はじめに
仙台市の住宅地に建つ、木造2階建て住宅です。
お施主様は築40年ほどの中古住宅をリフォームして住まわれていましたが、
建物の老朽化もあり建て替えることになりました。
計画地は南西角地で、上の写真の路地は近くの小学校の通学路になっています。
夕方になると辺りで子供たちが遊んでいたり、お母さんたちがおしゃべりをしていたりします。
映画「三丁目の夕日」のようだと、子供たちは「昭和通り」とよんでいたりするそうです。
そんなご近所付き合いの残る路地に大きな軒をかけることを提案しました。
大きな軒の下は、その住宅の領域でありながら同時に地域にも開かれた場所です。
一般的には道路に対して敷地境界にそった塀をたて自らの領域を示すことも多いと思いますが、
ここでは大きな軒によって領域を示しつつ、ご近所付き合いのできる場所としています。
それがお施主様やこの地域の雰囲気にあっていると考えたからです。
おおらかで、落ち着いた雰囲気の「路地にかかる大軒」です。
西側外観です。
出幅2.2mの大きな軒が路地にかかっています。
軒天はざらざらとした表情のある木毛セメント板、
壁はエクセル・ジョイントというひび割れしにくい左官材料で仕上げました。
路地に面して大きな木製扉を設けました。左側にぽっかりとあいた開口部からは中庭と空が見えます。
右側に設けた小さな門扉の奥には、家族用の玄関ドアがあります。
大きな木製扉の先には、玄関 兼 ギャラリースペースがあります。
ギャラリースペースでは月に1回ほど、世界各地の民芸品、パンやコーヒー、
様々な作家さんの作品などが並べられたり、花屋さんが来たりと、楽しい企画が行われ賑わっています。
ギャラリーから廊下 兼 クローゼット、その先にキッチンが見えます。
大きな軒下、ギャラリー、キッチンが一直線に並んでいます。
普段のご近所付き合いからイベント開催時まで、使いやすいような動線計画としました。
また、扉を閉めることでギャラリーと住宅を分け、プライバシーを確保することができます。
扉は引手を省略し金物を隠すことで、立てかけた板のようなデザインとしました。
ギャラリーから家族用の玄関方向を見ています。
外に庭木の足元の石積みが見えています。壁や天井は屋外の軒下空間と同じ素材を使うことで、
地域に開かれた空間であることを暗示しています。
ここには、お施主様がお持ちだったアンティークの照明、トグルスイッチ、取手などを使い、
ギャラリーの空間を演出しています。
玄関より中庭を見ています。
中庭には幹のきれいな株立ちのシャラノキを植えました。
壁に飾られた数々の民芸品や季節の花とともに来客を出迎えます。
天井には子供室から覗ける開口部があいています。
右の壁にあいた開口部はリビングへとつながっています。
半階あがったリビングダイニングよりギャラリーを見下ろしています。
プライバシーは守りながら、ひろがりを感じられるようにレベル差をつけたうえで開口部をあけました。
レベル差をいかし、リビングの下は床下収納として活用しています。
リビングと同じ広さがあるため、季節の衣類などをしまっておけます。
リビングダイニングです。
床は大判の磁器質タイル、壁はAEP塗装です。
塗装色は目に眩しすぎず光がきれいにまわるグレーとし、
僅かに茶色を混ぜることで茶系の家具となじませています。
右側には3連の木製サッシがあり、開け放つと外のデッキとつながります。
デッキまわりには色々な樹木が植えられます。
リビングダイニングより子供室への階段を見ています。
ゆるやかな勾配天井とし、天井が高い部分に子供室を設けています。
子供室は腰壁に囲まれていますが、勾配天井の下は一体的な空間のため、各室の気配は感じられます。
奥の開口部はキッチンへと続いています。
子供室の天井です。
天井はむらのでる特殊な塗装とし、いろいろな箇所に設けた窓からの光を美しく感じられるようにしました。
床は無垢フローリングに柿渋塗りです。
リビングダイニング見返し。
奥のガラス越しにギャラリーの壁が見えています。
ギャラリーのラフな素材感と、リビングのしっとりとした素材感が対照的です。
玄関でもあり地域に開かれたイベントの場でもあるギャラリーと、
よりプライベートな家族の空間となるリビング、それぞれに対応して素材感を変え、
空間の雰囲気を切り替えています。
キッチンです。
大きな窓が中庭に面してあいています。
こちらの中庭は浴室、寝室にも面しています。視線をさえぎるため常緑のシラカシを植えました。
キッチンはステンレスで統一し、機能的な厨房のような雰囲気としました。
キッチンよりクローゼット、その先にギャラリーを見ています。
クローゼットの建具は以前のお宅で使用していたものを再利用しました。
数が足りなかったため、左側の建具は同じデザインで新しくつくりました。
ここからリビング下の床下収納へ行くことができます。
また姿見を貼った引戸を設け、視線を遮られるようにしています。
キッチンからクローゼット、ギャラリー、軒下を見ています。
間にある3枚の建具をすべて開け放つとキッチンから軒下まで一直線でつながります。
左へいくとリビング、右へいくと水まわりと寝室があります。
浴室です。
洗面室、浴室ともに壁はガラスモザイクタイル貼りとし、
間仕切りをガラス扉とすることで、中庭までの一体的な空間としてひろがりを感じられるようにしました。
タイルや目地材の色はお施主様と一緒に悩んで決めましたが、ご家族からも好評とのことで、よかったです。
小さな空間ですが圧迫感のないつくりです。浴槽はホーローです。
書斎から寝室を見ています。
お施主様にアイデアをいただき、布団や毛布が収納できる大きな引出しを作りました。
寝室は縁無し半畳畳です。
三角形の窓からは、ドラマチックな光が入ってくることがあります。
寝室から中庭、その奥にキッチンを見ています。
グレーの壁が内外で連続するようなイメージです。
寝室から書斎を見ています。
天井は子供室、リビングのほうへと吹きぬけています。
大きな屋根の下にそれぞれの部屋があり、家族みんなの気配が感じられる住宅となりました。
■ KNN 路地にかかる大軒 所在地/仙台市青葉区 主要用途/専用住宅 家族構成/夫婦+子供2人 構造・構法--------------------------------- 主体構造 木造 基礎 ベタ基礎 規模--------------------------------------- 敷地面積 171.94㎡ 建築面積 102.41㎡ 延床面積 97.73㎡ 工程--------------------------------------- 設計期間 2013年11月~2014年 7月 工事期間 2014年11月~2015年 5月 敷地条件----------------------------------- 第2種中高層住居専用地域 道路幅員 南6.0m 西4.0m 駐車台数 1台
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