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はじめ通信10−0810
堀船水害はなぜ再発したか(シリーズB)
「想定外」では納得できないと被害住民が怒りの発言

●7月30日、堀船3丁目の読売新聞印刷工場の体育館を借りて、北区が主催する堀船水害の住民説明会が行われ、首都高からは予想通り、およそ以下の主張が繰り返されました。
 @5年前は都の指導と異なる工事方法でかさ上げした護岸が壊れたことで被害を出し、申し訳ない。今回は板橋で113ミリ、北区で77ミリという想定を超える集中豪雨により、50ミリ対応ができていた護岸を越えて溢水がおきたもので、「想定外の水害」というしかない。
 A5年前の水害時の緊急対策も含めて、その後は全て都の指導を守って工事を進めており、今回の水害後にも都に確認された。
 B50ミリ以上の豪雨への対策は、国や都で検討してもらってからになる。ただし今回の溢水箇所は、大型土嚢を積んで40センチの緊急のかさ上げを行っている。新柳橋まではAP6メートルを確保し、より強固な護岸に切り替えていく。
 C(都から)被害者には行政からの利用できるサービスがあるので参考にしてほしい。

●住民の皆さんは、
 「前回水害の後、次に危ない箇所はわかっていたはずではないか」
 「首都高は、大型河川の改修工事の実績がないのになぜ都の全面委託を受けられたのか」
 「溝田橋の下流については水防計画が立てられていなかったのではないか」
 「溝田橋を大幅にかさ上げしたため、接続道路をすりつける工事でわがマンション1階は半地下状態になった。水害のリスクをわざわざ負わせて何の責任もないのか」<写真は裏側まで濁流が回り、壁やフェンスがなぎ倒されたマンション>

 「川の中の構造物が水流を邪魔して、溢水を起こしやすくしたのではないか」
 「自宅を片付けたいが、また大きな豪雨があるかも知れず片付けられない」
 「水害箇所の修理は、かさ上げ40センチでは不十分。倒れたフェンスの泥を見ると、護岸より70センチ高いところに泥がついていた。1mくらいのかさ上げが必要」

 など、人災の要因が大きいのに「想定外」で逃げようとする首都高と東京都に、様ざまな角度から怒りと不信をぶつけていました。
  これらの疑問に答えるよう、説明会は再度開かれることになりました。

 「水理実験の資料がほしい」という住民の要望に、首都高が「しかるべき情報公開の手続きをとって欲しい」と答えたため、「自分から出すのが筋ではないか」と住民が厳しく迫る場面もあり、次回までに水理実験結果も何らかの公開がされる見通しです。
<下の写真は、多数の構造物が川の中にある溝田橋工事現場>

●首都高は「5年前の事故以後は、都の指導を守ってきた」との主張をくりかえしますが、彼らが最大の拠り所にしている都の計画自身が、都市水害の実態からはるかに遅れています。

 @溝田橋の上流は、時間当たり50ミリの集中豪雨に耐えられる護岸の高さが基準。決めた当時「50ミリ降雨は数十年に一度」といわれましたが、石神井川流域ではほぼ毎年100ミリ規模の豪雨が起きています。
 A溝田橋の下流は、逆にこの数十年発生したためしのない東京湾からの高潮対策で護岸の高さが決められています。

 いずれの基準も、異常気象の影響で練馬・板橋など区部北西部に特定して発生する都市型集中豪雨や、それが地面に浸透せず河川に流れ込み、短時間で一気にあふれ出す都市型水害の実態と、あまりに程遠いものではないかと感じるのは、私だけではないと思います。

●都が5年前に首都高に指導した水防計画の見直しで、河川水害への首都高の対応を定めている水防計画が、今回溢水した箇所について、どこまで具体的に検討されていたかも、いまだに不明な点です。
 前回事故の最終報告で、水防対策区域を若干は拡大していますが、それは溝田橋の上流側にとどまっているように思えます。この点は、首都高に計画の実態を明らかにさせる必要があります。

●次回は、水理実験のデータの問題点をさぐってみます。

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