千秋針灸院・眼科領域の測定・評価法      13.2.22  1.003 本文へジャンプ

・千秋針灸院の基本的な治療は、患者さんが自覚できる改善だけでなく、眼科医学に基づく客観的な状態や針治療の効果を継続的に測定・評価しながら行っていきます。当院では眼底検査などに代表される眼科での客観的な評価だけでなく、「実際の見え方の質」が大切であると考えています。眼の疾患や症状毎に様々な測定・評価法を組み合わせ、患者さんの実際の見え方に少しでも近づく工夫をして、本物の視機能の回復を目標に針治療を行っていきます。

・2011年秋に完成した新しい千秋針灸院では、治療院自体に眼科領域の正確な測定・評価を行うための専用設計が施されており、針灸治療院としては高いレベルの測定・評価が可能な環境を用意しています。


◆視力測定


NIDEK社システムチャートSC-2000
 国際標準ランドルト氏環で5mの距離から測定

コントラスト反転をはじめ、様々な視力測定に必要な設定が可能な液晶視力表です。

・当院の視力測定はNIDEK社のシステムチャートSC-2000を、5メートルの距離から運用するもので、眼科領域では最新タイプの視力表であり、一般の眼科では手動弁(カードなど)で測定する場合も多い0.1未満の視力まで詳細・正確に測定可能です。また液晶チャートの特性を生かし、網膜色素変性症の患者さん向けに白黒を反転させ、測定表として使う事ができます。合併症として比較的多い白内障についてもコントラスト測定が可能なため、白内障の存在を推測する事が可能です。(本機は公式に0.03より遠見視力検査が可能な唯一の測定機器であり、弱視や色素変性の患者さん向けの測定機能を持ちます。

・視力測定は治療開始当初は毎回行いますが、数ヶ月後には数回に1度程度です。視力は測定時の体調で変動がありますが、体調による変動も含めた患者さんの日常生活での実視力を把握するよう努めています。当院での測定は眼の状況の把握だけでなく、治療方法や方針を転換する時期を探るためにも重要です。当院で必要な測定を拒否される場合、治療をお断りする場合があります。(視力測定が不可能な程に進行している場合は、この限りではありません)

◆近距離視力測定



・通常5mなどの距離で行う視力測定は遠見視力を測定していますが、日常生活で不便に感じることの多い近距離(30cm)の近見視力を測定することができます。老眼や屈折矯正(メガネ・コンタクト)が間違っていたり、遠見視力に問題が無いのに近くが見え辛いなどの場合に、近見視力を測定すると解決の糸口が分かることが有ります。老視(老眼)の進行の把握や評価にも使用します。


 WOC-i PRO(ワック)

・小児期の視力は、眼の疲労などによる調節の影響が大きくなります。多くの眼科医療機関に導入されているワックは、雲霧法により毛様体筋の緊張を解き、正確な視力測定や評価の安定化に役立ちます。また、近視の進行を抑止し、将来の強度近視への予防にも優れた効果が期待できるので、当院には欠かせない器械です。また毛様体筋の屈伸運動により、老視(老眼)の進行予防としても期待できます。


◆視野測定および変視検出


鈴木式アイチェックチャート 緑内障、網膜色素変性等の視野、感度の測定用指標

網膜黄斑変性等の変視(中心暗点・歪み)状況の測定用指標(下)

・当院の視野測定は平面視野計法を基に、鈴木式アイチェックチャートを使用した独自方式により測定します。鈴木式アイチェックチャートは全国の眼科や脳外科で各種スクリーニングに役立てられている検査方法です。主に視力の高い中心視野を調べることができ、数値化して記録に残し変化を確かめることができます。患者さん自身に見える範囲を申告していただき記録するため、実際の視野感覚にあった測定法といえます。適切な照明が大切になる測定です。

・当院の鈴木式アイチャートによる測定は、眼科医院での自動視野計(ハンフリー視野計)とほぼ同じく、中心から約20度以内の測定範囲を持ち、測定精度の誤差は概ね1〜2度以内(当院測定と自動視野計で比較)であり、一般的な量的視野検査(ゴールドマン視野計等)と比較して、中心視野に限れば詳細な測定が可能です。視野の状態が患者さんにダイレクトに分かる判定法のため、視野の変化をご自身で自覚することができます。

・また鈴木式アイチャートの別表では歪みや暗点などの自覚症状に対して、その大きさや位置などを特定することができます。視界内の変視(歪みや暗点)が問題となる黄斑変性症などの状況把握に役立てています。
・視野や変視の検出に関しては数週間〜数ヶ月に一度測定していきます。精密な視野を確認するために、眼科での視野検査の結果も参考にしながら、総合的な効果判定を行っていきます。


◆M-CHARTS 変視症の定量測定チャート(歪みの強さ)

 M-CHARTS

・M-CHARTSは近畿大学医学部眼科学教室が開発した、歪みを中心とした変視症の状態を数値化できる測定チャートです。変視症(歪み)が変化していく場合に、チャートの数値にも変化が現れ、再現性も優れることが当院でも確認できています。鍼治療により変視症(歪み)が改善している場合には、確実に数値として変化が現れてきています。

◆ヘルテル氏眼球突出計 眼球突出の正確な測定・評価

 ヘルテル氏眼球突出計

・甲状腺眼症(バセドウ眼症)に合併する眼球突出を測定します。眼科と同一の基準で測定・評価が可能ですので、眼球突出の客観的な状況を把握して、鍼治療を行うことができます。両眼の突出の左右差や、2ミリ以上の変化を評価することで、眼科医学として確実な改善を目指しています。

◆マンセルD-15 国際標準の色覚測定パネル 

 マンセルD-15パネル

世界標準として使用されている色覚測定用パネルで、弱視、色弱、網膜色素変性等の色覚の状況を測定します。網膜色素変性等では疾患の改善と共に、色覚も改善する傾向があります。色覚の評価には周辺光の色温度や高い演色性能が求められますが、千秋針灸院では美術・博物館用の高演色蛍光灯と周辺光が極力少なくなるような眼科向けの専用設計を行い、正確な色覚評価を可能にしています。

・当院では様々な眼科医学にもとづいた医学的根拠のある評価法により、黄斑変性症の特徴である視力低下や変視、緑内障や色素変性症への網膜感度の低下や視野狭窄に対し、鍼治療の確実な効果や適応の可能性を捉える作業を続けています。当院との提携治療院では視力表や鈴木式アイチャートを導入している治療院もあり、連携治療として測定したデータを生かすことが可能です。(全ての提携治療院が導入している訳ではありません。)

・一般に例えば視力は1.0などと数字で表しますが、眼の疾患によっては視野の中心に歪みや暗点、また視野周辺部での感度低下や狭窄、視界内での飛蚊、眼の痛みや違和感等が生じ、たとえ視力は良好でも日常生活上で困難を伴う場合があります。また眼科検査などでは大きな異常は見られなくても、同様な見辛さを感じる症例は少なくありません。

・患者さんの実際の見え方を完全に私たち治療者が把握することは難しいのですが、千秋針灸院の目指す治療は単なる数字上の視力改善だけではなく、患者さんの本物の視機能の向上・維持を可能にする針治療や測定・評価法、医学情報の提供、日常生活上での様々なサポートを行っていけることを目標にしています。


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   ・本ページの内容は眼科医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
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