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千秋針灸院の症例報告  ※リンクや紹介は自由ですが、千秋針灸院の著作物です。内容の無断での転載等は固くお断りいたします。

中医学による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)への鍼灸治療   Copyright © Chiaki. All Rights Reserved 2009.11.1

第2部 鍼治療の脈絡膜新生血管(CNV)への短期成績と抗VEGF療法

 第2部のあらましと、当院の視力測定機器について

 針治療開始から3ヶ月後の平均視力の変化

 発症から針治療開始までを、経過期間別に分類した場合の平均視力の推移と分布

 ○針治療による健側の視力変化

 抗VEGF療法(アバスチン等)と針治療

 ○抗VEGF療法やPDT、ステロイドの複数回治療症例の統計

 ○第2部のまとめ

第2部のあらましと、当院での視力測定について

第1部では問診などから分かってきた、脈絡膜新生血管(CNV)の新たな概要や、現在の眼科医学の課題について書いてきました。
今回の第2部では、針治療による比較的短期間での視力などの治療成績や、発症からの時間的な状況による結果の違い、健側の
視力変化、最近のアバスチンに代表される抗VEGF療法との併用など、様々な実際の状況を報告します。

視力の測定については、NIDEK社のシステムチャート SC-2000 を3メートルの距離から運用するもので、眼科領域では最新の
視力表であり、公式に0.03からの測定をサポートしています。一般の眼科では手動弁(カードなど)で測定する場合も多い0.1未満の
視力まで詳細・正確に測定可能です。

視力測定は当初から毎回治療前に行うこととし、体調の変動による測定結果の影響を無くすために、3ヶ月後の測定は前後数回の
平均的な値としています。ただし初回については、2診目には針治療の影響を受ける可能性があるため、初回の数値としています。
また治療開始当初から3ヶ月までの視力については、基本的に患者さんの常用している眼鏡等による矯正視力となります。

 NIDEK社のシステムチャート SC-2000

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針治療開始から3ヶ月後の平均視力の変化

当院もしくは提携治療院で治療を行い、視力測定が行えた患者さん44名55眼について、針治療を開始してから3ヶ月後の平均
視力と視力変化の段階を統計にしました。視力変化の段階については、視力表(NIDEK社 SC-2000)の段階を1段階として、
治療開始当初から矯正視力で1.0以上の症例を除いた、51眼を対象としました。なお視力変化の段階については、1段階以内の
変化は不変、2段階の変化は悪化もしくは有効、3段階以上の向上は著効としました。また、視力表の段階とは、0.03、0.04、0.05、
0.06、0.08、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、2.0 の各視力の値となります。


当院での治療法については、針治療のみとし、治療開始当初から3ヶ月は、概ね週に2回の治療を推奨しています。ただし、
矯正視力が1.0以上ある場合は週1回、遠方などのため止むを得ず、十分な治療回数ができていない症例が含まれています。

 

3ヶ月間の鍼治療で、視力は有意に向上

針治療開始3ヶ月後の44名55眼の平均視力は、0.45→0.67へと向上しました。また治療開始当初から矯正視力1.0以上の方を
除いた51眼の個別の視力変化は、悪化1眼(2.0%)、不変19眼(37.3%)、有効7眼(13.7%)、著効24眼(47.1%)となりました。

3ヶ月時点で悪化している1眼については、新生血管による急速な悪化時期に当院に来院され、3ヶ月間で数回の針治療しか
できず、発症した当時は抗VEGF療法(アバスチン眼内注射)も一般的でなかったため、2段階の悪化になった症例です。
また8段階以上向上した2例については、1例は発症後すぐに来院され、初診時に視力低下が0.1未満まで進行していたため、
当院から針治療と抗VEGF療法の併用をお勧めし、著しい改善が得られた症例です。もう一例は、中心性漿液性脈絡網膜症
(CSC)等との鑑別が医師の診断で分かれているものの、初診時に視力低下が0.1未満まで進行していた症例になります。

