若年性黄斑変性(近視性黄斑変性など)   2.007   21.9.24 本文へジャンプ

滲出性中心性網脈絡膜症、特発性黄斑下脈絡膜新生血管、強度近視性脈絡膜新生血管、新生血管黄斑症、近視性黄斑変性、点状脈絡膜内層症(PIC)等を含む脈絡膜新生血管を伴う疾患

○眼科での治療法の概要と当院の針治療
○長期的な視機能維持と鍼治療
○患者さんからよくある質問 
○院長からひとこと
○患者さんに気をつけていただくこと(若年性黄斑変性サポート情報)  
○関連リンク(症例報告)・参考文献 

眼科での治療法の概要と当院の針治療


特発性脈絡膜新生血管(CNV)
・50歳未満で網膜黄斑部に発症する脈絡膜新生血管で、発症の原因が特定できない場合の診断名です。女性に比較的多く片眼性ですが、両眼に発症する場合もあります。新生血管は小型で網膜下出血は少なく、漿液性網膜剥離(網膜浮腫)も小さい傾向です。無治療の場合には再発を繰り返して瘢痕が拡大し悪化します。一般に50歳以上で発症した場合には、加齢黄斑変性の診断名になる疾患です。

近視性脈絡膜新生血管(mCNV)
・強度近視眼(-6D以上)に発症する脈絡膜新生血管で、強度近視者の5~10%に発症するとされています。強度近視眼では眼軸長の延長に伴い網膜が引き延ばされるため、mCNV以外にも特徴的な網脈絡膜萎縮、黄斑出血、裂孔原性網膜剥離、黄斑円孔、緑内障、白内障、硝子体混濁等が生じやすくなります。無治療の場合の視力予後は眼科での経過観察から、10年後には96.3%でmCNV発症後の脈絡膜萎縮により、矯正視力は0.1以下まで低下するとされます。

・近年では新生血管消退を目的に抗VEGF製剤(ルセンティス、アイリーア等)が用いられますが、数年程度までの経過は比較的良好なものの、5年以上の長期経過例では評価が定まっていません。また光線力学療法(PDT)については最新の研究により黄斑萎縮への移行を加速させ視力低下を生じ易いことが分かっています。黄斑萎縮に進行した場合、現在の眼科医療に治療手段はなく、矯正視力0.1以下が永続することになります。

・当院の針治療は特に眼底を含めた局所(目周囲)の血流を改善することにより網膜虚血を改善し、眼底部位の炎症や出血を効果的に吸収させる治療法で、眼底周囲の血流は改善され良好な状態が維持されるため、悪化や再発の危険性を大きく減らすことができます。針治療の継続症例では再発や視力低下は5年以上の経過例でも非常に少なく、専門医療機関で抗VEGF製剤(ルセンティス等)治療等を薦められていた患者さんの多くは視力が上昇、状態が好転した結果、「当面の治療は必要無し」と診断されています。OCT(光干渉断層計)や眼底写真上でも、針治療の前後で明瞭な変化もあることが確認できています

・適切な針治療による視力改善は他の現代医学的な治療法にも劣らず(当院での測定や、眼科検査結果)、薬物や手術法のような副作用や後遺症も無く、眼底の健康状態が改善される優れた特徴があります。当院では針治療における様々な症例が蓄積され、治療のプログラムが完成していますので、状況により抗VEGF硝子体内注射との併用も可能です。また瘢痕化し視力低下や変視症が顕著な症例等でも、早期ほど鍼治療により好転する可能性があります。過去に抗VEGF硝子体内注射で効果が乏しかったり悪化した場合、今後の硝子体内注射を避けたい場合にも適切な鍼治療を検討されることをお勧めします。

