旧制第一高等学校寮歌解説

桃太郎踊りの歌

 

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昔、昔、その昔
(ぢい)さんと(ばあ)さんがあったとサ
   (繰返し)ヨイヤサ、キタサ

(ぢい)さんは山へ芝刈りに
(ばあ)さんは川へ洗濯に

ドンブリッコ、ドンブリッコ流れくる
婆さんはよろこんで拾い上げ

家へ歸って眞っ二つ
中から出たのがこのワタシ

成人に長じて、鬼が島
征伐せんとて、家を出る

赤鬼 靑鬼まだら鬼
前から來るヤツは巴投げ

(うしろ)から來るヤツは背負い投げ
右から來るヤツは拂い腰

左から來るヤツは(たい)落し
上から來るヤツは肩車

下から來るヤツは押しつぶし
ポカンとして立ってるヤツは
    ぶんなぐって七ゆすり

金銀珊瑚(さんご)綾錦(あやにしき)
犬が引き出す エンヤラヤ

猿があと押す エンヤラヤ
雉が綱引く   エンヤラヤ
譜に変更はない。左右のMIDI演奏は、同じ演奏である。

この頌歌は一高本来の歌ではない。昭和8年に広島高校を中退し、一高に入学した薬師寺彰という強者が持込んで、瞬く間に寮全体に流行らせた。その当時は、鬼退治の歌詞は、右・左・上・下がなく、また、前から來るヤツは「拝み打ち」で、柔道・撃剣双方の術を取り込んでいた。七高俗謡「桃太郎」もそのとおりで「拝み打ち」と「背負い投げ」だけで、その他の柔道の術はない。柔道の術の右・左・上・下は一高独自で後に柔道部員により付加えられたものであろう。
 昭和10年、18年寮歌集ともに、この「桃太郎踊りの歌」は掲載されていない。昭和42年向陵駒場同窓会刊の寮歌集で、「北帰行」、「一高卒業四十年記念歌」とともに頌歌として追加された。
    

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