針治療開始から3ヶ月間での視力の変化をまとめてみると、有効と著効を合わせた総有効率は60.8%(31/51)となり、概ね
一昨年の報告に近い結果が得られました。ただし初めての報告となった、一昨年に比べて症例数は増え、発症から長期間が
経過した症例や視力低下が著しい症例、抗VEGF療法(アバスチン眼内注射)を行った症例、発症後非常に早くから針治療を
開始した症例など、様々な症例がありました。針治療は全体としては、概ね有効ではありますが、様々な条件で効果の違いが
あることも分かってきています。以下は、様々な条件での結果を報告していきます。


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発症から針治療開始までを、経過期間別に分類した場合の平均視力の推移と分布

発症したと考えられる時期から、針治療の開始までの期間を、3ヶ月以内(16眼)、4~12ヶ月(14眼)、13~59ヶ月(21眼)、60ヶ月
以上(4眼※症例数寡少なため参考値)の4グループに分類し、針治療開始から3ヶ月後の平均視力を統計化しました。
概ね発症時期が明らかで、針治療開始から約3ヶ月後の測定が行えた55眼を対象としました。


 針治療開始後3ヶ月までの経過期間別平均視力

発症後1年以内での鍼治療の開始が望ましい

発症から3ヶ月以内の16眼では、0.52→0.82(+0.30)、4~12ヶ月以内の14眼では、0.54→0.8(+0.26)、12~59ヶ月の21眼では、
0.40→0.57(+0.17)、60ヶ月以上の4眼(症例数が寡少なため参考値)では0.15→0.19(+0.04)となりました。

治療開始時の視力は、発症から3ヶ月以内の症例群、4~12ヶ月以内の症例群はほぼ同じで、針治療開始後3ヶ月での平均視力の
改善量も同様といえます。発症から12~59ヶ月の症例群では、やや治療開始時の視力は、発症から12ヶ月以内の症例群に比較し
低下し、平均視力の改善幅もやや少なくなります。発症から60ヶ月以上の症例群(症例数が寡少なため参考値)では、治療開始時の
視力は低下しており、改善する幅も少ない傾向です。次に発症からの期間別に、視力の変化を表してみました。

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針治療を3ヶ月間行った後の視力変化を、発症からの経過時間別に、3ヶ月以内(16眼)、4~12ヶ月(10眼)、13~59ヶ月(21眼)、
60ヶ月以上(4眼※症例数寡少なため参考値)に分類したグラフになります。対象は治療開始当初に矯正視力が1.0以上の症例を
除いた51眼で、先の3ヶ月後視力変化の段階と同じです。

 経過期間別の視力の変化

発症後早期の鍼治療は非常に効果的

分かり難いグラフになりましたが、発症から3ヶ月以内に針治療を行った症例群では、改善の個人差が幅広い傾向が見られます。
発症から3ヶ月以内で、更に針治療開始から3ヶ月という期間は、まだ脈絡膜新生血管(CNV)の活動期であり、また針治療による
視機能の改善が続いている期間のため、回復の早い症例と遅い症例が混在していることを示しています。また最近の傾向として、
抗VEGF療法(アバスチン、マクジェン、ルセンティス等)の後から開始される方が増えており、今回の統計結果にも影響しています。
鍼治療を開始して短期間で7段階以上の改善や、治癒(新生血管消失)の診断をいただくことがあるのは、このグループです。

次に発症から4~12ヶ月という期間では、CNVの活動が一旦終息に向かう症例が多くなり、3ヶ月間の針治療が安定して結果を
残していることを示しています。3ヶ月間の針治療の有効(2段階以上の改善)割合は、発症から3ヶ月以内で62.5%、4~12ヶ月で
90.0%となりました。この結果だけを見ると、発症から4~12ヶ月の症例への成績が良好に見えますが、短期間で劇的に改善する
割合は少なくなる傾向もあります。やはり発症後早めに針治療を行う方が、大幅な改善が得られる可能性が高まります。

発症から13~59ヶ月の症例群では、12ヶ月以内の症例群に比較して、有効(2段階以上の改善)割合は52.4%と低下しています。
このことは発症から1年以上経過している患者さんでは多くの場合に、最初に発症したCNVは活動期を終え既に瘢痕化していたり、
小康状態であったCNVが再発症した症例が多く、針治療の開始時視力は低下しており、改善幅もやや少なくなる傾向があります。
また60ヶ月以上では症例数は少ないため参考値ですが、黄斑部は完全に瘢痕化しており、3ヶ月間の針治療で視機能の大幅な
改善は難しい状況です。