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長期的な視機能維持と鍼治療


・若年性の黄斑変性は特発性かつ軽症例では、抗VEGF硝子体内注射等により治癒するケースも多いです。しかし重症例や強度近視が原因となる場合には、視力低下や変視(歪みや暗点)を伴いながら黄斑萎縮へと進行する症例が多く、発症当初は抗VEGF硝子体内注射等も効果を上げますが、数年以上が経過して黄斑萎縮を生じると眼科では視機能を回復させる治療はありません。若年性黄斑変性(特に強度近視由来)の長期的な治療は黄斑萎縮を防ぐ視点が必要になりますが、鍼治療は網膜等を含む眼底の血流を改善することで黄斑萎縮への進行を抑えることに繋がり、視機能を維持しながら残された健側への発症も防ぎます。

①患者さん自身で取り組んでいただきたいこととして、以下がポイントになります。
【最重要】・・・喫煙は止める、直射日光下では帽子と紫外線カット眼鏡等の着用
【重要】・・・毎日の飲酒を控える、白内障手術後は紫外線対策を徹底する、ルテインの摂取
【日常】・・・睡眠、適度な運動と食事、仕事などによる過労を避ける


②鍼治療による改善や維持・進行抑制の程度
・急速に悪化しつつある状況でなければ、鍼治療単独で視力や変視(歪み・暗点)は改善へ向かう可能性が高いです。現在は当面抗VEGF硝子体内注射による治療で悪化を止めてから、鍼治療で本質的な改善と繰り返される硝子体内注射を極力減らすことを希望される方が多いです。また鍼治療を長期間継続することで再発や健側への発症を防ぎ、長期的な視機能維持も容易なため、5~10年以上経過して生じる黄斑萎縮への進行による視機能低下を抑制してきた実績があります。

③必要な鍼治療頻度の目安 (患者さんの目の状況に合わせて治療間隔は徐々に空いていきます)
【治療開始当初】
・発症後1年以内で視力低下等が著明な場合や、抗VEGF硝子体内注射を続けている場合は週2回
・発症から長期間が経過していたり視力低下等が軽度な場合は週1回
【長期的に必要な治療回数】
・若年性黄斑変性単独では月1回程度、強度近視性など悪化リスクが高い場合は月2回程度
・初回発症かつ軽症例では完治することで終了可能


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患者さんからよくある質問


Q 針治療により、脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性症)が治るのですか?

A 初回発症など、病歴が短く症状が軽い程、完全に治癒する可能性が高くなります。

・黄斑変性には様々な病態がありますが、脈絡膜新生血管(特発性または近視性)については、視力の向上や変視症の改善等で、手術法を中心とした現代医学での治療法に比較しても良好な結果が得られています。特に軽症例では視力が健側並に向上し、歪み等の変視が消失する等、治癒として差し支えない程の著効を示す症例に度々出会います。発症当初に数回までの抗VEGF製剤(アイリーア、ルセンティス等)との併用については問題はありません。(抗VEGF硝子体内注射の直後効果は、初期では針治療を上回りますので、重症例など状況により併用は効果的とも考えられます)

・強度近視(病的近視)に由来する黄斑変性では網膜自体の脆弱性から近視の程度により、一定期間治療した後でも状態が不安定になる傾向が一部の方で見られます。また過去にPDT(光線力学療法)、レーザー(光凝固術)、抗VEGF硝子体内注射(アイリーア、ルセンティスなど)やステロイド注射(テノン嚢下注射、硝子体内注射)等を多数繰り返した症例では、黄斑萎縮や網膜が様々な後遺症などの障害を受けるため、治療効果として一定期間治療した後でも視力の状態が安定し辛かったり、やや劣る傾向が見られています。

  
・鍼治療の効果は黄斑変性の状況や程度により様々ですが、少なくとも現代医学でのアプローチのみに比べ、視力の向上や変視症の改善などの点で好結果が得られます。また10年以上鍼治療を続けられた症例から長期的に多くの場合で悪化を回避し、健側への発症も防ぐと考えられます。現代医学での治療で完全な治癒が見込めないことも多い疾患ですが、鍼治療を加えることで病状は改善、安定し、長期に渡り黄斑萎縮への移行や失明の危険から眼を守ることができる可能性が高くなります。千秋針灸院では統計症例報告として、継続的に黄斑変性の報告を行っています。今後も黄斑変性への鍼治療を症例の積み重ねから明らかにしていきますので、ご期待下さい。

Q 手術療法(アイリーア、ルセンティス注射等)を勧められましたが、どうしたら良いでしょう?

