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『人民元切り上げ』について考える

最近、中国の通貨、『人民元の切り上げ問題』が取り立たされていますが、少し考えてみようと思います

我々、中国株投資家にとって、この問題について知識として知っておくことはもちろん、また、長期的にどのように対処していくか備えることも重要ですよね♪

それでは、勉強していきましょう♪


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元の歴史


  • 人民元は、約33%の切り下げを行った、1994年以来、『1ドル=8.27元』近辺にペッグされているが、中央銀行が公表する対ドルレートは、日々の動きがほとんどなく、事実上はほぼ固定相場となっている
    ペッグ制とは、通貨が米ドルに固定されている制度のことであり、一種の固定相場制である
    →外国資本にとっては、せっかく買った現地通貨建て資産が、通貨安によって目減りすることがなく安心感があり、外資の導入には有利である
    →しかし、その反面、通貨が自国経済ではなく、米国の経済事情により上下してしまうというデメリットがある

  • 中国は1970年代末に改革開放政策へ転じてから、年平均で10%近い高成長を達成してきたにもかかわらず、
    人民元が長期にわたって下落しているため、1人当たり国内総生産(GDP)はいまだ1000ドル前後にとどまっている
    →現在、人民元の対ドルレートは78年と比べて、名目ベースでは約80%、内外の物価変動を割り引いた実質ベースでは約70%安くなっている

  • 外貨準備の急増に象徴されているように、人民元は切り上げ圧力にさらされており、長期にわたった元安傾向が終えんしようとしている

  • ドルペッグからの離脱は、対外収支を含めた経済のファンダメンタルズが良好で、為替レートに若干の上昇圧力がかかっている時に行われるのが望ましいが、こうした前提条件は整いつつある

  • 中国の経済力はGDPや貿易規模から見て、すでに英国に匹敵するレベルに達しており、現在の元の切り上げを求める声に象徴されるように、主要工業国の産業調整やデフレ、貿易不均衡などの問題を議論するときに、もはやその存在を無視できなくなっている。
    G7参加国では、イタリアやカナダを凌いで、世界第6位に駆け上がった。

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人民元切り上げでどうなるか?


中国への直接投資にブレーキがかかる恐れがある

現在、中国の大きな武器として、豊富な安価な労働力があり、これを目当てに海外の企業が中国へ直接投資を行っている状況である
→元切り上げによって、中国の安価な労働力という魅力的な商品が消滅するか?
→これに対し、中国の安価な労働力は、まだまだ在庫が豊富にあり、農村部に数億人もの余剰労働力を抱えていると言われている
→中国の安価な労働力という商品は、需要に比べ、供給力がまだまだ強いので、元切り上げにより簡単に値上がりし、商品の魅力が失われるとは思わない(もちろん、切り上げの程度によるが)


中国からの輸出が低下する恐れ

元切り上げは、中国が得意とする産業に著しい損害を与えてしまう
→世界的な産業構成を見ると、
先進国では高技術力・研究開発・サービス業を基幹産業とした、高付加価値産業がメイン
発展途上国である中国では製造業のなかでも、労働集約的な低付加価値産業がメイン
→つまり、中国の産業は為替変動の影響を受けやすい貿易構成なのだ

また現在、中国の総輸出額に占める外資系企業の割合は、50%を超えている
→元切り上げによる中国生産のコスト増により、世界企業の中国生産によるメリットが減少し、生産拠点の見直しが行われ、輸出が減少する可能性がある
しかし、元高になれば材料が安く手に入るようになり、輸出へのマイナスの影響は相殺されるという意見もあります。

※国際分業において、資本力と技術力が先進国の武器だとしたら、中国のそれは安価な人件費である
中国が得意とする労働密集型産業の製品は付加価値が低く、高級品ではない
人民元切り上げ後に国際市場での価格が変化しなければ、輸出利益は下落し輸出メーカーは著しい影響を受ける

※外資に開かれているのが自慢の米国でさえ、総輸出額に占める外資系の割合は、約20%である
ちなみに、中国で最大の輸出額を誇る企業は、台湾の鴻海精密工業で、デルなどの生産を請け負っている会社である
中国を舞台にした海外委託生産抜きでは成り立たなくなっている


