山下雅司さんが作っておられる小学校高学年向けの俳句入門のプリントもいよいよ3年目。
俳句を作るが日課になってきたおともだちもいるかもしれませんね。ここにもヒントがたくさんありますよ!(連載中です)
第1回〜第12回  第13回〜第24回もどうぞ読んでみてくださいね。




あすなろ俳句教室 (第25回) 2006.10月

16:秋の果物
 秋は実りの季節、スポーツの秋、食欲の秋です。今回は秋の果物をテーマにしました。果物の秋と言ってもよいのではないでしょうか。みかんは冬の季語ですが、もう店先に並んでいます。

 さて、秋の果物はどんなものがあるでしょうか。かき(柿)、ブドウ(葡萄)、なし(梨)、りんご(林檎)、くり(栗)などを思いだします。 そのなかで、とくに俳句には柿がよく取り上げられています。正岡子規は柿が大好物だったと言います。みなさんもよく知っている「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。子規は東大寺でこの作品の原型をものにされたようですが、秋の澄みきった空気にもまして、鐘の音が澄んで聞こえたのです。 俳句は柿を食べていることと鐘が鳴ったことを表し、あるがままの強さを感じます。一度聞くと忘れないリズムと響きをもった作品ですね。

 梨、葡萄は9月、栗、どんぐり(団栗)、柿、林檎は10月の季語です。季節の食べ物を味わってみてください。

 さて、次の俳句はだれの作品でしょうか。@〜Cから選んでみてください。
  俳句:「よろこべばしきりにおつるこのみかな」
  作者:@とみやすふうせいAなかむらくさたおBかわばたぼうしゃCむらかみきじょう

 原句には漢字が混じっています。知っている人は書いてみましょう。
  俳句:「           」
  作者:(           )

 ではさっそく10月の俳句を作ってみましょう。毎日作っている人も、もう一句。

  俳句:「           」
  作者:(           )

 次回は「ことばの配列」について勉強しましょう。

〈俳句クイズ〉
芭蕉の『奥の細道』は400字原稿用紙で何枚ぐらいでしょうか。
@ 35枚 A 55枚 B 75枚 C 95枚 D 115枚

答:
答はこちらからどうぞ!




あすなろ俳句教室 (第26回) 2006.11月

17:ことばの配列
 俳句は5.7.5の17音からできています。上、中、下のことばの配列で成り立ち、どこかに切れがあります。小学生のうちは、一句一章がよいと思います。しかし、ことばの配列を考えて、たとえば上5と下5を入れかえるとどうなるか考える場合もあります。運動会の作品が、みなさんから届きました。 季語を上5にもってきた人、下5にもってきた人もあり感心しました。感動の心が大切ですね。名作はそれを教えてくれます。次に掲げる俳句は鹿児島市出身の篠原鳳作(しのはらほうさく)先生の作品です。

「しんしんと肺碧(はいあお)きまで海のたび」

 みなさんは船に乗って、おいしい空気をいっぱい吸った経験があることでしょう。海の旅にはそのときの実感がこめられています。
(@しんしんとA肺碧きまでB海のたび)を(BA@)、(B@A)、(AB@)ではただの順序の入れかえに過ぎません。@Aと続くことで生きるわけです。主題は何かよく考えて、声に出してよんでみてください。ことばのつながりが自然に分かるはずです。下5に海の旅を置いて格調が高くなっています。


 さて、次の俳句はだれの作品でしょうか。@〜Cから選んでみてください。
  俳句:「しまはれてみかんにあじがでそめたる」
  作者::@たかはまきょしAほしのつばきBみやたせつこCみやたぶしゅん
※解答のヒント…しまは、さくらじまのこと。でそめたるは、(あじが)ではじめたということです。

 原句には漢字が混じっています。知っている人は書いてみましょう。
  俳句:「           」
  作者:(           )

 ではさっそく11月の俳句を作ってみましょう。毎日作っている人も、もう一句。

  俳句:「           」
  作者:(           )

 次回は「俳句と短歌」について勉強しましょう。

〈俳句クイズ〉
@芭蕉さん、A蕪村さん、B一茶さんのうちで一番多くの俳句を残したのは( )です。
答:
答はこちらからどうぞ!




あすなろ俳句教室 (第27回) 2006.12月

18:俳句と短歌
俳句は5.7.5、短歌は5.7.5.7.7からできています。中学生になると、短歌も習うことでしょう。では、どこに違いがあるのでしょうか。大きな違いがあります。それは、表現方法がちがうわけです。
次の作品は、鹿児島県の「砂の祭典」での砂像の竜を取り上げています。見比べてみてください。
短歌:えんてんの/はまによこたはる/ドラゴンの/うごくかとみゆ/すなのげいじゅつ
俳句:えんてんや/びどうだにせぬ/すなのりゅう

短歌は7.7と14音の分だけ作者の思いを余分に表現できるわけです。それも、流れるように上から下へ展開していく形です。それに対して俳句はある一瞬を切り取った形です。省略があり、想像の世界が広がります。掲載の俳句には「浜に横たわる」という言葉はありませんが、砂の竜で十分に連想できると思います
。 大事なことは短歌も俳句も作者の詩心、想いの深さですね。しっかりと対象をとらえましょう。


 さて、次の俳句はだれの作品でしょうか。@〜Cから選んでみてください。
  俳句:「だいぶつのふゆひはやまにうつりけり」
  作者:@ほしのたつこAのざわせつこBかつらのぶこCすぎたひさじょ
※解答のヒント…だいぶつさまの漢字わかりますか。

 原句には漢字が混じっています。知っている人は書いてみましょう。
  俳句:「           」
  作者:(           )

 ではさっそく12月の俳句を作ってみましょう。毎日作っている人も、もう一句。

  俳句:「           」
  作者:(           )

 次回は「正月行事」について勉強しましょう。

〈俳句クイズ〉
除夜のかねはいくつ?
答:
答はこちらからどうぞ!