A 患者さん自身の眼の状況を正確に掴み、当に必要かどうか慎重に判断する必要があります。

・眼科医学は検査機器が急速に進歩し、最新の知見により常識も変化している分野です。例えば10年以上前に画期的とされた光線力学療法(PDT)は、近視性黄斑変性について黄斑萎縮への移行を早め、重篤な視力低下を招くとして推奨されなくなっています。現在の最新治療も長期的な経過観察により、将来は真逆の評価になることもありますので、急激に視力が下がるなど緊急を要する場合でない限りは慎重に行うのが賢明です。医師に手術療法を勧められた時は、可能な限り別の医療機関でも意見を聞いた方が良いと思います。但し同一地域や出身医科大学の系列が関係して、折角のセカンドオピニオンが意味をなさない場合や、眼科医の立場上、当たり障りのない説明に終始されてしまうこともあります。

・現在なら抗VEGF製剤(ルセンティスやアイリーア等)の硝子体内注射は、活動期の新生血管の消退に関して最も効果があります。しかし硝子体内注射後に更に視力が落ちてしまった症例もあり、副作用も少なからず生じています。また硝子体内注射を行ってもほとんど改善しない場合もあり、こうした場合には漫然と注射を繰り返すことで、副作用や合併症のリスクを高めてしまいます。

・注意すべき副作用として、網膜色素上皮裂孔のリスクが問題視されています。光線力学療法(PDT)や坑VEGF抗体硝子体内注射(アバスチン、ルセンティス、アイリーアなど)を行った後に、新生血管の消退や萎縮した網膜色素上皮などから牽引が起こり、網膜色素上皮が裂けたり小型の傷ができるもので、黄斑部を含めて裂孔が生じると大幅な視力低下に繋がります。特にアバスチンでの発生率は、ルセンティス等の4倍と報告されています。近視性黄斑変性の患者さんの網膜は元々脆弱であり、網膜色素上皮剝離(網膜浮腫)などを伴うことが多く、網膜が薬剤による急速な変化に耐えられないことを意味しています。たとえ時間が掛かっても適切な鍼治療などにより、網膜を健全にする方向が長期的な観点からも無理がありません。他にも繰り返し投与では緑内障や脳出血などのリスクがあり、当院の患者さんでも発症して来院された方があります。

・非常に活発な活動期で、短期間に大幅な視力低下を伴う緊急の場合を除き、数ヶ月の針治療を行えば、良好な状態に変化する可能性が十分にありますので、早めに針治療を試してみることをお勧めします。多くの方で視力の向上や眼底病変の改善等により、ほとんどの場合に針治療開始後の硝子体内注射は不要となっている事実があります。黄斑変性をはじめ、多くの病気で結局はご自身の日常生活にも問題があり、自分自身の治癒力を高めていかなければ再発や悪化を繰り返します。この観点からも硝子体内注射などの手術療法は必要最低限にすべきです。

Q 針灸院で視力や変視症の測定で効果がある場合に、病院の検査でも同じ結果が得られますか? 