政府による外貨集中で外貨準備が増大し、通貨供給量(マネーサプライ)が膨らむ結果、バブルを生む恐れ

中国政府は、人民元の米ドルペッグ制を維持するために、米ドルを買い上げており(膨大な元売り・ドル買いの市場介入)、その結果、2003年6月末の外貨準備はやく3500億ドルまで膨れ上がった(GDPの3割近くに達している)
→この水準は、日本(6000億ドル)に次ぐ世界第2位・中国の輸入額のほぼ1年分に相当する水準である。

この結果、人民元が市場に大量に供給され、マネーサプライはM2(現金・要求支払い預金・定期貯金)ベースで前年比21%も増え、将来のインフレリスクを高めている
→外貨準備の急増が貨幣供給のコントロールを困難にし、不動産市場のバブルに拍車をかけている
→現に、上海では年間の不動産売買額が域内総生産の15%に達するなど、投機資金の流入で不動産バブルが膨らむ結果となっている

→ 中国人民銀行の統計によると、上半期の貸出額は昨年末比で2倍に達した、その資金は不動産や製造業に回り、不動産バブルや耐久消費財の過剰在庫を生んでいる
→中国政府は国有銀行の不良債権比率を融資総額の20%前半としているが、西側基準では40〜50%に上っているとの見方もある


失業問題が深刻化する恐れ

外資企業の投資は中国の労働力に雇用を創生する上で重要な役割を果たしており、元切り上げにより、中国への直接投資が減少した場合、失業率が上昇する恐れがある

※中国の失業率は約4.5%(実際には、これよりも高いとも言われています)


中国国内内需市場も減速?

失業率が上昇した場合、人件費の低下圧力がかかり、個人消費が冷え込み、拡大傾向にあった中国国内市場が冷え込む可能性がある


農村部と都市部の所得差が拡大

中国の農業は、東南アジアに比べて競争力が劣ることから、元切り上げの際は農産物の輸入が増加し、農村部の生活を脅かす可能性がある

※中国の所得格差:2割の預金者が預金金額全体の8割を占める


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長期的に見れば、元は必ず上昇? 〜『円ードル』の歴史で考える〜


おっさんは個人的に、長期的に見れば、ドル・円・ユーロ・元のうち、通貨として価値が上昇するのは『元』だと思います♪
国力が上がる国の通貨は価値が上がりますからね♪(中国の成長が必要条件ですが・・・)


それでは、『円ードル』の歴史で考えて見ましょう♪

  • プラザ合意
    1985年7月、過度な円安による日本製品輸出ラッシュへの対策として、
    先進国5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の大蔵大臣(米国は財務長官)と中央銀行総裁が相応の手段であるとし
    「プラザ合意」を提案、日本はこれに調印した
    →これにより、円の対ドル為替レートは30%程度の円高となり、その後、円は米ドルなどの主要通貨に対し上昇し続け、10年足らずで対ドルレートは4倍以上も上昇した

    ※円の為替相場は1971年には1ドル=360円
この『プラザ合意』が日本経済衰退の根元であったというのが一般的な認識である
→日本の輸出産業は価格競争力をほぼ失い、より安価な労働力を求め東南アジアに生産拠点を移さざるを得なくなった
→絶好調だった日本経済は国際競争力を失い、今だ出口の見えない不況に陥ったままである・・・

※実際、円が急騰しても日本の対外貿易は黒字を維持していた。そして、1980年代と1990年代の円高が、衰退し始めていた日本経済にデフレ圧力を加え、日本はゼロ金利時代を迎えることとなった。


通貨と国力


その国の通貨の強弱は、その国の国力を反映する
国力が強くなれば、通貨は強くなり、国力が弱くなれば、通貨も弱くなる
世界の人々にとって、名も知らないどこかの国の通貨より、強い国の通貨を持つ方が安心だからである
→これには英国がよい例であり、世界を制覇していた頃のポンドは、非常に強かったが、大英帝国の没落と共に、ポンドは弱くなっていったのである