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針治療による健側の視力変化

健側の鍼治療開始当初と3ヶ月後での、36眼の視力変化の平均値を表してみました。当院の鍼治療はCNV発症眼、健側を問わず
眼の周囲や全身に行っており、視機能に異常の無い健側にも効果が及ぶものと考えられます。健側の視力が向上することは、
3割前後とされる脈絡膜新生血管(CNV)の両眼への発症を、未然に予防できる可能性を示すものです。なお視力は患者さんの
常用している眼鏡により矯正されたものなります。


 健側における鍼治療開始当初と、3ヶ月後の平均視力の変化

鍼治療は健側の視力を向上させ、脈絡膜新生血管(CNV)の両眼への発症を予防する可能性がある

片眼にCNVを発症した患者さんの36眼について、鍼治療を開始して3ヶ月間で平均視力は1.18→1.33と向上していました。通常
片眼から発症する脈絡膜新生血管(CNV)では、発症眼では抗VEGF療法(アバスチン等)をはじめ、新しい治療法が登場して
います。一方で正常な健側については特に問題にはされていませんでした。しかし片眼に発症したCNVは、少なくとも3割前後で
健側にも発症することが分かっており、健側での発症予防は患者さんの長期的な視機能維持のためにも、大変重要な課題です。

最近導入が進んでいる検査機器の光干渉断層計(OCT)は、特に最新の機種では眼底の隅々の状態を、立体的かつ写実的に
映し出すことができます。この最新機種の画像から、強度近視によるCNVを発症された患者さんにご協力いただき、これまでの
眼科専門書にも掲載されていない健側の状態、鍼治療を始める前と開始後の眼底全体の画像をいただくことができました。

強度近視の患者さんの眼底では、網膜が薄く引き延ばされるだけでなく、CNV発症眼や健側を問わず、黄斑部以外の場所でも
小規模な漿液性の浮腫や剥離、眼底出血、不明なドルーゼン(小円形隆起病巣)なども点在し、視機能に異常の無い健側も、
完全には健全な状態ではない場合があることが、最新のOCTの画像から分かってきました。この事実は、視機能に異常の無い
健側においても、数ヶ月から数年後にCNVが発症する可能性があることを示唆しています。

当院の鍼治療を継続することにより、CNV発症眼や健側を問わず、最新のOCT画像上でも分かるような変化が得られることが
分かってきました。鍼治療を継続されている患者さんの眼底では、CNVだけでなく小規模な漿液性の浮腫や剥離、眼底出血、
不明なドルーゼン(小円形隆起病巣)等も多くは縮小、あるいは消失し、眼底写真やOCT画像上でもきれいになっていました。
鍼治療は眼底の血流量を増やし、CNV発症眼や健側を問わず、網膜の健全性を高めることに繋がることが分かります。

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抗VEGF療法(アバスチン等)と針治療

2009年現在、眼科医療として脈絡膜新生血管(CNV)に対しての治療は、外科的療法(CNV抜去術、黄斑移動術)、ステロイド、
光線力学療法(PDT)、抗VEGF療法(アバスチン、ルセンティス、マクジェン)等があり、最近では抗VEGF療法が主流になりつつ
あります。特にルセンティス(アバスチンも含む)はCNVに対して、初めて視機能の向上に有効性を認められた薬剤です。最近では
当院に来院される患者さんの中に、抗VEGF療法の術後の視力維持や、鍼治療との併用により相乗効果を期待されるケースが
増えつつあり、まだ症例数は多くはないのですが、抗VEGF療法と当院の鍼治療について、分かってきたことを挙げていきます。

抗VEGF療法(アバスチン、ルセンティス、マクジェン)については、硝子体内へ薬剤を注射した後、概ね数日以内に硝子体内での
濃度は半減し、数日から1ヶ月頃までに視機能の回復が顕著となり、2ヶ月程で薬剤の効果は無くなります。このため眼科により、
毎月1回の注射を3ヶ月連続で行われています。CNVへの鍼治療の効果を考える場合に、抗VEGF療法との兼ね合いを考慮し、
患者さんにとって最適と考えられる治療法が選択できるよう、症例を基に眼科医学を踏まえながら、当院の考えを述べていきます。

