今日は、ここサンタ・ロサのステーションで、 PEB (生物教育プログラム)があるとのことで、同行させてもらうことになった。 PEBについては、Shinyaさんから聞いた話しや彼の手記、今回の参加をもとに以下説明。

 PEBは、地域社会とのコミュニケーションを図るという目的のため、ACGでは重要なプロジェクトの一つだそう (関連《ACGについて&サンタ・ロサ国立公園散策編》)。 周辺地域の小学4、5、6年生を対象に授業の一環として義務的に行っていて、1学年で年4回、3年間で計12回受けることになる。授業の一環ということで、先生も参加、時には保護者も参加され、諸経費はすべて公園持ちだそう。

 PEBで子供たちに身近な自然について教えていくことにより、小さい頃から自然への関心、自然保護への理解をさせる。そして、その子供たちの影響を受け、親たちにも自然というものに目を向けさせるという狙いがあるそう。 その結果、密猟、無駄な森林伐採などを未然に防ぐことが出来る。
そして、PEBを受けた子どもたちの一部が大人になりACGで働き定住することによって、公園からの一方的な指導だけでなく、彼らが地域社会に入り込んだことで受け入れられているという現状もある。

 PEBの一日は、担当講師がバスやバンで子供たちを迎えに行く。 その日のテーマで海岸のステーションだったり、山側のステーションだったりで、行き先が違う。 主に午前中は野外観察、午後が教室内での学習。そしてまた子供たちを送りに行くという流れ。

 内容は一方的に説明していくというよりは、子供たちにその日のテーマについて、知っている限りの名前や特徴を言わせたり、発言を促すことでまず興味を持たせる感じ。
野外観察では、特別なものを見るのではなく、身近な生き物を普段とは違った視点から見せ、その場でエピソードを交えながら紹介していく。またテーマに関連した絵を描かせたり、クイズ形式のプリントをやったりで遊び心満載。楽しく学べる。
グループ学習をする際は、グループごとに違うテーマを与え発表させる。例えば、棲みかや餌について、食物連鎖について、他の生物との共存関係について、人間と自然との関係についてなど、小学生相手とは思えないほど高度な一歩踏み込んだ内容だったりもするらしい。講師はヒントは与えても答えを言わず、子供たち自身によって導かせ、そして足りないところを補足する。
それにしても、担当講師たちの手作りのアイデアからは、彼らの自然に対する熱い思い、そしてその気持ちを子供たちにも共有してほしいというのが伝わってくる。

 何はともあれ、子供たちにとってのPEBとは、待ちに待った特別な日。 決して裕福ではない交通手段の乏しい農村、漁村の子供たちが、海へ山へとそれぞれ出かけることは滅多にない。 うれし楽しい遠足みたいなもの。

 今日はACG所有のバス1台で、海沿いの小さな村の学校から子供たちがやってきた(交通手段については《カリベでのPEB&善意編》に記載あり)。 前述のように、小学4、5、6年生対象なんだけど、この学校は一人の先生しかいないとのことで、 小学1年生から全員連れて来ていて、おまけに子連れ保護者も結構ついて来ていて大人数。親も便乗して遠足にやってきたって感じ?
当初の予定では講師一人で十分の人数だったのに、これだけの人数なら少なくとも講師二人以上は必要らしい。 今日の担当講師の女性(名前忘れた・・・)は、予定外の人数に「今日は一人で大変だわ」とこっそり私にぼやいていた・・・。

 今日のテーマは「木」。子供たちは森へ入る前、ガラガラヘビなどから身を守るため、両足に皮のプロテクターを装着。 私も着けてもいいよと言われたけど、道なき森を歩くわけでもないので他大人たち同様、特別装着しなかった。
野外授業 野外観察 野外観察
まず、ステーションから歩いて森の中の広場で野外授業。簡単に今日のテーマについて説明。右端の男性が学校の先生。 トレイルを歩きながらなんだけど・・・確かに大人が多い。 ここで、一人一人に思い思いの木を描かせる。根、幹、枝、葉っぱ、花、実とすべてを描いている子もいた。 右端の女性が担当講師。

 野外授業で簡単に説明を受けたあと、森に落ちている種を探しながら歩く。「どうやってこの種がここへやってきたのか」の質問に、子供たちから「風に乗って」、「鳥に運ばれて」などと意見が出てくる。 種の形がさまざまで、それにはそれぞれ種を少しでも遠くへ運ぼうと工夫されているものだと学び、その場で理解する。
そして木の絵を描かせ、木の根、幹・・・と一つ一つにどういう役割があるのかを子供たちに聞く。それぞれ子供たちなりに考えて答える。やりとりが面白い。

