ほとんどの場合に針治療開始後のアバスチン眼内注射は不要となっている事実があります。網膜黄斑変性をはじめ、多くの病気で結局は自分自身の治癒力を高めていかなければ再発や悪化を繰り返してしまいます。この観点からも硝子体内注射などの手術療法は可能な限り必要最低限にすべきと考えます。

Q 針灸院で視力や変視症の測定で効果が出ている場合に、病院等の診察でも同じ結果が得られますか? 

A 視力は眼科と同等(遠見視力)の測定法ですので、病院等での診断でも同様な変化の結果が得られます。

・当院の視力測定は公式に0.03から測定可能ですので、通常の医療機関では手動弁(カード等)となる0.1未満の視力でも正確に測定可能です。手動弁(カード等)や近距離(スペースセービングチャート)での視力検査に比較して、NIDEK社システムチャートSC-2000を使用する当院での測定結果の方が正確な場合があります。ただし使われている眼鏡やコンタクトレンズによる測定になりますので、眼科で行われるトライアルレンズによる完全な矯正視力検査ではありません。

・当院の変視症測定については鈴木式アイチェックチャート、M-CHARTS共に、眼科医学に基づいた医学的根拠のある評価法として、眼科医学界に認知されているものです。しかし現在の眼科医学は患者さんが自覚できる視力や変視症等の変化よりも、眼底の状態を画像として捉える他覚検査に重点が置かれており、患者さんの自覚による評価法は重視されない傾向です。このため当院での測定結果は眼科医学としては通用するものですが、当院での測定法を眼科医が採用していない場合は、評価していただけないケースがあります。

・当院では患者さんに自覚できる視力の向上や変視症の改善が最も重視すべき内容と考えており、一般の眼科医療とは別の角度から脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)に対しての鍼治療を行ってきました。また鍼治療の効果を客観的に判定するために各種の評価法を取り入れ、脈絡膜新生血管への確実な治療を目標としています。

Q 脈絡膜新生血管への鍼治療は、どこの鍼灸院で受けても大丈夫ですか?

A 鍼灸院の治療水準には少なからず違いが有りますので、適切に対応できる治療院を選んで下さい。

・これまで眼科領域を専門とする治療院は限られ、遠方の患者さんは実質的に治療の継続が困難でした。当院でも遠方から来院されている患者さんの治療は最も大きな課題です。そこで当院では治療法や測定方法を公開して、全国で実力があり眼科領域の鍼治療に協力していただける治療院さんと眼科鍼灸ネットワークを作り、遠方の患者さんへ距離の壁を越えた可能な限りの治療ができる体制を目指しています。提携先治療院での治療方法は当院と完全に同一ではありませんが、当院の治療法や治療方針を参考にしていただき、また医学的な根拠に基づいた測定により鍼治療での「結果」が得られるよう努力をしています。

・当院では視力や変視症に対しての医学的な根拠に基づいた評価法を重要と考え、積極的に導入してきましたが、眼科領域を専門と掲げている著明な治療院でも、こうした評価法は行われていないようです。医学的根拠に基づいた評価法が行われていないということは、その治療院の鍼治療自体に根拠が乏しいと言われても仕方がありません。また眼科医療機関では通常眼底検査(造影・OCT等)が重視され、眼科医療としての基礎である視力や自覚検査はあまり丁寧ではない場合があります。患者さんにとっては自覚検査も他覚検査(眼底等)も共に大切になりますので、当院の眼科鍼灸ネットワークでの治療では、視力や変視症の評価を大切にしています。

眼科領域の難病治療を提携治療院で(当院ページ)から、お近くの治療院をお探し下さい。

Q 針治療はサプリメント(ルテインなど)や漢方薬、医薬品(利尿剤、循環改善薬等)との併用は可能ですか?

