ナミアゲハ

Papilio xuthus xuthus



概要

食餌 主食:ミカン科各種サンショウイヌザンショウカラスザンショウなどの野生種、ウンシュウミカンナツミカンキンカンユズなどのすべての栽培種。
代替:他にはフユザンショウ、テリハザンショウなどのサンショウ亜科、カラタチなどのミカン亜科の種であればほとんどすべて利用可能。 コクサギミヤマシキミ、ハマセンダン、キハダはあまり好まないが、与えれば食べる。
増殖:サンショウ実生取り木(高取)が可能。挿し木についてはまだ確かめていない。実生は10月頃に十分に黒色に熟し、果皮から露出した枝上のものを採取する。過湿と乾燥に注意して冷蔵庫などの冷暗所で保管し、翌春4月頃(花期)に蒔く。 暖かい室内や温室内であれば、採取後すぐに播種し、日向の暖かい場所に置けば1週間程度で発芽する。取り木は一般的な落葉樹の方法に準じるが 、あまり成績は良くないようだ。増殖ではないが、サンショウ類は若木を山取りして地植えや鉢植えにするほうが楽。頂芽を摘んだり枝を切り詰めると、容易に多くの脇芽を生じるので効率的に葉を増やすことができる。ミカン類ではホームセンターや植木店などで苗木を購入する。発芽後3年程度経過したものが使用しやすい。
採集 ステージ:夏型は幼虫。春型は幼虫(休眠)。卵は庭先のミカン類の若葉や、日当たりの良い場所に生えたサンショウ類の幼木や若木の新芽のほか、成葉の葉裏に産付されるので、見つけるのは簡単。 幼虫は全期間を通じて食樹の葉上や中肋上に静止する性質を持つので採集は難しくない。休眠蛹は食樹を離れる傾向が強く、ほとんどが褐色型なので探すのは結構難しい。
適期:卵、幼虫共に5月〜11月頃まで断続的。9月以降に見つかるものは蛹で休眠することが多い。休眠蛹は10月〜翌3月上旬頃。
難度 幼虫:比較的容易。食樹さえ切らさなければ、ほとんど手がかからないくらいカンタンだが、過湿に弱いので密閉容器での飼育には注意が必要。
成虫:可能。飛翔力と移動性が強く、樹液などには集まらない種だが、吸蜜植物(赤色系の大形の花)と産卵植物を用意し、過湿と高温に気をつければ不可能ではない。 吸蜜植物はアザミ類、ツツジ類、タチアオイ、ムクゲ、フヨウなどが水揚げも良く、利用しやすい。
採卵:♀は羽化直後には交尾が可能なので、比較的容易といわれる。その際には羽化から2日〜3日後の元気な♂を使用すると成績が良いらしい。
飼育法  夏季に密閉容器などで飼育した場合、過湿と高温によりウィルス病で融けて死ぬことがあるのでネットがけのうえ、開放飼育をしたほうが良い。特に終齢幼虫は蛹化などの際にかなり長距離を歩行するので、ネットがけ が必須。 ミカン類は水揚げが比較的良いので、密閉容器より花瓶等に挿して開放飼育が可能。サンショウ類についても同様だが、カラスザンショウはあまり水揚げが良くないので、山取りした苗を鉢植えや地植えにする必要がある。ただし落葉期に植え替えないと定着しないことが多い。 若齢時の日照時間が12時間45分を切ると休眠蛹になる傾向が強いので、人工的に春型を作ることができる。
備考  卵は産付直後のものを除き、タマゴヤドリバエの寄生リスクがある。また黒色に変色したものはウィルスに侵されていることが多い。5月〜7月に採集した幼虫には、蛹から脱出するアゲハヒメバチ類が寄生していることがあるが、幼虫の外見では判別できない。蛹化後、体の一部が黄色くなったりして変色したものは、ほぼ間違いなく寄生されている。