 歩きながら、木々についた昆虫やイモムシを見つけると、採って子供たちに触らせたり、豆知識みたいな話しをしたりしていた。そこで、講師の女性がイモムシを手にし、「ほら」ってな感じで私に差し出す。げげっ!触れって?
絶対ムリ!と言いたいところだけど、周りの子供たちの視線が・・・なぜか子供たちの手前、森の生き物が触れないなんて言えないという妙なプライドが芽生え、手のひらを出してしまう。そこにイモムシが乗せられる。 今世紀最大の出来事!私があのイモムシを触っているなんて・・・しかし、その間、手への神経が途絶えてマヒしていたかのように、イモムシの感触というのが全然なかった。
室内学習
室内学習模様。小学4、5、6年生対象なので、彼らを前の方に座らせ、低学年は後ろの方の席に座っての学習。高学年は真面目に聞いてメモを取っているのに、低学年はキョロキョロソワソワ。
アルファベットと数字表
蝶や蛾の羽の模様だけで作ったアルファベットと数字表

 途中、木の上で子育てしているミソサザイの仲間を観察したりしながら、もとの場所へ戻り、昼食休憩となる。 Shinyaさんと私は宿舎へ戻り、昼食を済ませて、再びPEBの室内学習見学へ向かう。

 講師が黒板に何やら書きながら話している・・・が、私は、壁にかけてあった蝶や蛾の羽の模様だけで作ったアルファベットと数字表が気になる。結局、自分のイニシャルを一つずつ撮ったりして見入っていたので、はっきり言って授業内容はよく覚えてない・・・。それにしても、蝶や蛾の羽の模様ってスゴイ!

 と、Shinyaさんがククッと笑いながらこそっと話しだす。PEBの室内学習ではどういうテーマであろうが、必ず”観光”について話すそう。観光事業が充実すれば、地域社会も潤うので、自然保護にも力を入れやすくなるからだろう。
確かに黒板には”turismo(観光)”の文字が・・・ACGが今から力を入れていかないといけない分野なのだろう。





 室内学習のあと、近くのカソーナ(Casona;古びた屋敷)見学へ向かう。この建物はコスタ・リカでは歴史的に重要な建造物。
1856年、ニカラグアまで侵出したアメリカのウィリアム・ウォーカーが、周辺諸国へ食指を伸ばそうと企み、 彼の傭兵部隊がニカラグアからコスタ・リカへ侵入してきたが、この地で撃退し、これ以上先へと足を踏み入れさせなかったとのこと。このカソーナがコスタ・リカの軍隊のバリケードの拠点(?)みたいなとこだったらしい。 この後、他国からのコスタ・リカ侵入はなかった。

 何年前だったかは忘れたけど、密猟者のACGに対する腹いせか?放火により一度焼失したらしい。 再び復元され、今では内部は博物館となっている。
カソーナ
復元と言われれば確かに、土台と一階の壁は新しい感じ。
カソーナ
歴史の勉強
ここで、講師はコスタ・リカの歴史について話し出した。一階は写真や説明のパネルが置いてあった。

カソーナ 中庭 台所
カソーナを裏手の展示室から見たところ。 裏手には中庭が広がっている。右の建物が展示室。 展示室と言っても、昔の日本の土間って感じ。
コーヒーミル トウモロコシ用ミル コスタ・リカの自然
昔のコーヒーミルだそう。 トウモロコシの粉を作るためのミルだそう。 コスタ・リカの自然を製作中とのこと。

 そう言えば、カソーナにいるとき、どこのTVクルーかわからないけど撮影に来ていた。みんなで手を振っているところを撮っていたので、何気に子供たちに混ざって映っていたかも。
中庭や周辺で子供たちが遊んでいる間、中庭から外へ出るところに小さなお土産屋さんがあったので、中を覗いてみる。 小物やTシャツ、帽子などいろいろあった。その中で、ここACGでしか買えないオリジナルTシャツがあり、花の蜜を吸うコウモリの絵がドンっと背中に描かれている絵柄がとても気に入り購入。 ここで買えば利益はACGに入るので、寄付も兼ねて他にも小物などいろいろ買った。

 本日のPEBは終了とのことで、みんなバスに乗り帰って行った。保護者たちが多かったせいか?バスの中はギュウギュウって感じだったけど・・・。
この学校の先生が、自分達の村は海沿いでとてもいいところだから、Shinyaさんと私にぜひ遊びに来てほしいと誘ってくれた。 滞在期間がもっとあれば、お言葉に甘えてお邪魔したかったなぁ。って、なんていう村なのかわからなかったけど・・・。


 
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