A 針治療は病院から処方される医薬品や、一般のサプリメントなどとの併用に問題はありません。

・針治療は薬物ではなく、患者さんごとの体質や症状に合わせて最適なツボに必要な刺激を与えることで、誰もが本来持っている自然治癒力を引き出す治療法です。このため基本的に他の治療法と併用されても通常は問題ありません。針治療を併用することで薬物は効き目が増すことも多いようです。(緑内障やバセドウ病等、多くの実例があります)ルテインや漢方薬だけで効果が実感できなかった方も、当院の針治療を受けられる場合は続けてみて下さい。以下、各療法の併用での注意点を挙げます。

サプリメント(ルテイン等)...過剰摂取にならないよう用量を守って下さい。あまりに多種の摂取は控えましょう。
漢方薬...体質に合うかが最も大切です。漢方薬は体質に合わない場合には副作用が出ることもあります。
医薬品...当院から薬物療法への指示はできません。医師の説明から納得のいくものは服用して下さい。


Q 針治療は視力低下や感染症等の副作用の危険はないのですか? 医師には分からないと言われますが。

A 適切に行われる鍼治療では、病気の悪化や感染症のリスクはありません。
・鍼治療は薬物を全く使用しない治療法です。更に当院の治療法では感染のリスクや強い内出血を伴う眼窩内への鍼も行いません。また患者さん毎の専用鍼(日本製)を治療毎に滅菌処理していますので、副作用や感染症についての心配はありません。眼科領域の全ての外科的な手術法(レーザー、PDT、硝子体内注射など)に比較して、最も安全な治療法です。当院では眼科領域の患者さんへは10才未満の子どもさんから、安全で痛みの少ない鍼治療を行っています。


・日本では医師の教育や医療制度に鍼灸が組み込まれていないため、鍼治療の実際については医師にもあまり理解されてはいません。しかし当院が専門とする眼科分野は、現代医学の中でも検査機器が進歩している分野です。医師にはなかなか理解していただけない部分もありますが、一人一人の患者さんを丁寧に治療し、眼科医学的にも結果を出し、積み重ねることが、この病気の克服に繋がるものと思います。現代医学以外は一切を信用しない方もありますが、私自身が難病のクローン病(国の指定する特定疾患)を患い、克服した経験から、どのような治療でも、結果を出せる治療が患者さんにとって意味があり、結果の出せない治療法は現代医学でも鍼灸治療でも意味が無いと考えています。患者さんの見え易さにつながる結果が全てです。

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院長からひとこと


・症例報告を行うにあたり、黄斑変性症への当院の針治療の役割が明確になりましたので、まとめました。

著明な視力低下が起こる前に、視力や視界の状況を改善する目的
(眼科では視力が低下するまで、経過観察が多くなります。悪化する前に治療を開始できます。)

長期に渡り、再発や悪化、健側への発症を予防する目的
(再発や悪化、健側への発症が生じる可能性がありますが、針治療では長期に渡り予防できています。)


抗VEGF製剤(ルセンティス、アバスチン等)の再注射を回避する目的
(針治療により視力や眼底の状態などは改善することも多く、再注射等を回避することが期待できます。)


・当院の脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)の治療は、特に視力(矯正視力)の向上や変視(歪み・中心暗点)等の症状軽減に特徴があり、眼科での診断でも良好な結果が得られています。特に発症してからの経過が短く比較的軽症な場合には治療効果も高く、短期間に改善する傾向があります。

・最近では矯正視力で0.5以上の、視力低下が大きく進む前に来院される方が増えています。脈絡膜新生血管では有効性を認められている予防薬や治療薬(内服)が無く、手術はリスクの大きさから視力が0.5以下に低下するまで行われず経過観察とされることも多いですが、発症したばかりの患者さんの立場からすると、視力の悪化を待つのは大変な苦痛を伴います。針治療はどのような状態でも適応し、視力低下が大きくない程、効果も高い傾向があります。視力の低下を待つことなく、針治療により手術も回避できる可能性が高いため、早期に治療を受けられることをお勧めします。

