旧制第一高等学校寮歌解説

野球部應援歌

大正12年 

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1、正氣あふるゝ向陵の     健兒に血あり涙あり
  日頃の力示すべき      今日丘の上の晴軍
  軍にふりし柏葉旗       勝てよとばかり靡けるを

2、世は行樂に迷ふ間を     炎天地を灼く下にして
  汗と土とにまみれつつ     球を競ひし若人が
  雄々しく強く(きた)へ來し      腕に何か敵せんや

3、全都の敵を屠りては      覇者の譽を負ひし日や
  友よ男の子の意氣あらば   命にかへて先人が
  樹てし覇權の榮の痕      再びかへせ今ここに

4、あゝ若き血の高鳴りや     双手に餘る力かな
  今し立ちたる九戰士      必勝の色眉宇に燃ゆ
  いざ太刀とりて立てよ友    戰はんかな時ぞ今
作詞は、「日本百名山」の著で有名な作家の深田久彌、作曲は弘田龍太郎。原譜ト長調2拍子は不変だが、平成16年寮歌集で、次の2箇所が変更された。

1、「あふるる」(1段2小節)   ドードドーレ
2、「か」(5段4小節最後)    ソ


語句の説明・解釈

語句 箇所 説明・解釈
柏葉旗 1番歌詞 「柏葉」は一高の校章になっている武の象徴。応援旗。
覇者の譽 2番歌詞 一高野球部は明治23年創部以来、明治37年早稲田・慶應に敗れるまでの14年間、無敵であった。大正7年に内村投手を擁し、早稲田・慶應・学習院を破り15年ぶりに天下の覇権を握るも、翌8年には早慶に破れ、覇権は1年で向陵を去った。
「友よ男の子の意氣あらば 命にかへて先人が 樹てし覇権の榮の痕 再びかへせ今ここに」すごい歌詞である。
 三高との定期野球戦は明治39年に始まり、当時、熱戦を繰広げていたが、この應援歌では触れられていない。(昭和7年作?の「野球部新部歌」では、「比叡にかゝる黑雲も」とある)
九戰士 4番歌詞 野球の9選手。
「こゝにぞかゝる九戰士」(明治41年「としはや已に」5番)
眉宇 4番歌詞 宇は軒の意、眉を眼の軒と見立てていう。まゆのあたり。
戰はんかな時ぞ今 4番歌詞 「戰はむかな時機至る」(明治37年「征露歌」20番)
                        

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