計算過程を復習しよう。
N期モデルでも全く同じであることが分かる。要するに、後ろから(バックワードに)
2元連立方程式の組を順次解いていけば良いわけだ。後ろから方程式の組を順次解いて
いくという方法は、金融モデルに限らずいろいろな分野に現れる。
2項モデルを扱ったが、「2項」は重要である。株と安全証券に対応して、未知数を二つ
導入した。(xとy)「2項」に対応して方程式が二つ導かれるので、うまく解けるので
ある。3項だと、同じように連立方程式を立てても、未知数より方程式の数が多くなって
解けなくなる。
また上例では三組の連立方程式を解いたが、それぞれで、u、dが異なっていても良いこ
分かる。株価の変動をもう少し複雑にできるわけだ。rも時期に応じて変えてもよいが
(r0、r1など)、このままでは株価のような確率変数にはできない。
さて、計算は後ろから行ったが、実際のポートフォリオは勿論前から組み立てていく。
上の計算に基づいて先ず、0期目のポートフォリオを構成する。つぎに、株の上昇・下落
に応じて、やはり上の計算に基づいて1期目のポートフォリオを組み直す。この「組み直
す」という操作が重要である。0期目のポートフォリオをそのまま持っていれば良いわけ
ではない。
6− リスク中立確率とマルチンゲール
株価、オプションを確率過程と考える。N=2として
株価の確率過程をS0 S1 S2 オプションの確率過程をC0 C1
C2 とする。両過程を
以下に具体的に示す。
S0= S
S1= uS 確率 P
= dS 確率 1−P
S2= uuS 確率 P×P
= udS 確率 P(1−P)
= duS 確率 P(1−P)
= ddS 確率(1−P)×(1−P)
C0= D0
C1= Du 確率 P
= Dd 確率 1−P
C2= Duu 確率 P×P
= Dud 確率 P(1−P)
= Ddu 確率 P(1−P)
= Ddd 確率(1−P)×(1−P)
[3− オプションのゲーム化]で説明したように、単に、C2 の期待値を計算し、それを現
在の価値に換算してC0 を求めると、即ち、C0 = E(C2)/r2
とすると裁定機会が生
じるのであった。
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