分布 |
国内: |
周辺島嶼を含め、ほぼ日本全土。平地~山地まで汎く分布するが、平地~低山地が中心となる。 |
県内: |
都市部を含め全域に棲息するが、深山にはむしろ少なく、人里に近い地域に多い。 |
国外: |
朝鮮半島、沿海州、中国大陸~インドシナ北西部、台湾、フィリピンのルソン島北部に分布する。ルソン島北部産はベンゲットアゲハ(ssp. benguetana Joicey et Talbot)と呼ばれる別亜種。それ以外の地域のものが原名亜種とされる。標式産地は「広東」。 |
変異 |
形態: |
国内での地理的変異は知られていない。 |
季節: |
明瞭。斑紋が相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。 |
性差: |
春型はほぼ同型、夏型は異型。春型では不明瞭だが、♀は♂より大型で、♂は翅表の黒色部が発達し、前翅表に黒色の性標をもつ。 |
生態 |
環境: |
日当たりのよい林縁的環境を好み、人家周辺にも多く生息するが、草原にも進出することがある。 |
発生: |
多化性。通常年4回~5回 。県内で3月下旬、暖地では3月中旬、寒冷地でも5月中旬には姿を見せる。 |
越冬: |
蛹。通常は食樹の幹などで見つかるが、食樹を離れて直射日光や雨の当たらないさまざまなものに付着することも多い。なお、越冬蛹は大多数が褐色型で、野外では緑色型はほとんど見当たらない。 |
行動: |
昼行性。飛翔は敏速。♂は林縁などに明瞭な蝶道を形成し、比較的低い位置を飛ぶことが多いが、樹冠などの高空を滑空することもある。 求愛・交尾は午前中~正午前後が中心で、産卵は午後に行われることが多い。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉。ミカン科のサンショウ、カラスザンショウ、イヌザンショウ、キハダ、ハマセンダン、 フユザンショウが主。他に栽培ミカン類やカラタチでも発生する。稀にキバナコスモスやコスモス、シャクヤクなどでも卵や幼虫が見つかることがある。サンショウ、イヌザンショウ、カラスザンショウの混生する
袖ヶ浦市内の同一の丘陵斜面での観察では、いずれからも卵が見つかっており、特に顕著な嗜好性の差は見られなかったが、日当たりのよいカラスザンショウの幼木でやや多くの卵が見つかっている。 |
成虫: |
食植性/花蜜。訪花性は強く、アブラナ、アザミ類、ツツジ類、ユリ類、ヤブガラシ、ムクゲ、ネムノキ、クサギ などさまざまな花で吸蜜するが、紫色もしくは赤色系の木本の花を好む傾向がある。また夏型は特にヤブガラシやクサギを好む。夏型の♂は湿地で吸水することも多いが、黒色系のアゲハとは異なり集団を形成することは稀。 |
類似種: |
キアゲハと似るが、翅の地色と翅表基部付近の斑紋が相違する。 |
保 護: |
指定されていない。 |
その他: |
飼育は容易。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類やスズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類。成虫は大型ヤンマ類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類。造網性クモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生する、ヒメバチ科ヒメバチ亜科のムラサキアゲハヒメバチ(Trogus lapidator lapidator (Fabricius, 1787))、ヒメキアシフシオナガヒメバチ、アゲハヒメバチ(Holcojoppa mactator (Tosquinet, 1889))、クロハラヒメバチ(Quandrus pepsoides (Smith, 1852))、ヒラタヒメバチ亜科のヒメキアシヒラタヒメバチ(Pimpla disparis Viereck, 1911)、マイマイヒラタヒメバチ(Pimpla luctuosa Smith, 1874)、クロフシヒラタヒメバチ(Pimpla pluto Ashmead, 1906)、前蛹期に産卵するアオムシコバチなどのコバチ類が知られ、いずれも蛹から脱出する。他にはヤドリコバチ類。終齢幼虫あるいは蛹から脱出するヤドリバエ科のブランコヤドリバエ、マダラヤドリバエ、カイコノウジバエ(Blepharipa sericariae (Rondani))など。 |