・当院のホームページから来院され、発症後数週間という、かなり早期に治療を開始できたケースがあります。このケースでは視野内の暗点(眼底出血)が少なく視力低下が固定されなかったため、針治療のみで半年程度で視野内の暗点がほぼ消失し、視力が発症以前の状態に回復しました。早期の治療開始が好結果を生んだ症例と思います。この症例は約2年後に眼科医から「黄斑変性ではない」と診断されました。当初は新生血管の存在が確認され、レーザー治療等が検討されたことから、間違い無く脈絡膜新生血管だったのですが、眼科では経過観察のみで治療が行われていなかった為、「自然に治る訳が無い」という意味の裏返しの診断なのでしょう。つまり針治療のみで医学的にも治ってしまったということになります。

・患者さんに気をつけていただく事として、喫煙(血管を収縮させるため眼底の血流量が低下する)は止めることや、紫外線(黄斑部を刺激し変性を促す)を避ける、野菜中心の食事やルテインの摂取、パソコン等の目に負担をかける作業は極力避ける、コンタクトレンズ(目への負担を避けるため)の使用を避ける等の指導をしています。仕事等、止むを得ない場合もあるかと思いますが、ご自身でも努力していただきたいと思います。

・千秋針灸院には様々な病気や症状の方が来院されますが、当院では既に100名を超える網膜黄斑変性の治療実績があります。この結果、一般の鍼灸院等に比較し脈絡膜新生血管に関しては臨床数が圧倒的に多く、データや治療法、経験も豊富に蓄積されているため、様々な状態にある患者さんに合った治療方法を提案することが可能です。当院では眼科領域を唯一の専門領域として位置付けているため、全力で眼科疾患に集中した取り組みを行っており、他の眼科領域の疾患も含め、高い専門性を皆様に役立てていけることを目指しています。遠方の方は提携治療院等、充分な治療水準の治療院がある場合は、通える範囲にある治療院を紹介していますが、眼科領域の疾患に対応できる治療院は非常に限られますので、通院可能な場合は出来る限り当院もしくは提携治療院での治療をお薦めします。

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患者さんに気をつけていただくこと若年性黄斑変性サポート情報)


・脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)は外傷とは違い突然発症したものではなく、多くは日常の積み重ねから生じるものです。治療効果を確実なものにするには、発症した背景である患者さん自身の日常生活も可能な限り変えていく努力が必要になります。当院では中医学や眼科学に基づき、また100名以上の患者さんの問診や傾向から脈絡膜新生血管を把握し、当院独自の生活指導を行っています。針治療を受けられていない方も参考にしていただけたらと思います。

中薬(漢方薬)、抗酸化サプリメント、遮光レンズのご紹介

●コンタクトレンズの使用は可能な限り避けましょう。

50歳未満で発症し、特発性脈絡膜新生血管もしくは近視性黄斑変性と診断され、当院に来院された多くの患者さんへの問診から、この病気の発症に、コンタクトレンズの長期装用が強く関与している可能性が疑われる結果となりました。

・2009年4月末までに、特発性脈絡膜新生血管もしくは近視性黄斑変性と診断され、当院に来院された患者さん37名の問診では、37名中31名(83.8%)がコンタクトレンズ(CL)の長期装用者(10年以上)でした。内CL装用歴が明らかな25名について、発症までの平均年数は18.6年、全員がCL装用歴11年以上、最も若く発症した方は20代前半でした。また両眼へ発症した症例は37名中9名(24.3%)でした。近視等によりCL装用者は年々増えており、日本国内では1.503万人(2004年)、2010年には1.640万人と予想されています。また小学生以下への低年齢化も進んでおり、高校生では近視者の4人に1人はCLを使用しているとの報告もあります。しかし50歳未満に発症するとされる特発性脈絡膜新生血管や近視性黄斑変性の8割以上が、CL長期装用者であるという事実は、発症に強く関与している可能性が疑われるものです。引き続き当院でも統計を取り、調べていきます。

