旧制第一高等学校寮歌解説

旅順陷落歌

 

スタートボタンを押してください。ピアノによる原譜のMIDI演奏がスタートします。 スタートボタンを押してください。現在の歌い方のMIDI演奏がスタートします。
1、北、窮髪の風寒く   蒼茫遠き(あけ)の色
  五嶽動搖(どよも)す聲高く   三度(みたび)の凱歌揚ぐる間に
  見よ老鐵の山崩れ  黄金山頭日の御旗

2、闇、九霄の雲拂い   領巾(ひれ)振り出づる朝日影
  霜の劒に照り()えて  六合匂ふ茜根(あかね)
  今渤海の波静か    旅順灣頭日の御旗
「大空涵す」の譜


語句の説明・解釈

明治38年1月11日 旅順陥落祝勝会。校庭で分列式の後、綱引き、野試合、相撲、晩餐会後、嚶鳴堂で謡曲、幻灯など。
3月 1日 第15回紀念祭。飾り付けを復活。新寮落成式を同時に行う。新寮は乃木将軍にちなみ朶寮と命名。 塩谷時敏教授の撰。(「一高自治寮六十年史」)

(旅順の戦)           
明治37年8月から5ヶ月間にわたって戦われた日露戦争最大の激戦。バルチック艦隊の来航前にロシアの海軍基地のあった旅順(現中国遼東半島南端、大連市の一部)を陥落させるため、乃木希典率いる第3軍は、3回にわたって旅順要塞(司令官ステッセル)を総攻撃し、要塞背後 の203高地を占領した後、これを攻略した。日本軍の損害は約6万人。
                                                                
第1回旅順攻撃 明治37年 8月19日
第2回旅順総攻撃  10月26日から31日
第3回旅順攻撃開始 11月26日
旅順のロシア軍降伏 明治38年 1月 1日
           
語句 箇所 説明・解釈
窮髪 1番歌詞 (「髪」は草木の意)北方のはての不毛の地。
五嶽 1番歌詞 1番歌詞)    五つの名山。泰山(東嶽)・華山(西嶽)・衡山(南嶽)・恒山(北嶽)・嵩山(中嶽)。ここでは、
                   中国全土という意味。
老鐵の山 1番歌詞 日露戦争の時のロシア軍要塞。難攻不落といわれ、日本軍は攻略に苦労した。旅順西南の山(466m)、日露戦争の「兵どもが夢の跡」というところか、露軍兵舎・弾薬庫・砲台跡などが今も残る。観光地として、日式(日本式)の老鉄山温泉としても人気が高い。
黄金山頭 1番歌詞 旅順口にあったロシア要塞黄金山砲台のこと。広瀬中佐が戦死した日本海軍旅順口閉塞戦隊に容赦なく砲撃を浴びせた。今もその跡地には、露軍旅順要塞重砲台連隊の砲台・兵舎等が残る。旅順背後(旧市街から北西2.2km)の203高地とは異なる。

「激戦の上、攻略した203高地のことと思われる。」(一高同窓会「一高寮歌解説書」)
九霄 2番歌詞 天の最も高いところ。九天。「霄」とは空、天のこと。
六合 2番歌詞 天地と四方。宇宙全体。
            

解説書トップ  明治の寮歌  大正の寮歌  昭和本郷の寮歌 昭和駒場の寮歌部歌・應援歌・頌歌