旧制第一高等学校寮歌解説

遠漕歌

大正11年 

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 1、紅香ふ朝霧に        墨江十里明けゆけば
   重き務めに若人が      雄々しき今日の船出かな

 2、運河にわめく舵の聲     江戸の流に浮びては
   雲間のひばり友としつ    舌鼓うつ昼餉かな

 4、流れも早き古利根川     漕ぐ手休めぬ運漕に
   涙流すな流山         霞の奥に運河口

 8、うらゝに春のかげろひて   長堤萬里雲に入る
   白帆ゆるく行く所        なんじゃもんじゃの森浮ぶ

10、洋々として東行く        坂東太郎春深し
   熱尻艇(ねっけつふね)に慣るゝ頃       霞がくれに砂丘湧く

13、たのしき今宵このむしろ   今日ぞレースの門出なる
   堅き誓ひに艇友が       杯あぐる愉快さよ
昭和10年寮歌集で、原譜ニ長調4拍子から、ニ短調2拍子へと変った(同名調の短調化)。また「ゆるやかに」のテンポ文字がついた。
 4拍子から2拍子に変わったのに伴い、例えば8分音符は16分音符に、付点4分音符は付点8分音符に変更した。短調化の方法は、♯二つの調記号を、♭一つの調記号に変え同名のニ短調に移調した。以上のほかメロディーそのものは、次の2箇所を変更した。(原譜は大正14年寮歌集で確認) 

1、「わかうどが」(3段3・4小節)     ミーミラーラ シーー (ニ短調)  
2、「ををしきけふの」(4段1・2小節)   ドードドーシミーミミー (ニ短調)


語句の説明・解釈

隅田川から利根川下流にかけての通過点(行徳、取手、なんじゃもんじゃの森、佐原等)を巧みに織り込んだ遠漕歌。大正11年は、少なくとも8月と10月に2回大利根遠漕を行なっている。

語句 箇所 説明・解釈
舵の聲 2番歌詞 コックスの声。
漕ぐ手休めぬ運漕 4番歌詞 「運漕」の文字通りの意味は、船で貨物を運ぶことだが、艇内には特に運ぶべき荷物などは積んでいない。漕ぎ手とコックスだけである。水流がきつく漕ぐ手を緩めれば、艇が逆走してしまうことをいう。利根川と江戸川には水位の差があって、流山付近では流れがかなり速かったため、漕ぐ手を休めることができなかった。
 「涙流すな流山 ホイ ノーストップで運河迄 ホイノホイ」(「一つと出たわいな」7番)
なんじゃもんじゃ 8番歌詞 関東地方で、その地方には見られない種類の大木をさしていう称。例えば明治神宮外苑のひとつばたご、筑波山のあぶらチャンなど。
熱尻(ねっけつ) 10番歌詞 端艇部應援歌の1番「青春の兒が熱血の」の[熱血」も「熱尻のこと」という先輩もいる(もちろん冗談に)。
                        

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