抗VEGF療法(アバスチン、ルセンティス、マクジェン等)の後、2ヶ月以内(4日後~2ヶ月、平均26日後)に鍼治療を開始した8眼に
ついて、鍼治療開始当初と、その3ヶ月後の平均視力の統計となります。また同じく、視力変化の段階の分布を表してみました。
ただし視力変化の段階の分布では、治療開始当初の視力が1.0以上あった1例を除く7症例に加えて、当初から抗VEGF療法と
併用された1症例を色違いで表しています。


 

抗VEGF(アバスチン等)+鍼治療では、平均視力は更に向上

当院に来院された時点での当初視力は平均で0.53であり、鍼治療開始後3ヶ月の時点での平均視力は0.72(+0.19)と向上しました。
なお抗VEGF療法は薬剤毎に、若干効果の高さや効果期間は異なりますが、全ての薬剤は1回の硝子体注射後、2ヶ月以内には
概ね効力を失うことが分かっています。症例毎に異なる部分もありますが、ここに挙げた症例では、患者さんの当院初診の時点が、
視力としては抗VEGF療法が最も効力を発揮している時期と考えるのが妥当と考えられます。鍼治療開始3ヶ月後の平均視力で、
先に挙げた鍼治療による平均視力の向上幅(発症後12ヶ月以内等)に比較し、若干低下していることでも証明できると思われます。


針灸院である当院に来院される患者さんは、抗VEGF療法後の最も薬剤の効果が高い時期に、鍼治療を開始していると考えられ、
鍼治療は薬剤が効力を失った3ヶ月以降(鍼治療開始までの期間+3ヶ月間)でも、更に視力を向上させることが分かりました。
また発症後すぐに当院に来院され、視力が大幅に低下(0.1未満)のため、抗VEGF療法と鍼治療を初めから併用された症例では、
3ヶ月後に0.8まで回復しており、中心暗点や歪みといった変視も大幅に軽減していました。こうした症例などからも、抗VEGF療法に
鍼治療を併用していくことは、抗VEGF療法に上乗せした視力の向上や、その後の視力を維持していく効果があることが分かります。


更に抗VEGF療法を行う事前に当院へ来院され、鍼治療を開始することで視力が向上し、抗VEGF療法を回避した症例も数例あり、
鍼治療開始後にCNVの活動が活発になったり、視力の悪化による抗VEGF療法の再施行は、当院では現在までありません。
(但し提携治療院で鍼治療を行っている患者さんでは、一部で抗VEGF療法の再施行の報告を受けていますので、今後も無いとは
言えません) 
鍼治療は単独でもCNVに対して効果を発揮しますが、抗VEGF療法との併用でも、良好な結果が得られることが
分かりました。


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抗VEGF療法やPDT、ステロイドの複数回治療症例の統計

抗VEGF(アバスチン等)療法をはじめ、複数回の眼科での外科的な治療歴のある6症例(発症から平均19ヶ月)について、鍼治療
開始から3ヶ月後の視力変化を統計化し、3ヶ月間鍼治療を受け、測定した全症例と比較してみました。ただし6例と症例数が少ない
ため、信頼性は低いものです。対象の治療歴にはアバスチン、マクジェン、光線力学療法(PDT)、ステロイド療法が含まれています。


 

抗VEGF、ステロイド(眼内注射)やPDT(レーザー)を繰り返した症例では、回復は少なくなる傾向

複数回の外科的な治療を行った6症例(発症から平均19ヶ月)への、鍼治療3ヶ月後の平均視力は、0.36→0.5(+0.14)となり、鍼治療
3ヶ月後の全体の平均0.45→0.67(+0.22)等に比較して、向上幅は少なくなる傾向があります。また、視力変化の段階(変化量)は
最大でも3段階までの回復となり、鍼治療全体に対して大幅な改善例は無く、改善幅も小さく限られています。対象とした症例では、
発症から平均19ヶ月が経過しているため、鍼治療を行った場合の向上幅は少なくなる傾向があるものの、発症から13~59ヶ月が
経過した症例群(21眼)の平均値0.40→0.57(+0.17)に比較しても、良い結果ではありません。


