旧制第一高等学校寮歌解説

庭球部部歌

 

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1、向ふが岡の新草に    描きて清き白絲や
  ネットにはらむ微風を   友とする身の樂しさよ
*「白絲」は昭和50年寮歌集で「白線」に変更。

2、創生日まだ淺ければ   誇る歴史はなけれども
  熱球球に籠るとき     侮り受けぬ備あり

3、筑波颪に逆らひて     不二の夕日をはね返す
  習練茲に年を經ぬ     いざや見えん吾が敵よ

5、猛襲茲に極りて       忽ちあがる吾が凱歌
  滴る汗を拭きあへず    友よたゝへん善戦を
4段2小節音符下歌詞「するーみの」は、「すみーみの」を訂正した。この誤りは昭和18年寮歌集で訂正されたが、昭和50年寮歌集で、また元の「すみーみ」に戻ってしまった。
譜の変更はない。ただし、曲頭のテンポ表示は、敵国の英語禁止の影響か、昭和18年寮歌集で、Tempo di marciaと同盟国のイタリア語に変更され、その後の寮歌集に踏襲されている。


語句の説明・解釈

女子学生がテニスをしているような詞曲で、勤儉尚武を旨とする一高生は好まなかった。代用として、本来は野球部の歌である「としはや已に」(明治41年東大寄贈歌)がテニス部部歌であるかのようにテニス部員に歌われた。


語句 箇所 説明・解釈
創生日まだ淺ければ 2番歌詞 テニス部は明治23年の校友会発足時からの部(ロンテニス)であったが、婦女子のスポーツであるとして、明治29年2月いったん廃止された。庭球部として、復活が校友会総会で認められたのは、大正13年2月、同年8月には第1回対三高庭球戦が行なわれた。従って、この部歌は庭球部として発足して間もない頃、おそらく対三高戦への参加が決まった同年6月25日頃、大正13年の作ではないかと思われる。
吾が敵よ 3番歌詞 庭球部は、大正13年から始まった対三高四部対校戦(端艇・野球・陸運・庭球)に創部直後から参戦した。おそらく「敵」とは三高庭球部のことであろう。「不二の夕日をはね返す」の歌詞も、西の彼方を意識したものか。ちなみに、第1回対三高戦は、3:6で敗北した。
忽ちあがる吾が凱歌 5番歌詞 対三高庭球戦の初勝利は、7:2で勝った大正15年の第3回戦であった。大正13年第1回(3:6)、大正14年第2回(4:5)は、三高に敗北している。
                        

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