あすなろ俳句教室 (第28回) 2007.1月

19:正月行事
 お正月行事には、一年の始まりで暮らしに深く結びつくものが多くあります。若水は元旦に汲む水のこと。だんだん、うすれていく正月の素朴な行事。除夜の鐘がなると新たな年です。川に初水を汲みに行きました。今は蛇口(じゃぐち)をひねると水が出てくる日常ですが、感謝の心を持たなければなりません。昔は水汲みが常だったわけです。
さて、「〇〇始め」という季語は多く、書き初め、けいこ始め、読み始め、などがすぐ思い出されます。山始めや漁始めは自然に感謝する人々のあらわれです。魚をとる漁師さんは海が仕事場です。出船の音が聞こえてきました。
また、健康であることを願う七草粥。七草は7日です。鬼火たきも田んぼなどで行うことが多く、正月行事の代表です。地域では違いがあります。この日で松の内も終わりです。
ふるさとには14日のもっちょうがつ、15日のどろどろげえ、16日のおわいせくなどあります。みなさんは知っていますか。集落の人に聞いて間違いがあれば、教えてください。


 さて、次の俳句はだれの作品でしょうか。@〜Cから選んでみてください。
  俳句:「うみよりのあめのすだれのふつかかな」
  作者::@やましたまさじAふくながこうじBのむらとしろうCはやししょう

※解答のヒント…有名でない人です。

 原句には漢字が混じっています。知っている人は書いてみましょう。
  俳句:「           」
  作者:(           )

 ではさっそく1月の俳句を作ってみましょう。毎日作っている人も、もう一句。

  俳句:「           」
  作者:(           )

 次回は「梅(うめ)の俳句」について勉強しましょう。


答はこちらからどうぞ!




あすなろ俳句教室 (第29回) 2007.2月

20:梅の俳句
 俳句の季語には、寒梅、白梅、紅梅という作品が多く見られます。ただ梅というと青梅など梅の実をさすため、梅の花として使います。
 梅はまた梅干しや梅酒など、食べものとしてなじみがあると思います。みなさんは毎日の梅干しを食べますか。収穫を目的に江戸時代から栽培されたと聞きます。 奈良時代初めに中国から薬用として伝わったウメはいまやなくてはならないものです。
 万葉時代の梅は白梅です。梅二月の季語があるように長い間咲きます。バラ科の落葉小高木で一年をかけて開花します。松尾芭蕉さんはこんな俳句を作りました。
 「梅が香にのっと日の出る山路かな」
 梅の香りも私たちには春を実感させます。どこの山路でしょうね。いつまでも芭蕉さんが生きています。
 夏には梅が実り、干し梅に。ここでも香りがしました。角川照子作品にこんな俳句があります。「干梅の香のうすうすと仏の間」。俳句は外でも家の中でも作れます。
 気品のある白梅。しだれ梅の紅色。もうすぐ満開を迎えます。


 さて、次の俳句はだれの作品でしょうか。@〜Cから選んでみてください。
  俳句:「はくばいのあとこうばいのみそらあり」
  作者:@みながわばんすいAうえだごせんごくBやまぐちせいそんCいいだりゅうた

※解答のヒント…みそらは深空。

 原句には漢字が混じっています。知っている人は書いてみましょう。
  俳句:「           」
  作者:(           )

 ではさっそく2月の俳句を作ってみましょう。毎日作っている人も、もう一句。

  俳句:「           」
  作者:(           )

 次回は「年間スケジュール」について。
 ※4月から新年度。俳句教室も新学期の始まりです。1年間がんばりましょう。


答はこちらからどうぞ!




あすなろ俳句教室 (第30回) 2007.3月

年間スケジュールについて
あすなろ俳句教室は年間計画を次のように設けます。新学年に新しい児童のみなさんとの出会いを大切にするためです。これまでにも増して、楽しい俳句教室ができればと考えています。

☆年間学習計画表

【1学期】

4月:俳句はあいさつ
俳句は自分の思いを5・7・5という形で表現するものです。毎日の感動を作品にします。自然に対するあいさつです。

5月:俳句のかたち
俳句のいろはを例句から勉強します。俳句の形と切字などの基本を学んで理解を深めます。

6月:俳句はきせつ
いまの季節を大事にして感謝します。季節の言葉、季語のはたらきがよく理解できます。四季折々の俳句を勉強します。

7月:俳句はリズム
俳句のリズムとは何でしょうか。なぜ大切でしょうか。例句から勉強します。17文字の俳句はここがポイントです。

8月:俳句をつくる
実際に外に出て俳句を作ります。実際に見たこと、思ったことを素直に作ります。多くの俳句を作ります。

9月:俳句をえらぶ
今度は俳句を選ぶことの勉強です。俳句を作ることにもまして選ぶことは大切です。これで前半の終わりです。


【2学期】

後半は基本をふまえた楽しいテーマがいっぱいです。俳句がさらに楽しくなります。テーマはその都度、決めることにします。

10月:テーマT
11月:テーマU
12月:テーマV
 1月:テーマW
 2月:テーマX
 3月:テーマY


俳句はやさしい心を育みます。相手を傷つける言葉は使いません。10人には10人の、100人には100人のちがう俳句が生まれます。感動する心を持ち続けることですね。楽しい俳句教室にしましょう。


祝・ご卒業

6年生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。中学生になっても俳句を続けてください。さらなる飛躍に期待しています。

新年度はこちらからどうぞ