はじめに
仙台市の郊外の雑木林の中に建つ、細長い高床式の住宅である。
敷地は、樹齢三百年の立派なケヤキと、30メートルにもなる杉林が鬱蒼と茂る森のような敷地であった。
クライアントは、北欧のビンテージ家具を扱う家具屋さんで、
素材や経年変化に対して強いこだわりを持っていた。
クライアントの要望は、長い年月を経た森を生かす
――木を極力切らず、土もいじらす、
森の緑を感じながらお気に入りの家具に囲まれて住みたい――
というものだった。
建物を建てられる場所は限られていた。木々の間を縫うように細く長い限られた部分しかなかった。
建物を地面から1メートル浮かせて、最小限の基礎とすることで、土を極力いじらず、木の根も配慮した。
細長いボリュームを構造として成立させるため、柱、梁を門型状にフレーミングしたものを等間隔に反復させ、
それを積極的に内部に取り入れ、場所ごとに最適な開口を色々な高さで設けた。
例えば、リビングであれば柱を木立のように見せながら大きな開口にしたり、
寝室ではプライバシーを保ちながら緑を感じる高窓にしたり、
リブ上の柱は場所ごとに収納や本棚になったりもしている。
そうすることで、幅3メートル、奥行き30メートルの回廊のような不思議なワンルームのボリュームが、
積極的に森を受け入れ近づくような在り方となった。
おおらかな長い空間の中に好きな家具が置いてあったり、
それらの中を回遊するたびに、色々な距離感で森の緑や木立と触れ合うことができる
『森の中の回廊』のような住処となった。
西側側外観。
樹齢数百年のケヤキの木や杉の木が生い茂っている。
手前に道路と病院があり、プライバシーを高めている。
外壁は焼き杉を使用。森に呼応したような朽ちる素材。
手前は胡桃の木。
玄関のボリュームが、焼き杉のボリュームに貫入するような見え方
デッキテラス。
杉木立を囲うように、色々な場所が展開している。
左の農家の納屋と新しい庭の関係が生まれている。
東側のファサード。
玄関扉は北欧家具でよく使われるチーク材。
銅製の照明(PH Wall - Louis Poulsen) との相性が良い。
玄関ホールは黒い杉板に、床仕上げは玄昌石。横長の低めのスリット開口が空けられている地面に近い場所。 階段を上がるごとに地面との距離感が変わり、リビングに至る。
リビングダイニング。
回廊状になっている空間に家具がパラパラと置かれ、それぞれの場所ができている。
奥にキッチンとクローゼット、寝室が続く。
杉と柱が連なって連続するような見え方。
家具やレコード。
クローゼット。高い部分から光が入り、下部はリブを利用して本棚になっている。
奥に子室とテラス
奥の子室にいくトンネル状の階段。右手にテラス
子室は1メートル下がった位置、ロフトがある。もぐったような位置のため、階段脇に地面や緑が見える。
上部にベット。下は書斎のような使われ方。
5メートルの長いキッチン。上部はアクリル板で区画され、視覚的には連続する。
モザイクタイルのバスルーム。建物の外壁に連続する開放感のある落ち着いた空間。
■ IFM 森を奔る回廊 所在地/仙台市宮城野区 主要用途/専用住宅 家族構成/夫婦+子供1人 構造・構法--------------------------------- 主体構造 木造 基礎 独立基礎(柱状改良にて地盤改良) 規模--------------------------------------- 敷地面積 611.94㎡ 建築面積 109.27㎡ 延床面積 109.27㎡ 工程--------------------------------------- 設計期間 2008年 1月~2010年 3月 工事期間 2010年 4月~2010年11月 敷地条件----------------------------------- 第1種住居地域 道路幅員 西4.1m 駐車台数 1台
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