コンタクトレンズ(CL)については、医学的に角膜までの障害リスクを伴うものとされ、深部の網膜は無関係とされています。しかしながら当院へ来院された数十名への聞き取り調査では、CLの長期使用歴を持つ方の割合が高く、無関係ではないと考えるのが自然です。CLを使用すると脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)になる訳ではありませんが、元々発症リスクを抱えている方は、CLの長期使用が眼に負担をかけ、間接的に関わるのではないかと考えます。

・コンタクトレンズの長期装用に関わる話として、装用歴が長く角膜が慢性的に酸素欠乏が続いた場合には、角膜周辺部から新生血管が角膜に入り込むことがあります。特に従来型のSCL装用を続けた場合には9割もの発症が報告されており、CLの種類や装用について再検討する必要があります。一度角膜内に新生血管を生じると消失しませんが、CLを中止するなどして酸素欠乏が改善すると血管としての機能を失い、萎縮して白色の形骸血管になります。角膜表層だけでなく深層にみられることもあり、酸素欠乏による角膜細胞からのVEGF(血管内皮細胞増殖因子)により、角膜内で新生血管を生じる事実は、私が仮説を立てているCLの長期装用が、若年性黄斑変性・脈絡膜新生血管の発症原因に成り得ることの裏付けを示唆していると考えています。

・当院ではコンタクトレンズ(CL)の使用を中止したり、装用時間を限定するなどして、高性能な遮光レンズ(東海光学等)の眼鏡の使用をお勧めしています。CLは大変便利ですので使用が中止できない場合でも、本当に必要な時だけに限るなど、一日の装用時間をできる限り少なくする必要があります。
また当院の患者さんでCL装用を続けられている方は、使用を止められた方に比較して視力の向上等、治療結果が明らかに低下するようです。(将来的には統計的に結果を報告したいと思います) 様々な理由からCL装用を続けられる方がありますが、可能な限り最小限の使用としていただきたいと思います。

●OA作業が多い方など、できる限りの対策を取りましょう。

仕事や日常生活で目にかかる負担が増えています。仕事は減らす訳にはいきませんが、日常生活での目の負担を減らすことやディスプレイの調整、また様々な場面で医療向け遮光レンズも役立ちます。

・パソコン用ディスプレイやタブレット・スマートフォンの画面、大型液晶TV等は紫外線や目に負担をかける短波長光(青色光)を出しています。使用時間自体をできるだけ減らすと共に、周辺の明るさも関係しますが液晶ディスプレイでは特に輝度(明るさ)を調整することで目の疲れが軽減できます。また連続して見続けないよう気をつけることも大切です。スマートフォンやタブレットなど、目が近くに焦点を合わせる必要のある機器は、輻輳(寄り目)が大きくなることからテレビなどに比較して大幅に目の調節への負担が増加します。原理的にコンタクトレンズは眼鏡に比較して輻輳が大きくなるため、更に目への負担が増えることも知っておきましょう。

・また最新の高性能な遮光レンズは、周囲の方が気づかない程の薄い色で、一般のサングラスを上回る紫外線の遮断効果、短波長光を減少させ眩しさを軽減する特徴があります。目への負担を減らし、白内障の予防効果も期待できますので、脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)の方に限らず広くお勧めしています。コンタクトレンズ(CL)のUVカット効果等とは比較にならない程の高性能ですので、特にCLから遮光レンズを使用した眼鏡へ換えることは治療上も大きな意味を持つと思われます。また、瞳孔拡大による眼圧上昇(眼底の血流を低下させる)や顔と眼鏡の隙間から入り込む紫外線を抑えるためにも、当院ではできるだけ薄い色のレンズをお勧めしています。なお遮光レンズの色素は経年劣化します。使い方にもよりますが、3年程度を目安に交換しましょう。


