これからの例会 戦禍に生きた演劇人たち |
原作:堀川恵子 脚本:シライケイタ 演出:松本裕子 劇団東演公演 出演:豊泉由樹緒、能登 剛、南保大樹、星野真広、他 |
2025年4月 福島テルサ |
1945年8月下旬、演出家・八田元夫は世田谷区・赤堤の劇作家・三好十郎宅に広島からやっとの思いでたどり着いた。大事に抱えてきた風呂敷包みの中には、俳優・丸山定夫の遺骨の入った骨壺であった。 あの惨劇からまだ三週間もたっていない。二人は稀代の名優を偲び、まずい酒を酌み交わす。 と 突如男の声が割って入ってくると、ときは前年(1944年)の秋にさかのぼる。丸山定夫は、二年前に創った劇団「苦楽座」演出家として力を貸してくれと八田に頼み込んでいる。しかしやりたくても八田は当局により、演出家登録を抹消されているのだ。治安維持法違反で執行猶予中だ。どうする、演目は三好十郎の「獅子」… 大政翼賛会・移動劇団連盟に加わらなくては芝居が上演できない状況だ。 丸山は決断する。苦楽座あらため.「さくら隊」としてでも、どうしも芝居を続けると…。 果たして丸山、八田、三好の三人が時代と闘いながら見た夢とは…。 |
解説 ノンフィクション作家、堀川恵子さんの「戦禍に生きた演劇人たち」(講談社)が原作。自由を奪われ活動も制限された戦争一色の時代にあっても、それでも芝居を続けたいと、検束や.尾行、挙句は解散などの困難を超えて、夢を貫いた新劇人たちの姿を、史実に基づいて描いた今に通ずる生きたドラマです。 生きること、友を想うこと、夢を持つこと、…ぜひ例会にしていただきたい舞台です。 『人間一生一大事のときは、自分にホントに正直に、したいと想うことを思い切ってやらなならんぞ!それが人間の道じゃぞ!』と、あの時代に三好十郎の戯曲は舞台から訴えたのです。その舞台をやり続けた「苦楽座」改め「桜.隊」の俳優たちは、やがて広島で8月6日を迎えるのです。彼らは自分たちの意思で芝居をやり切ったのです。そして、今を生きる私達にどんな夢を託していったのだろうか。 2025年は戦後80年の節目です。彼らが残していった決して諦めなかった夢、今私達はどんな夢を見、何をしなければならないのだろう。 |