A 視力は眼科と同等(遠見視力)の測定法です。病院等での診断も同様に変化の結果が得られます。

・当院の視力測定は公式に0.03から測定可能ですので、通常の医療機関では手動弁(カード等)となる0.1未満の視力でも正確に測定可能です。手動弁(カード等)や近距離(スペースセービングチャート)での視力検査に比較して、液晶視力表を使用する当院での測定結果が正確な場合があります。ただしお使いの眼鏡やコンタクトレンズによる測定ですので、眼科で行われるトライアルレンズによる完全な矯正視力検査ではありません。

・当院の変視症測定については鈴木式アイチェックチャート、M-CHARTS共に、眼科医学に基づいた根拠のある評価法として認知されています。しかし現在の眼科は患者さんが自覚できる視力や変視症等の変化よりも、眼底の状態を画像として捉える他覚検査に重点が置かれており、患者さんの自覚による評価法は重視されない傾向です。このため当院での測定結果は眼科医学として通用しますが、評価いただけないケースがあります。

・当院は患者さんに自覚できる視力の向上や変視症の改善も重視すべきと考えており、一般の眼科医療とは別の角度から脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)に対しての鍼治療を行ってきました。また鍼治療の効果を客観的に判定するために各種の評価法を取り入れ、脈絡膜新生血管への確実な治療を目標としています。

Q 脈絡膜新生血管への鍼治療は、どこの鍼灸院で受けても大丈夫ですか?

A 鍼灸院の治療水準は少なからず違いが有りますので、適切に対応できる治療院を選んで下さい。

・これまで眼科領域を専門とする治療院は限られ、遠方の患者さんは実質的に治療の継続が困難でした。そこで当院では治療法や測定方法を公開して、全国で実力があり眼科領域の鍼治療に協力していただける治療院さんと眼科鍼灸ネットワークを作り、遠方の患者さんへ距離の壁を越えた可能な限りの治療ができる体制を目指しています。提携先治療院での治療方法は当院と同一ではありませんが、当院の治療法や治療方針を参考にしていただき、医学的な根拠に基づいた測定により鍼治療での「結果」が得られるよう努力をしています。

・当院では視力や変視症に対しての医学的な根拠に基づいた評価法が重要と考え、積極的に導入してきました。しかし一般の治療院では通常、眼科医学に基づく適切な評価法は行われておらず、鍼治療自体に根拠が乏しいと考えられます。また眼科医療機関では通常眼底検査(造影・OCT等)が重視され、眼科医療の基礎である視力や自覚検査は、あまり重視しない傾向があります。患者さんにとっては自覚検査も他覚検査(眼底等)も共に大切ですので、眼科鍼灸ネットワークでの治療では、当院での視力や変視症の測定・評価を大切にしています。

眼科領域の難病治療を提携治療院で(当院ページ)から、お近くの治療院をお探し下さい。

Q 針治療はサプリメント(ルテイン等)や漢方薬、医薬品(点眼薬等)との併用は可能ですか?

A 針治療は病院から処方される医薬品や、一般のサプリメントなどとの併用に問題はありません。

・針治療は患者さんごとの体質や症状に合わせて最適なツボに必要な刺激を与えることで、誰もが本来持っている自然治癒力を引き出す治療法です。このため基本的に他の治療法と併用されても通常は問題ありません。針治療を併用することで薬物は効き目が増すことも多いようです。(緑内障やバセドウ病等、多くの実例があります) ルテインや漢方薬で効果が実感できなかった方も、当院の針治療を受けられる場合は続けてみて下さい。以下、各療法の併用での注意点を挙げます。

サプリメント(ルテイン等)...過剰摂取はせず用量を守って下さい。多種類の摂取は控えましょう。
漢方薬...体質に合うかが最も大切です。漢方治療に精通した眼科医による処方をお勧めします。
医薬品...当院から薬物療法への指示はできません。医師の説明で納得されたものは服用して下さい。


Q 針治療は視力低下や感染症等の副作用はありませんか? 医師には分からないと言われます。


A 適切に行われる鍼治療は眼球が傷つく危険もなく、病気の悪化や感染症のリスクはありません。
・鍼治療は薬物を全く使用しない治療法です。当院の治療法は感染症のリスクや強い内出血を伴う眼窩内への鍼も行いません。また使い捨て(ディスポーザブル)の鍼を使用していますので、副作用や感染症の心配は皆無です。眼科領域の全ての外科的な治療(レーザー、PDT、眼内注射など)に比較して、最も安全な治療法です。当院の眼科疾患では10才未満の子どもさんから、安全で痛みの少ない鍼治療を行っています。 

