きみがそばにいない日 3



なーんか、落ち着かないなあ・・・。

お茶を入れてきますねと言われて、1人大きなお部屋の真ん中にあるソファに坐らされたのはいいですが。
あのねー。蛮ちゃん。
マドカちゃんちは、本当にお金持ちのお屋敷って感じだよ。
高い天井にはシャンデリアっていうのかな。きらきらした電灯があって、壁にはクレイマンさんが欲しがりそうな立派で大きな絵と、なんだか高そうなお皿とかが飾ってあって。
足下の絨毯もソファもふかふかです。
なんか、本当にこんなとこに1人で坐らされていると、どうしていいかわかんない気分になります。
マドカちゃん、オレ、もう帰りたいよー。

と、そう思った時。扉がガチャリと開かれました。

「よお、銀次じゃねえか」
「士度!」
「マドカにお前が来てるって聞いて・・。どうしたんだ? あ、蛇ヤローは一緒じゃねえのか?」
思わず驚いてソファから立ち上がったオレに、同じく驚いた顔の士度がそれでもちょっと嬉しそうにオレの前に来ると、テーブルを挟んだ向かい側のソファにどっかと腰掛けました。
オレも、とりあえず坐ります。
「買い物途中のマドカちゃんに偶然会って荷物持って上げたら、なんだかご招待受けちゃって」
「そっか。そりゃマドカが世話になったな」
「いや、本当に、そんないうほどでもないんだけど」
言ってるそばから当のマドカちゃんが、ワゴンみたいのを押してきて、ケーキとかお茶とかを運んできてくれました。
カップにお茶が注がれると、なんだかとてもいい匂いがします。
わあ、ケーキだー!
蛮ちゃん、ケーキだよ!
って、そんなことを言ってると、いつもならここで、”ケーキごときではしゃいでんじゃねえ!”とかいうツッコミとともに蛮ちゃんのゲンコが飛んでくるはずなのですが。
なんかそれがないと、気抜けしちゃうというか淋しいというか・・。
「銀次?」
「え。ああ」
「あ、ケーキお嫌いですか?」
「いや、そんなとんでもないよ、マドカちゃん! オレ、ケーキ大好き!」
「よかったー」
それにしても、なんだかものすごい高そうな・・。
オレ、あの苺ののっかってるヤツしか食べたことないけど。
というか、そっちのが好きなんだけど。
知らないフルーツがいろいろのっかってます。蛮ちゃん。
マドカちゃんは、お茶とケーキだけ置くと、ごゆっくりしていってくださいなと言って部屋を出ていきました。
なんか、オレと士度と二人で話したいだろうって、気をつかってくれたみたいです。

・・・でも。
なんだか、士度とこうやって面と向かってあらたまって、しかもケーキとお茶挟んで話するなんて初めてで。
・・・何、しゃべったらいいんだろう。
妙な雰囲気です。

「えーと・・」
「で?」
「え?」
「蛇ヤローは?」
「あ・・。ああ。蛮ちゃん仕事で。ちょっとK市まで行ってて」
「お前に留守番させてか?」
「んーと。依頼人さんのご夫婦が奪還した品物と一緒にのってくことになっちゃったから。オレまでスバルじゃ狭くて乗れないでしょ。だから」
「・・・そっか・・」
「うん・・」

えーと。

お互い、カップを口に運びつつ、どうも黙ってしまうんだよね。
うーん。何話せばいいかな。
そっか、いつもは蛮ちゃんがいっしょだから、すぐ蛮ちゃんと士度の噛み付き合いみたいになっちゃって、それでオレが間に入るっていうか、そんな感じだから。
ゆっくり話に、っていう雰囲気にはならなかったんだ。
でもオレ、そういう蛮ちゃんと士度の掛け合いみたいのって、ちょっといいなって思ってて。
テンポよくお互いの思っていることポンポン言い合えて、それでいて、意外にもウマが合うっていうか、仲がいいんだよね、この二人。
まあ、見た目はそうは見えないんだけど。
オレと蛮ちゃんだったらそうはならないから、ちょっとヤキモチっていうか、羨ましいなあって。
蛮ちゃんも、本当はそういう相手とコンビ組んだ方が楽しいのかなあって。
実は思ったこともあった。
でも、オレがそう蛮ちゃんに白状した時、蛮ちゃん言ってくれたよね?


