旧制第一高等学校寮歌解説

野球部新部歌

昭和7年? 

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1、 嵐が丘に巣籠もれる     大鵬翼若うして
   燕雀獨り(さざ)めけば      山(きわ)焼きて日は落ちぬ
   ()よ日の本を去りしかば   彌益し()るる眞闇かな
 
2、華璧は冴えて闇くだつ     嗚呼南濱や戸塚原
  幾その(とき)を治めけん      比叡にかゝる黑雲も
  拂へば淡しちぎれ飛び    王覇は我のことなりき

7、榮譽は古りし四十二の     功名部史を飾りては
  壯麗綾網(あや)に加はりぬ      柏葉に添へし花橄欖(かつら)
  濁りに足は洗はざる      勇者の胸に薫るかな
野球部マネージャーだった平木惠治オンケルの詞に、「都の空」など多くの名寮歌を作曲した鈴木充形が作曲した。あまり歌われなかったせいか、この原譜に変更はない。左右のMIDI演奏は、全く同じである。マスターするのに苦労した歌である。


語句の説明・解釈

語句 箇所 説明・解釈
大鵬翼若うして 1番歌詞 大鵬は想像上の大鳥の名。ここでは一高野球部。
燕雀 1番歌詞 とるにたらない小人物を燕雀というが、ここでは弱小野球チームのこと。
燕雀安知鴻鵠志(えんじゃく いづくんぞ こうこくの こころざしをしらんや)
華璧 2番歌詞 「璧」は、薄く環状に作った玉やガラス。ここでは、一高野球部を美玉に喩える。
南濱 2番歌詞 横浜での国際野球戦。守山恒太郎を擁し、横浜アマチュアクラブに、明治35年5月10日 4:0、米国軍艦ケンタッキー号乗員に明治35年5月17日 34:1で連勝した。
戸塚原 2番歌詞 早稲田大学野球部と戦った戸塚球場のこと。一高野球部は、明治37年6月、早稲田大学、慶応大学に敗れるまでは、14年間無敵であった。
比叡にかゝる黑雲 2番歌詞 三高野球部のこと。三高とは明治39年から昭和23年まで定期対校戦として戦った。
王覇 2番歌詞 王者と覇者。王者は仁義により、覇者は武力により人の上に立つ。
榮譽は古りし四十二の 7番歌詞 一高野球部は明治23年にベースボール部として発足したので、「四十二」は、昭和7年にあたる。この野球部新部歌は、昭和7年に作られたものと推定される。
 「榮華は古りし二千年」(大正12年「榮華は古りし」1番)
柏葉に添へし花橄欖 7番歌詞 柏葉・橄欖は一高の武・文の象徴。橄欖を「かつら」というのは珍しい。
 「憩へ橄欖(かつら)の谷深く」(昭和7年「白波騒ぎ」5番)
濁りに足は洗はざる 7番歌詞  屈原『漁夫辞』 「滄浪の水清まば、以て吾が纓を濯うべし、滄浪の水濁 らば、以て吾が足を濯うべし」
                        

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