●胃腸に負担をかける食生活を改めましょう。

中医学では胃腸や肝臓に負担をかけることで、出血傾向や自然治癒力の低下を招き眼病を招くとされています。また当院の数十名以上の患者さんの問診や体質からも、同じような傾向を掴んでいます。

・特に女性の方ではチョコレート等の甘い物(砂糖)、男性では食べ過ぎや長年の飲酒が原因で、胃腸や肝臓の弱りを起こしている方が多いようです。食べ過ぎや甘い物の摂り過ぎは胃腸を弱らせ眼底部を含めた出血傾向を高めます。甘い物の摂り過ぎは案外ノーマークの方が多いようです。最近は何かと甘い物を口にする機会が増えていると思いますので、特に気をつけていただきたいものです。また毎日の飲酒も量にもよりますが自然治癒力の低下を招き、体の回復力を弱めてしまいます。実際、脈絡膜新生血管の患者さんに多くみられる網膜浮腫は、飲酒や水分摂取を控えめにすることで改善する傾向があります。

・適度な運動と十分な休養、適切な食事ができていれば、大抵の病気は起こり難くなり、また治りやすいものです。脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)の患者さんには針治療だけではなく、自分でできるところから改善していただくことで、脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)黄斑変性という難病から抜け出すことに繋がります。当院でも可能な限りサポートをしていますが、治療と共に努力していきましょう。

●眼科疾患へのアバスチン等(抗VEGF)療法に対する重大な副作用が指摘されています。

最近の眼科専門書には、抗VEGF療法(アバスチン、ルセンティス、マクジェン)に対する限界や問題点が記載されるようになっています。手元の書籍では『眼科診療のコツと落とし穴 薬物療法』 中山書店 で 神戸大学の本田茂医師は、むやみな再投与に対する血行路形成への支障や、繰り返し投与の効果減弱を指摘しています。また海外では副作用として、脳梗塞や緑内障の発症リスクが高まることも報告されるようになりました。

・2009年に当院が公開した統計症例報告でも、抗VEGF療法の複数回投与では視力改善への効果が明らかに落ちることを指摘しており、その後も期間を空けての再投与は効果が薄くなることを幾例もの症例で確認しています。複数回の抗VEGF療法が効かなくなる原因は、組成がタンパク質である抗VEGF療法薬は、繰り返し投与により抗VEGF薬物への抗体が出現することに加え、正常な血行路形成を阻害し、網膜の健康状態を悪化させてしまうからと考えられています。私も数年前から臨床の中で気づいていましたが、最近では徐々に抗VEGF療法は積極的には使わないとする眼科医も増えているようです。しかし一方で現在でも漫然と使い続ける眼科医もあることから、本当に必要な状況であるのか、また十分な効果が得られる可能性はあるのかを慎重に検討する必要があると考えます。

・この話を簡潔に言えば、初回(連続3回程度まで)の抗VEGF療法については、良好な効果が期待できますが、一旦抗VEGF療法を行った後の再発症については、初回のような良好な効果はまず期待できません。また網膜浮腫に対して注射を行う向きもありますが、数ヶ月で薬の効果が切れてくると再発するケースが多く、この場合には10回・20回と注射を繰り返すことになります。十分な効果が得られない場合に繰り返し再投与を行う事は、患者さんがリスクだけを負うことになります。抗VEGF療法を行った後の再発症では、現在では眼科での有効な治療法がありませんので、状況が悪化しない内に当院や提携治療院での針治療を含めた、他の治療法の検討をお勧めします。


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関連リンク・参考文献


●関連リンク

眼科領域の針灸治療 (当院ページ)
眼科領域の難病治療を提携治療院で(当院ページ)

●症例報告

演題 『中医学による加齢性黄斑変性症への鍼灸治療』 (当院ページ) 2007
中医学による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)への鍼灸治療(全3部) WEB公開版 2009

参考文献・蔵書一覧 (当院ページ)

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