・日本では医師の教育や医療制度に鍼灸が組み込まれていないため、鍼治療の実際については多くの医師は理解されてはいません。しかし眼科領域は検査機器が進歩している分野です。医師には理解していただけない部分もありますが、一人一人の患者さんを丁寧に治療し、眼科医療として結果を積み重ねることが病気の克服に繋がるものと思います。現代医学以外は一切信用しない方もありますが、私自身が難病のクローン病(特定疾患)を患い克服した経験から、結果を出せる治療が患者さんにとって意味があり、結果の出せない治療法は現代医学でも鍼治療でも意味が無いと考えています。患者さんの見え易さに繋がる結果が全てです。

・千秋針灸院は2016年に、「黄斑変性への鍼施術が、視力に及ぼす影響について」、2018年には、「鍼施術が近視性CNV後の視力低下を防ぐ可能性」、を「眼科と東洋医学」研究会で統計症例報告として発表しています。公の場での眼科専門医に向けての報告ですので、今後は医師に眼科領域の鍼治療の存在も少しずつ理解していただける可能性があります。


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院長からひとこと


・症例報告を行うにあたり、黄斑変性への当院の針治療の役割をまとめました。

抗VEGF硝子体内注射自体を回避し、視力や視界の状況を改善する目的
(副作用を伴う注射はできる限り避けましょう。重篤で注射が必要な患者さんは少ないです。)

長期に渡り、再発や悪化、健側への発症を予防する目的
(再発や黄斑萎縮による視力低下や健側への発症等に対し、長期に渡り予防できています。)


抗VEGF製剤(ルセンティス、アイリーア等)の再注射を回避する目的
(視力や眼底の状態などは改善することも多く、再注射等を回避することが期待できます。)


・当院の脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性など)の治療は、特に視力(矯正視力)の向上や変視(歪み・中心暗点)等の症状軽減に特徴があり、眼科での診断でも良好な結果が得られています。特に発症してからの経過が短く比較的軽症な場合には治療効果も高く、短期間に改善する傾向があります。

・最近の眼科の傾向として黄斑変性としては初期の段階や発症の前段階から、予防的に硝子体内注射(アイリーア、ルセンティスなど)を行う傾向が強まっています。確かに注射を行えば眼底の状況は好転しますが、たった1回の注射でも白内障が早期に生じやすくなり、10回以上になると眼圧が上昇するなどして緑内障の発症が増えてきます。注射後に脳出血や硝子体出血を起こした患者さんもありました。硝子体内注射は新生血管や視力低下、変視(歪みや暗点)の状況を好転させる効果がありますが、軽症の段階で安易な投与を繰り返せば、長期的には副作用などにより目の健康が損なわれるリスクが高くなります。以前の主流であった光線力学療法(PDT)が、長期的には黄斑萎縮を生じ易くなり、結果的に失明を早めていた事実と危険性は、硝子体内注射にも当てはまる可能性があります。

・当院のホームページから発症後の早期に来院され、針治療を開始した患者さんも多いです。こうしたケースでは視野内の変視(歪みや暗点)や視力低下も少ないため、針治療のみで数ヶ月~半年程度で視野内の変視はほぼ消失し、視力も発症以前の状態に回復する可能性が高いです。こうした症例では後に眼科で「黄斑変性ではない」と診断されることもあります。当初は新生血管の存在が確認され、抗VEGF硝子体内注射等が検討されたことから、間違い無く脈絡膜新生血管ですが、眼科では経過観察のみで未治療な為、「自然に治るはずが無い」という意味の裏返しの診断になります。針治療のみで医学的にも治癒した症例は少なくありません。

・患者さんに気をつけていただく事として、喫煙(血管を収縮させるため眼底の血流量が低下する)は止めることや、紫外線(黄斑部を刺激し変性を促す)を避ける、野菜中心の食事やルテインの摂取、パソコン等の目に負担をかける作業は極力避ける、コンタクトレンズ(目への負担を避けるため)の使用を最小限にする等の指導をしています。仕事等、止むを得ない場合もあるかと思いますが、ご自身でも努力していただきたいと思います。

