|
|
4− 仮想市場の設定
三つの証券即ち 元証券(株式)、派生証券(ヨーロッパ型コールオプション)、 安全証券を取り引きする仮想市場を考え、以下の条件を取り引きのルールとする。
仮想市場
- 投資家は、三証券を市場から時価で任意の量借りることができる。
- 投資家同士で、証券を時価で自由に交換できる。
- 取り引きは、0期(現在)、1期、2期(取り引き終了)で行われる。
2期で、時価で清算する。
- 株式のアップ率をu、ダウン率をd、それぞれの確率をP、1−Pとする。
- 株式の現在の価格をSとする。これらは固定する。常識的には、d<1、u>1であるが、計算上はd<uで可。
(Sは前の例では1000円、u=2、d=1/2、P=1/2)
以上から、株式の0期の価格、1期及び2期の価格の確率分布が決まる。
- コールオプションの行使価格をKとし、固定する。(Kは前の例では800円)
以上から、コールオプションの2期の価格の確率分布が決まる。
安全証券の利率をrとし、固定する。(常識的には1<=rであるが計算上は任意。また、d<r<uとする。)
以上から、安全証券の0期、1期、2期の価格が決まる。
安全証券は現金に相当するもので、前述のように金の価値の変動を考えると、このように利率付の安全証券を想定する方が便利である。
従って例えば、株を買うとは安全証券を相手に渡して、株を受け取る ことを意味する。
解決すべきこと
コールオプションの場合は、2期目のみ、価格の確率分布が決まっている。
前の例では、
3200円 確率1/4
200円 確率1/2
0円 確率1/4
市場が成立するためには、コールオプションの現在(0期)の価格(株式のSに相当するもの)が決められなければならない。
ブラック・ショールズは、無裁定という条件のみから、価格を一意に定められることを示した。(1期目の価格の確率分布も自動的に定まる。)
かくて、この仮想市場には必勝法(必ず儲けて帰る)が存在しないことになる。
(注)この仮想市場は、現実の世界では信用取引をイメージすれば良い。
但し、信用取引では、株などの借り料が発生するが、この仮想市場では発生しない。
安全証券(つまり金)の時は自動的に利息(つまりイメージ的には借り料、預け料)が付くが、株やコールオプションの場合は、借り料、預け料は発生しない。
1000円分の株を借りて、それが500円分に下がった場合、500円分を返せばいい。
1500円分にあがったら、1500円分返さなければならないのだから、それで(マクロ的には)相殺されると考える。
|
|