.サバイバルアスペクツという視点 | 返信 |
皐月一九郎 05/11水06:32 #r172 お気持ちはわかりますが、サバイバルアスペクツには大きな問題点があります。おっしゃるように、NTSBの報告書には必ずといっていいほどこの項目が付け 加えられていますが、残念ながら虚しさだけが感じられます。こういうと反発 される方が多いと思いますが、説得には長い説明が必要でしょう。そこで、卑 近な一例をあげさせていただきますと、航空機のディッチングという緊急操作 があります。これは昔、プロペラ機が隆盛であった時代に海上に不時着するこ とを想定して考案されたものですが、今日のジェット機では海上に不時着する ことは至難の技といえます。皮肉を込めていわれていることですが、これまで にジェット機で成功した例は世界でもJALの2件(サンフランシスコ、羽田) のみであり、いずれも意図的に行わなかったからうまくいったと揶揄されてい ます。にもかかわらず、一度設定したサバイバル訓練はなくすことができず、 世界の航空会社は訓練と装備に莫大な費用をかけつずけています。つまり、 サバイバルアスペクツの大きな問題というのは、言うは易いのですが実行に は莫大な費用がかかり、効果が認められなくともなくせなくなるということで す。JR西日本の事故で提案されている対策もすべて通常の脱線を想定されてい ますが、いずれ調査の過程で明らかになると思いますが、今回の事故はこれま での鉄道の脱線とは全く概念の異なるものです。従って、ATSや(ATCも)脱線 防止の線路などは全く機能しません。1950年代に考案された空気バネの是非が 見直されることになるでしょう。サバイバルアスペクツの前に我々が考えなけ ればならないことはエラートレランスという概念です。これにも長い説明を要 しますが、エラーをしても大事に至らせないようにする方策です。これについ てはNTSBもまだ具体的に言及していません。今回の事故でいえば、運転手が 車輌の異常を感じた後になぜ速度をあげたのかを分析して防止策を考えること です。マスコミは速度をあげたのはダイヤの遅れによるあせりからと勝手に 決めつけていますが、そんなに単純なことではありません。結論を急ぎますと、 サバイバルアスペクツを論じるにも、本当の専門家による分析が必要という ことになります。不謹慎な言い方になるかも知れませんが、究極の救急医療の 現場では、救命することが被害者の方の本当の幸せにつながるのだろうかと 医師として疑問をもたれることがあるのではないでしょうか。ここは、事故 そのものを防ぐために、エラートレランスにもっと力を注ぐ必要があると 思います。これが本当のヒューマンファクターの考え方です。 |