・千秋針灸院では既に200名を超える黄斑変性の治療実績があります。この結果、一般の鍼灸院等に比較し脈絡膜新生血管に関しては臨床数が圧倒的に多く、データや治療法、経験も豊富に蓄積されているため、様々な状態にある患者さんに合った治療方法を提案することが可能です。当院では眼科領域を唯一の専門領域として位置付けているため、全力で眼科疾患に集中した取り組みを行っており、他の眼科領域の疾患も含め、高い専門性を皆様に役立てていけることを目指しています。遠方の方は提携治療院等、充分な治療水準の治療院がある場合は、通える範囲にある治療院を紹介していますが、眼科領域の疾患に対応できる治療院は非常に限られます。通院可能な場合は出来る限り当院もしくは提携治療院での治療をお薦めします。

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患者さんに気をつけていただくこと若年性黄斑変性サポート情報)


・脈絡膜新生血管は外傷とは違い突然発症したものではなく、多くは日常の積み重ねから生じます。治療効果を確実なものにするには、発症した背景である患者さん自身の環境も可能な限り変えていく努力が必要です。当院では中医学や眼科学に基づき、また200名以上の患者さんの問診や傾向から脈絡膜新生血管を把握し、当院独自の生活指導を行っています。針治療を受けられていない方も参考にしていただけたらと思います。

中薬(漢方薬)、抗酸化サプリメント、遮光レンズのご紹介

●コンタクトレンズは必要最小限として、常時装用は可能な限り避けましょう。

50歳未満で発症し、近視性もしくは特発性脈絡膜新生血管と診断され、当院に来院された患者さんへの問診から、この病気の発症に、コンタクトレンズの長期装用が強く関与する可能性が疑われる結果となりました。

・2009年4月末までに、特発性脈絡膜新生血管もしくは近視性黄斑変性と診断され、当院に来院された患者さん37名の問診では、37名中31名(83.8%)がコンタクトレンズ(CL)の長期装用者(10年以上)でした。内CL装用歴が明らかな25名について、発症までの平均年数は18.6年、全員がCL装用歴11年以上、最も若く発症した方は20代前半でした。また両眼へ発症した症例は37名中9名(24.3%)でした。近視等によりCL装用者は年々増えて日本国内では約1.500万人、小学生以下への低年齢化も進んでおり、高校生では近視者の4人に1人はCLを使用しているとの報告もあります。しかし50歳未満に発症するとされる特発性脈絡膜新生血管や近視性黄斑変性の8割以上が、CL長期装用者であるという事実は、発症に強く関与している可能性が疑われるものです。当院でも引き続き調べていきます。

コンタクトレンズ(CL)については、医学的に角膜までの障害リスクを伴うものとされ、深部の網膜は無関係とされています。しかし当院へ来院された数十名への問診では、CLの長期使用歴を持つ方の割合が高く、無関係ではないと考えるのが自然です。特に強度近視眼や乱視用(トーリック)CLはレンズ周辺部での厚みが増すため、特にソフトCLでは酸素透過性が低下し、少なくとも角膜などへの影響は大きくなります。CLの使用で脈絡膜新生血管を発症する訳ではありませんが、元々何らかのリスクを抱えている方は、CLの長期使用が眼に負担をかけ、間接的に関わるのではないかと推測しています。

・コンタクトレンズの長期装用に関わる話として、装用歴が長く角膜で慢性的に酸素欠乏が続いた場合には、角膜周辺部から新生血管が角膜に入り込むことがあります。特に従来型SCLの装用を続けた場合には9割もの発症が報告されており、CLの種類や装用について再検討する必要があります。一度角膜内に新生血管を生じると消失しませんが、CLを中止するなどして酸素欠乏が改善すると血管としての機能を失い、萎縮して白色の形骸血管になります。角膜表層だけでなく深層にみられることもあり、酸素欠乏による角膜細胞からのVEGF(血管内皮細胞増殖因子)により、角膜内で新生血管を生じる事実は、私が仮説を立てているCLの長期装用が、若年性黄斑変性・脈絡膜新生血管の発症原因にも成り得ることを示唆しているように見えます。