何故アメリカは、元切り上げを望むのか 〜アメリカは自己中?〜


米国が人民元切り上げを迫る裏側には、人民元が事実上の対ドルペッグ制を採っているため、ドル安効果が十分に現われず、中国企業の輸出競争力ばかりが高まり、中国製品の輸出を勢いづけているとの考え方がある。2002年はドル安だったが、米国の貿易赤字は過去最高の4352億ドルを記録した(うち、対中貿易赤字は1031億ドル)
しかし、実際には米国の貿易赤字拡大の原因は、人民元の為替政策というよりも、米国内の産業構成、対外直接投資の拡大、個人消費の拡大、ドル安のJカーブ効果などさまざまな問題が作用した結果と言うべきである

人民元切り上げ要求は、米国が金融覇権主義を貫こうとしていることの一例と言える。
金融覇権は軍事覇権と経済覇権の延長線上にあるもので、米国は国際貨幣体系の主導的な立場を利用して、
アメリカの思うがままの政策を押し通すことで覇権利益を獲得し、金融覇権国の地位を維持している
→ドル安政策により対外債務を減少させると同時に輸出を刺激し、さらには各種経済危機を利用するなどのやり方で、他国から搾取している
→実際、ドルの大幅な切り下げの度に、アメリカの対外債務は3分の1ほど減少している
→今回の問題における米国の目的は、人民元切り上げにより中国製品の対米輸出を妨害することにある
→人民元切り上げ要求と対中ダンピング適用は、ブッシュ政権の新たな対中貿易政策と言えよう

※アメリカって、ズルイですね。。。


おっさんのまとめ


  • 中国の最大課題は、
    元の切り上げまでに、現在の安い労働力の提供をバックにした経済成長から一歩抜け出すこと!
    元の切り上げの時期はなるべく粘ること
    『世界的に安価な労働力』という優位性は、元の切り上げで消えてしまいますから・・・

  • 元が安いうちに、中国株をしこたま仕込んでおくのもいい作戦だが、元切り上げの幅・時期によっては中国の成長が鈍化する可能性もあることも考慮しておく(急激な人民元切り上げは、マイナス)
    →元切り上げによる、一時的な成長の鈍化も考慮し、バーゲンセール開催の可能性もあるので、余剰資金は残しておく
    →我々、中国株投資家としては、元切り上げは中国の内需市場の成熟を待ってから実施してほしいものです
    →切り上げ実施が遅れれば、円の価値があるうちにたくさん中国株を仕込めますし♪

    ※中国政府としても、早急な元切り上げは避けてくるでしょうし、ギリギリまで粘ってくるでしょう
    また、元切り上げの形式としても、いきなり変動性にするのではなく、固定幅を徐々に拡大し、レートの安定を保っていくことが予想されます

  • もちろんですが、中国株投資において、中国から見た輸出企業はなるべく避けること

※個人的に、最近の中国バッシングは少し根本的におかしいような気がします・・・
中国がいくら高成長を保っているからといっても、何も中国がズルイ事しているわけではなく、世界中の人がやりたがらない仕事を安い料金で請け負っているのですから、その結果、いくら儲けようが何も言われる筋合いはないのではないでしょうか???
さらに、アメリカなどは、中国との貿易赤字が近年増加していると文句を言っていますが、実際、中国からの輸出のほとんどは外国企業によるものなのです!


為替レートは各国の金利、貨幣供給量、国民所得、物価水準などの数々の要素と密接に関係しているため、通貨の切り上げ(或いは切り下げ)は市場が決定するものであり、政治に決定権はないのではないでしょうか?
(といっても、現在では、ペッグされているので市場は決定できませんが・・・)




以上のように、いろいろ調べた結果、何だか偉そうな意見を言ってしまいましたが、人民元の切り上げはとても大きな問題で、とても複雑な要因が絡んでいる為、どうなるか予想するのはとても難しいと思います・・・
どちらにしても、我々、中国株投資家にとって、人民元切り上げははとても重要な話なので、今後も長期的に見守っていきましょう♪
我々の思惑通り、為替の面でも利益が得られればいいですね♪



☆参考資料☆
為替の基礎をつかむならコチラ♪

・『ゼミナール国際経済入門
・『一ドル200円で日本経済の夜は明ける
・『為替がわかれば世界がわかる
・『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講義(上) 為替と金利はなぜ、いつ動くか
・『図解 「為替」のカラクリ


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