抗VEGF療法をはじめ、様々な眼科での外科的な治療を受けられた症例を分析すると、複数回の抗VEGF療法やPDT、ステロイド等を
受けた症例では、鍼治療を行っても視機能の改善が少なくなる傾向があります。このことは鍼治療が患者さん自身の治癒力を高めて
視機能の回復を促すことに対し、抗VEGF療法やPDTを繰り返した場合、網膜が少しずつダメージを受け、本来の治癒力が低下していく
可能性があることが考えられます。PDTでは若干ですがレーザー照射による黄斑部への障害、抗VEGF療法では正常な血管形成に
関わるVEGFも含めて阻害してしまう可能性が指摘されています。また頻回の抗VEGF療法は抗VEGF抗体(抗VEGF薬剤を無効化)を
生じ、再使用時に効果が減弱することもあるようです。こうした治療法のみに頼ることは、合併症を含めたリスクが生じ易くなるだけで
なく、網膜が本来持っている治癒力の低下につながることが考えられます。

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第2部のまとめ

第2部では鍼治療の開始から3ヶ月間までという短期間の視力変化を、様々な条件から分類し評価する試みをしました。脈絡膜新生
血管(CNV)への鍼治療は、全般に視力の向上といった改善は見られるものの、その効果は一様ではなく、特に発症から1年以内の
CNVの活動期から、CNVが退縮し瘢痕へと向かう時期が最も効果的であることが分かりました。また発症後1年から5年程度までの
CNVの再発や瘢痕化しつつある症例でも、一定度までの視力の改善傾向が明らかになりました。

ただし完全にCNVが瘢痕化したと考えられる症例(4眼・症例数寡少のため参考値)では視力の改善は限られたものになり、大幅な
改善は難しくなるようです。しかしながら、50歳以上に見られる加齢性黄斑変性(AMD)においては、長期間が経過した萎縮型に
対しても、良好な効果が得られている症例もあることから、一概に難しいと決めつけて、私たち治療者側から安易に限界を作っては
ならないとも思います。

また健側の視力についても、3ヶ月間の鍼治療に伴い、向上する症例が多いことも分かりました。眼科医療のCNVへの課題として
健側への発症防止がありますが、鍼治療による健側視力の向上は、健側への発症を未然に防ぐことに繋がり、最新の検査機器で
ある光干渉断層計(OCT)での健側の画像でも、鍼治療による網膜の健全化は明らかになりました。こうした最新の検査機器を
駆使して、鍼治療の有効性を確認していくことも、鍼治療が眼科医療において、選択肢の一つになるためには大切と思われます。

最近、主流になりつつある抗VEGF(アバスチン、ルセンティス、マクジェンなど)療法について、眼内注射直後の回復は、一般に鍼
治療を上回ることが分かっています。しかし概ね2ヶ月程度までに抗VEGF療法は効力が薄れ、再びCNVが活動したり、CNVが瘢痕
化したりするなどして、視力は低下してくることが少なくありません。まだ症例数は少ないものの、抗VEGF療法と鍼治療の併用、
あるいは抗VEGF療法後の鍼治療は、視力を含めた視機能を大きく向上させ、良好な状態を維持していける可能性があります。

鍼治療を考慮する場合の当院の見解ですが、CNVの発症直後であり、矯正視力が0.2未満へと大きく低下した場合には、抗VEGF
療法を行った上で、鍼治療を併用することをお勧めします。0.2以上の矯正視力があり、CNVが比較的小型の場合には、鍼治療は
単独でも、良好な結果が期待できると思います。CNVが大型の場合では、抗VEGF療法は難しくなり、鍼治療では回復に時間を
要する傾向があります。また抗VEGF療法を含めた複数回の外科的治療は、様々な観点から可能な限り避けるべきと考えます。
なお当院は眼科領域を専門とする針灸院ですが、私は医師ではありませんので診断はできません。実際の眼科での治療は
医師の診断に基づき、患者さん自身で治療法を決めていただくことになります。

第3部では、鍼治療の開始から1年程度、もしくはそれ以上の長期間について、鍼治療が長期間の視力等の維持に、効果を発揮
できるかどうか等、またCNVの視力以外での問題点である変視(歪みや暗点)について、統計や典型例を紹介していきます。

また統計報告と共に、全国の提携治療院での連携治療や日常生活上の注意点、栄養補助食品などについても触れていきます。

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本ページの内容は現代の眼科医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
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