・当院ではコンタクトレンズ(CL)を中止したり装用時間を限定するなどして、遮光レンズやルティーナ(東海光学)の眼鏡の使用をお勧めしています。CLは大変便利ですので使用が中止できない場合でも、本当に必要な時だけに限るなど、一日の装用時間をできる限り少なくする必要があります。
また当院の患者さんでCL装用を続けられている方は、使用を止められた方に比較して視力の向上等、治療結果も低下するようです。様々な理由からCL装用を続けられる方がありますが、可能な限り最小限の使用としていただきたいと思います。

●OA作業が多い方など、できる限りの対策を取りましょう。

仕事や日常生活で目にかかる負担が増えています。仕事は減らす訳にはいきませんが、日常生活での目の負担を減らすことやディスプレイの調整、また様々な場面で遮光レンズやブルーライトカット眼鏡も役立ちます。

・間近で使うPC用ディスプレイやスマートフォンの画面、大型液晶TV等は紫外線や目に負担をかける短波長光(青色光)を出します。特にLEDバックライトを使用した液晶画面は鮮明ですが、強い短波長光(青色光)を出しています。使用時間自体をできるだけ減らすと共に、周辺の明るさも関係しますが液晶ディスプレイでは特に輝度(明るさ)を調整することで目の疲れが軽減できます。また連続して見続けないよう気をつけることも大切です。

・最近の遮光レンズやブルーライトカットの眼鏡は、周囲の方が気づかない程の薄い色で、一般のサングラスを上回る紫外線の遮断効果や短波長光を減少させ眩しさを軽減する特徴があります。目への負担を減らし、黄斑変性の進行や白内障の予防も期待できますので、黄斑変性の方に限らず広くお勧めしています。また瞳孔拡大による眼圧上昇(眼底血流が低下)や顔と眼鏡の隙間から入り込む紫外線を抑えるために、当院ではできるだけ薄い色のレンズをお勧めしています。なお遮光レンズの色素は経年劣化します。使い方にもよりますが、3年程度を目安に交換しましょう。


・最近の傾向ですが、LED照明を導入後から、目が疲れるようになったという声が聞かれるようになりました。LED照明は省エネには繋がりますが、現時点で目に優しいかという点では、いくつかの問題があります。具体的には安定器の品質(チラつき)と光の拡散処理(蛍光灯との原理の違い)にあり、改良が進んではいますが発展途上です。現時点では無理にLED照明にするのではなく、疲れを感じるようであれば元に戻して下さい。千秋針灸院では、患者さんやスタッフの目を保護するため、治療院内の全ての照明でLEDの使用を避けています。

●胃腸に負担をかける食生活を改めましょう。

中医学では胃腸や肝臓に負担をかけることで、出血傾向や自然治癒力の低下を招き眼病を招くとされています。また当院の200名以上の患者さんの問診や体質からも、同じような傾向を掴んでいます。

・特に女性の方ではチョコレート等の甘い物(砂糖)、男性では食べ過ぎや長年の飲酒が原因で、胃腸や肝臓の弱りを起こしている方が多いようです。食べ過ぎや甘い物の摂り過ぎは胃腸を弱らせ眼底部を含めた出血傾向を高めます。甘い物の摂り過ぎは案外ノーマークの方が多いようです。最近は何かと甘い物を口にする機会が増えていると思いますので、特に気をつけていただきたいものです。また毎日の飲酒も量にもよりますが自然治癒力の低下を招き、体の回復力を弱めてしまいます。実際、脈絡膜新生血管の患者さんに多くみられる網膜浮腫は、飲酒や水分摂取を控えめにすることで改善する傾向があります。

