誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの
あらすじ】
 明治38(1905)年、日本がようやく近代的な資本主義国になり始めた頃、天涯孤独の境涯にあった
(布引けい)は、不思議な縁から拾われて堤家の人になった。清国との貿易で一家をなした堤家は、その当主もすでになく、息子たちはまだ若く、妻のしずが弟・章介とともに困難な時代を生きていた。
やがて(けい)は、その闊達な気性を見込まれ、長男・伸太郎の妻となる。次男・栄二に寄せた思幕は断ち切られ、(けい)は正真正銘、堤家の人になったのだ、.そして、しずに代わって家の柱として、担いきれぬほどの重みに耐えながら、その「女の一生」を生きていくのであった……。
時は流れて昭和20年(1945)年…。
二つの大戦を経る激動の時代を生きて、今、焼け跡の廃墟に佇むけいの姿は、過ぎ去った50余年の月日の、激しさと華やかさを秘めて、哀しいーー
【解説】
劇団創立から80年の中、森本薫の戯曲『女の一生』は幾度も上演されてきました。そのたびに少しずつ姿かたちを変え、時代とともにに歩んできた作品といえるでしょう。初演されたのは太平洋戦争の末期の1945年4月。この僅か一か月前の3月には東京大空襲によって10万人以上が犠牲になりました。やがて敗戦焼け跡からの再生、高度経済成長、バブル、バブル崩壊から冷え込む経済、現在の混沌とした社会情勢。これらのすべての事象には日本という国家を背景にした、人間一人一人の物語が紡がれているのであります。今回の鵜山演出では、登場人物それぞれの生きざまがクッキリと描かれ、布引けい、栄二、伸太郎、章介、しずといった人々が時代に何を感じ、どのように生きたのかが、これまでのどのバージョンよりも浮き上がり、物語としての『女の一生』の世界を隅々まで堪能できる仕上がりになっています。山本郁子演ずる布引けいは杉村、平とも異なり、非常にナチュラルな奥行きを生み出します。このバージョンに物語性を強く感じ、あらためて『女の一生』ってこうゆう作品だっただという感想を多くの方がもたれるのは、彼女の功績が多忌野かもしれません。この作品は、人間それぞれの一生であると同時に、日本の一生でもあります。2011年の震災から立ち上がろうとしている東北にも重なるものがあります。まさに今、東北の皆様に見て頂きたい作品です。
                                 東北演鑑連2020ねん例会企画作品集より抜粋
日本演劇史に残る文学座の財産演目

作       森本薫

補訂・演出  成井一郎による

演出補    鵜山仁

出演     山本郁子 赤司まりこ 石川 武 大滝 寛 上川路啓志 他

第422回例会 文学座公演

女の一生

日時未定