トップページへ 水害シリーズ(その3)へ 水害シリーズ(その1)へ戻る はじめ通信目次へ
はじめ通信10−0808 堀船水害はなぜ再発したか(シリーズNO.2) ●7月5日夜の堀船2丁目の水害は、5年前の水害のすぐ下流側で発生し、前回を上回る450世帯を超える浸水被害と、日本たばこ倉庫や地元中小企業に多大な営業被害をもたらしました。 高速道路工事と共に、それにともなう石神井川の付け替え工事を行っている首都高速鰍ヘ、前回のような違法な手抜き工事による護岸の倒壊などが起きていないことで、「自然災害」を強調していますが、シリーズ1回目の記事でお知らせしたように、溢水箇所は70メートルにわたり下流よりも20センチ低い護岸だったこと、前回の水害を教訓にした最小限の対策があれば避けられた可能性が高いことなど、人災の色合いが強まってきました。 ●共産党区議団とともにそねはじめ前都議は、7月14日、19日、8月1日など連続して現地を詳しく調査。東京都建設局河川部や首都高速鰍フ担当者などに調査をもとに質問と要望をぶつけました。 <その際の質問と要請の文書は、ここからクリックしてください。> その際、@水害被害の原因究明と責任の所在を明らかにし、住民への説明を行うこと。 A被災住民・商店・中小企業などの生活・営業補償を行い、再建への支援策を講じること。 B溢水した護岸のかさ上げや補強を他の工事に優先させて、直ちに行う緊急策を実施すること。 C石神井川全体の危険箇所を総点検し、上流からの雨水を河川に流入させないための総合治水対策として、浸透機能、貯留施設の整備、下水道の合流式から分流式への改善などの対策を講じ、下流への負荷を軽減するよう要請しました。 ●都の建設局防災課長は、「今回溢水した護岸は、5・6メートル。50ミリ対応はされていたが、結果としてあの部分が弱かったんだろうなあと思っている。今後については首都高と、何ができるか考えたい」と答えました。 しかし首都高の担当者の答えは、都と微妙に食い違っていました。 ●首都高の担当課長は、「溢水した70メートルの護岸は、近くその前面に新しい5・8メートルの護岸を造ってから取り壊す予定だったため、かさ上げをしなかった」ということを明らかにしたのです。 「では同じ50ミリ対応なのに、なぜ5・8mと5・6mの高さの違いができるんですか」と聞くと、「以前は集中豪雨による河川の氾濫に備えて1時間50ミリの降雨に対応するよう計算して5・6mに整備されたが、20年ほど前に、溝田橋より下流は、集中豪雨による氾濫より、台風による高潮対策の5・8mほうが優先されることになり、我々首都高も、川の付け替え工事に合わせて高い護岸に変更することにしていた」というのです。(下の図参照) ●言われてみれば、確かに隅田川への出口付近から新柳橋の少し上流側までは、50年前の狩野川台風を想定して東京湾から隅田川に逆流してくる高潮への対策に必要な護岸の高さ5・8mへの再整備工事が、東京都によって「高潮防災対策工事」と銘打って行われていました。 それはもしかすると、その護岸のすぐ裏側に、区立第2セレモニーホールの建設予定地が決まったからかもしれません。 このように新しい護岸の基準が決まっても、すぐに全面補修されるわけではなく、何か公共施設などの整備に合わせてその部分の護岸を先に再整備するのが行政の通例です。 ●すると、今回の溢水部分は、すぐ上流で5年前水害を起こした護岸が水害後に基準6・5mのところを基準以上の6・8〜6・9mにかさ上げ対策が行なわれ(下の左図を参照)、しかも下流側は、都の高潮対策の基準で隅田川出口方面から5・8mに再整備されてきていた、そのはざまになってしまったことになります。 首都高の担当課長は、「今回は集中豪雨による災害ですから、その点では都の指導による50ミリ対応の5・6mの護岸は既に整備されており、前回のような倒壊もなかったので、想定外の災害ということになります」と、最後に言い分けしました。 ということは、今回の被害が高潮災害によるものだったら、対策の遅れを認めたということでしょうか。そんな説明を被害者が聞いたら何と思うでしょうか。 ●山崎たい子区議は思わず身を乗り出して、「50ミリ対応できているということで、大きな水害を2度も受けた住民は到底納得できないし、溢水は明らかにいちばん弱いまま残された護岸でおきたんですから、基準はどうであれ、安全性が脅かされたままで良いことにはなりません。水流実験でも、5年前の水害からも次にあぶないのがこの地点と予見しなければならなかったはずで、都と首都高の安全管理が甘かったのではないですか。」「一日も早く緊急対策を実施して、被害住民への生活営業支援を行なってほしい」と強く求めました。(右の写真) ●首都高速側もさすがに「都と相談して、より強い護岸の補強を考えたい」と約束しました。その直後、30日の住民説明会のときには、重量が1トンの大型土嚢を積み、護岸を40センチかさ上げする対策を行い、今後、鋼板による補強に切り替えていくとの説明がありました。しかしすぐ後ろの日本たばこ関係者からは、40センチでは足りないので、1mは必要との意見も出されました。 ●次回は、住民説明会でも「50ミリ対応はできていた」と繰り返す首都高や都の主張のほころびについて、レポートします。 |