これからの例会              小林多喜二の母の生涯。佐々木愛 女優生活60年記念例会

 第451回9月例会 劇団文化座公演 「母」

原作:三浦綾子
脚本:杉浦久幸
演出:鵜山 仁
出演:佐々木愛、藤原章寛、他





あらすじ

「ほれっ!多喜二!もう一度立って見せねか!みんなのために、もう一度立って見せねか!」

 1933年2月20日。小説家小林多喜二が特高警察によって虐殺された。拷問跡の残る遺体に、多喜二の母セキは寄り添い、ずっと頬を撫でさすっていた。

 貧しさの中、学校へも通えず、13歳で結婚、秋田から小樽へ移住し、懸命に働き六人の子供を育てたセキ。

そんな母の姿を見ながら、小林多喜二は小説を書いた。貧しく虐げられた人たちのことを思い、書き続けた晩年、セキは息子多喜二を語る機会を得る。母さんを人力車に乗せて、この(小樽の)通りを走らせてやりたいと願った。多喜二青年の夢と愛の軌跡ーー。

無学の母は、問われるままに語り始める……。


解説

 「蟹工船」などで知られるプロレタリア作家であり、特高警察による拷問により虐殺された小林多喜二。その母の生涯を描いた三浦綾子の小説を舞台化。原作の文体は温もりのある秋田弁も相俟って、貧困の中セキの一途に息子を想う「無償の愛」が読むものの心を打ちます。

 舞台は自ら深く傷つきながらも家族を、そして他人を思いやり、思想やイデオロギーを超えて息子に寄り添う母セキ(佐々木愛)の姿が描かれます。

もともと小林家は愛情あふれる明るい家庭で、秋田弁を操り底抜けに明るいセキを演じることで、より深い悲しみが表出サれるでしょう。

人が人を思いやり共生していく、、という小林多喜二が願った理想を、母の愛情という視点を通して作品を仕上げます。

そして何よりも、佐々木愛のあの笑顔と高笑いが、観る者に生きる勇気を与えるでしょう