旧制第一高等学校寮歌解説

御大典奉祝歌(大正天皇)

大正4年 

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1、東海波は太平の      御世豊樂の(うま)し秋
  乾坤どよむ萬歳に     八十國の民祝ふ哉
*「哉」は昭和10年寮歌集で「かな」と変更。

2、御璽(みたま)さゝげて高御座(みくら)    ()らし()めけん日の御子の
  其の歡喜を今日茲に    新にすなる大御典(おほみのり)
*「初め」は昭和10年寮歌集で「始め」に変更。

3、御袍(ぎょほう)のかげに茜さし    大饗(おほあへ)の庭の灯は
  御世の光ときらめきて   舞樂の音もおほどかに

4、東にかゝるまそ鏡      潮路はるかに照らしつゝ
  四海(よも)鎮護(しづめ)のすめらぎの 大き稜威の畏さよ
*「畏さ」は昭和10年寮歌集で「かしこさ」に変更。

*原譜では歌詞の全漢字にルビがあったが、大半は省略した。
歌詞各行の出だしを全て弱起とするアウフタクトの曲である。上の原譜の各段アウフタクトの最初の小節を見れば分かります。

譜は、昭和10年寮歌集等で、次のとおり変更された。

1、調
 ハ長調で、3段1小節から4小節(含む4段のアウフタクトの最初の小節)までニ短調に転調する。これを昭和10年寮歌集で、ハ長調を変ロ長調に移調し、途中、3段(「乾坤どよむ萬歳に」)は、調号を明示(♭二つから三つに)してハ短調に転調するように変更した。曲の途中で転調し、一層、荘厳さを醸し出すことに成功した。作曲者の箕作秋吉が名歌「若紫に」で魅せたと同じテクニックである。

2、音符と歌詞の対応
 「や そくにの たーみ」は、昭和10年寮歌集で、「や そくに のたみ」と、「たみ」を弱起に改めた。4段1小節1・2音を2分音符の1音として「そー」1字を当て、「くにの」を1音づつ後にづらした。4段2小節1・2音のタイを外した。

3、その他、昭和10年寮歌集で、
1)昭和10年寮歌集で、各段4小節を4分の3拍子から4拍子に改め、2分音符を付点2分音符とし、次段アウフタクトの最初の4分音符をこの小節に移した。休止符をとったので、その代り2分音符と4分音符の間にブレスを置いた。

2)「はーふ」(4段3小節)にスラーを付けた。その他、歌詞各行毎に、スラーをかけたが、平成16年寮歌集で、すべて外された。
 
 この名歌も、今、歌うのは私ぐらいなものであろう。最後の「祝ふ哉」は、高音で老年の身には歌い辛い。


語句の説明・解釈           

語句 箇所 説明・解釈
乾坤 1番歌詞 天地。
どよむ 1番歌詞 鳴り響く。響きわたる。
御璽 2番歌詞 天皇の印。大きさは方三寸、「天皇御璽」の4字を刻す。現行のものは明治7年改刻の金印である。
高御座 2番歌詞 天皇の玉座。平安時代以来、大極殿または紫宸殿に置き、即位・朝賀・蕃客引見などの大礼の際に用いた。
大御典 2番歌詞 即位の儀式。
3番歌詞 「袍」は、束帯や衣冠などの時に着る盤領(まるえり)の上着。位階によって服色を異にする。ここでは天皇のお召し物。
大饗 3番歌詞 即位礼・大嘗祭に行なう大饗宴。
まそ鏡 4番歌詞 (真澄鏡、マソはマスミの転。一説に完全の意)よく澄んで明らかな鏡。ここでは月。「東にかゝる」とあるから満月であろう。
四海 4番歌詞  四方の海。世界。国内。
稜威 4番歌詞 天子の威光
            

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