・適度な運動と十分な休養、適切な食事ができれば、大抵の病気は起こり難くなり、また治りやすいものです。脈絡膜新生血管(近視性黄斑変性)の患者さんには針治療だけではなく、自分でできることを実行することで、現状を変えるきっかけになります。当院でも可能な限りサポートをしますが、治療と共に努力してみましょう。

●眼科疾患への抗VEGF療法(ルセンティスなど)に対する重大な副作用が指摘されています。

最近の眼科専門書には、抗VEGF療法(アバスチン、ルセンティス、アイリーア)に対する限界や問題点が記載されるようになっています。手元の書籍では『眼科診療のコツと落とし穴 薬物療法』 中山書店 で 神戸大学の本田茂医師は、むやみな再投与に対する血行路形成への支障や、繰り返し投与の効果減弱を指摘しています。また海外では副作用として、脳梗塞や緑内障の発症リスクが高まることも報告されるようになりました。

・2009年に当院が公開した統計症例報告でも、抗VEGF硝子体内注射の多数・頻回投与は視力改善への効果が明らかに落ちることを指摘しており、期間を空けての再投与も効果が薄くなることを幾例もの症例で確認しています。複数回の抗VEGF療法が効かなくなる原因は組成がタンパク質であるため、繰り返し投与により抗VEGF薬物への抗体が出現することに加え、正常な血行路形成を阻害し、網膜の健康状態を悪化させてしまうと考えられています。私も10年以上前から臨床の中で気づいていましたが、最近では抗VEGF療法は対症療法に過ぎないとして、積極的には使わないとする眼科医も増えているようです。しかし一方で数十回以上も漫然と使い続ける眼科医もあることから、本当に必要な状況であるか、十分な効果が得られる可能性はあるかを慎重に検討する必要があると考えます。

・この話を簡潔に言えば、初回(連続3回程度まで)の抗VEGF療法については、良好な効果が期待できますが、一旦抗VEGF療法を行った後の再発症については、初回のような良好な効果はまず期待できません。また網膜浮腫に対して注射を行う向きもありますが、数ヶ月で薬の効果が切れてくると再発するケースが多く、この場合には10回・20回と注射を繰り返すことになります。1回の注射でも白内障、概ね10回以上の注射で緑内障の発症リスクが高まることが報告されています。当院には注射後に脳出血や硝子体内出血を生じた患者さんも来院されています。十分な効果が得られない場合に繰り返し再投与を行う事は、患者さんがリスクだけを負うことになります。特に発症から数年後に多い黄斑萎縮を生じ始める状況では、眼科での有効な治療法がありませんので、視力低下が長期間固定しない内に適切な針治療の検討をお勧めします。

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関連リンク(症例報告)・参考文献


●関連リンク

眼科領域の針灸治療 (当院ページ)
眼科領域の難病治療を提携治療院で(当院ページ)

●症例報告

「鍼施術が近視性CNV後の視力低下を防ぐ可能性」 WEB公開版
千秋針灸院の統計症例報告 2018.3.11 第35回「眼科と東洋医学」研究会 台東区民会館

「黄斑変性への鍼施術が、視力に及ぼす影響について」 WEB公開版
千秋針灸院の統計症例報告 2016.3.13 第33回「眼科と東洋医学」研究会 台東区民会館

中医学による脈絡膜新生血管(若年性黄斑変性)への鍼灸治療(全3部) WEB公開版
(第1部) 問診から得られた脈絡膜新生血管(CNV)の新たな概要と課題
 
2009.10.1
(第2部) 鍼治療の脈絡膜新生血管(CNV)への短期成績と抗VEGF療法 
2009.11.1
(第3部) 脈絡膜新生血管(CNV)への鍼治療による長期成績、変視症の変化、当院の取り組み
 2009.12.1


参考文献・蔵書一覧 (当院ページ)

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   ・本ページの内容は現代の眼科医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
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