記録

採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2005年 第3化(夏型)
1 E 2005/6/26 千葉市緑区 6/21 6/28 7/18 7/26 7/27 8/5 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
2 E 2005/6/26 千葉市緑区 6/23 6/29 7/19 7/26 7/27 8/5 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
3 E 2005/6/26 千葉市緑区 6/23 6/29 7/19 7/26 7/27 8/5 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
4 E 2005/6/26 千葉市緑区 6/23 6/29 7/19 7/26 7/27 8/5 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
5 E 2005/7/3 千葉市緑区 6/25 7/2 7/20 7/27 7/28 8/6 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
6 E 2005/7/3 千葉市緑区 6/25 7/2 7/20 7/27 7/28 8/6 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
7 E 2005/7/3 千葉市緑区 6/25 7/2 7/22 7/31 8/1 8/10 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
8 E 2005/7/3 千葉市緑区 6/25 7/2 7/24 8/1 8/2 8/11 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
9 E 2005/7/2 千葉市緑区 6/27 7/3 7/26 8/4 8/5 8/17 緑色 イヌザンショウ イヌザンショウ  
10 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 7/30 8/7 8/8 8/17 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
11 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 7/30 8/7 8/8 8/17 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
12 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 7/30 8/10 8/11 8/20 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
13 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 7/31 8/10 8/11 8/21 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
14 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 7/3 8/12 8/13 8/21 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
15 E 2005/7/11 千葉市緑区 7/9 7/15 8/7 8/14 8/15 8/21 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
16 E 2005/7/18 千葉市緑区 7/17 7/22 8/4 8/10 8/11 8/22 緑色 イヌザンショウ イヌザンショウ  
17 E 2005/7/18 千葉市緑区 7/17 7/22 8/4 8/10 8/11 8/22 緑色 イヌザンショウ イヌザンショウ  
18 E 2005/7/18 千葉市緑区 7/17 7/22 8/6 8/12 8/13 8/24 緑色 イヌザンショウ イヌザンショウ  
19 E 2005/7/23 千葉市緑区 7/20 7/25 8/7 8/14 8/14 8/26 緑色 イヌザンショウ イヌザンショウ  
※採集総数48個体。 死亡個体26(うち1齢:4、2齢:5、3齢:7、4齢:4、終齢:6)、すべて感染症。羽化個体22。
2005年 第2化(夏型)
1 E 2005/5/2 千葉市緑区 5/1 5/8 8/25 6/1 6/2 6/13 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
2 E 2005/5/2 千葉市緑区 5/1 5/9 5/25 6/1 6/2 6/13 緑色 ユズ ユズ、ナツミカン  
3 E 2005/5/4 千葉市緑区 5/3 5/9 5/27 6/2 6/3 6/14 緑色 ナツミカン ユズ、ナツミカン  
4 E 2005/5/4 千葉市緑区 5/3 5/10 5/27 6/2 6/3 6/15 緑色 ナツミカン ユズ、ナツミカン  
5 E 2005/5/4 千葉市緑区 5/3 5/10 5/28 6/4 6/5 6/16 緑色 ナツミカン ユズ、ナツミカン  
6 E 2005/5/21 千葉市緑区 5/19 5/25 6/13 6/19 6/20 6/28 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
7 E 2005/5/21 千葉市緑区 5/19 5/25 6/14 6/22 6/23 7/2 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
8 E 2005/5/21 千葉市緑区 5/19 5/26 6/14 6/23 6/24 7/8 緑色 レモン ユズ、ナツミカン  
※採集総数8個体。すべて羽化。
2005年 第1化(春型)
1 E 2004/9/3 千葉市緑区 8/27 9/2 9/19 9/27 9/28 4/7 褐色 ユズ ユズ  
2 E 2004/9/3 千葉市緑区 8/30 9/5 9/22 9/28 9/30 2/19 緑色 キンカン ユズ  
3 E 2004/9/3 千葉市緑区 8/30 9/5 9/22 10/10 10/11 3/13 緑色 キンカン ユズ  
4 2 2004/9/17 千葉市緑区 ? ? 9/27 10/6 10/7 4/5 緑色 キンカン ユズ  
5 1 2004/9/17 千葉市緑区 ? ? 10/5 10/14 10/15 4/28 緑色 キンカン ユズ  
※採集総数14個体。 死亡個体9(うち3齢(2)、4齢(3)、終齢(2)、蛹(2))。死因はすべて感染症。羽化個体5。

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