”あ゛? なーに言ってやがんだ? あんなのと四六時中顔付き合わせててみろ。きっとお互い、くたくたになっちまうぜ。たーまに会うから面白れぇんだよ”
”そういうもん?”
”おうよ”
”じゃあさ、えっと・・”
”ったく。妙に最近オレと猿マワシ見比べちゃあ、ため息ついてやがるなと思ったらよ、んなこと考えてやがったのか”
”あ・・・。気づいてた?”
”当然だろが!”
”そっかぁ。何でもわかっちゃうね、蛮ちゃんにはー”
”・・・オメーでいいんだよ”
”え?”
”二度も言わせんな!”
”・・・・・・あ、あ・・・・それって。それってさ。蛮ちゃん。・・・・・”で”・・・なの? ねえ”
”あ゛あ゛!?”
”おまえで?”
”・・・・・・ったく・・・・・・。わーったよ! ”が”だよ、”が”!!”
”本当に・・!? ・・・わーいv 蛮ちゃんにおまえがいいって言われちゃったー!”
”言ってねえ! が、つっただけだろーが!!”
”もーぉ、照れちゃって”
”テメエなあ”


そんなやりとりを思い出して、カップを両手に抱えたまま、オレ、どうも勝手に顔が笑っていたみたいです。
「あ?」
「えっ?」
「何、にやにやしてるんだよ」
「えっと、別に」
「ヘビ野郎の事、考えてやがったんじゃねーだろうな。まさか」
その、まさかです。
士度、スルドイ。
でも一応否定なのです。
怒られそうな気がしたから。
「そ、そういうわけじゃないけど」
「・・・そうか」
「うん」


・・・・・・しーん。


「なんかさ」
「え?」
「お見合いしてるみたいだよね? オレたち」
「ブッ! ばばばバカ言ってんじゃねえ!」
あれ?
なんでお茶吹き出して真っ赤になってんの、士度?
オレ、なんか変なこと言った?
「ったくよー。お前は!」
「えっ、えと? ごめん」
そんなに驚かせちゃったかな。
げほげほむせてるのをきょとんとして見ていたら、どうにか落ち着いたらしい士度がやれやれ・・といった顔でオレに向き直って言った。
「変わってねーな。お前は。今も昔も」
「そう・・かな?」
オレ、以前はこういうキャラクターじゃなかった気がすんだけど、我ながら。
「本質的なとこは、きっと変わってねぇんだろうな。オレたちがそれに気づいてやれなかっただけで・・」
え?
本質的な・・って、それどういうことだろう。
難しいことは、オレ、わかんない。
「悪かったと思ってる」
「え? ちょ、ちょっとどうして、どういうコトだよ。士度」
いきなり謝られて困惑するオレを見ながら、カップをお皿の上に戻して、士度は自分の膝の上で両手を組んでそれを見ながら静かに言った。
「お前にずっと無理させていたんだと・・。無限城を出て、阿久津の邸でお前をしばらくぶりに見て、そう思った。いや、そん時はすぐには思えなかったけどな。美堂みてーな野郎とつるんで楽しそうにしてやがるお前に、オレたちを捨てて行って、どうしてこんなヤツと笑ってやがんだと腹も立ったしよ」
「士度・・」
「お前が居なくなってから、無限城は、特にロウアータウンは荒れに荒れて。鎮圧するのにオレたちは、昼夜問わず奔走した。花月は昔の氷みてぇに冷たい花月に戻っちまったし、マクベスはブツブツ言いながら日がなパソコンの前から動かなくなった。 まあ後になってみりゃあ、あれはヤツなりにロウアータウンを守る算段をしていたんだとわかったが、その目は虚ろで死んだ魚みてぇに生気がなくて。頼みの来栖も、あっさりと行方をくらませちまい、オレは・・・。一時もう誰も信じられなくなっていた・・ 絶対の信頼を置いていた雷帝さえも、オレたちを裏切り出て行った後だったしな」
「・・! 士度、オレは・・・!」
思わず立ち上がって声を上げようとしたオレに、士度は静かにそれを手で制した。
まあ、聞けよと言われて。
仕方なく、もう一度身体を戻したけれど。
とても、とても動揺してるのが自分でわかった。指先が震えてる。
初めて聞く士度からの辛辣な言葉に、思わずカップを持つ手に指先の震えが伝わってきて、それを落として割ってしまわないうちにと、慌ててオレはソーサーに戻した。
蛮ちゃん、オレは。
思えば、どうして誰も自分を責めないんだろうと、ずっとずっと苦しかった。
ずっと、オレ苦しかったんだよ、蛮ちゃん。
たぶん、蛮ちゃんは知ってたと思うけど。
あんな風に出てきて、みんなを裏切ったみたいにしてあそこを出てきたのに、誰もそのことに関して、オレには何も言わなかったから。
許されるとは思ってなかったけど、奪還屋をやってることで、またみんなとチームを組んで仲間のようにやっていけることの方が嬉しかったから。
もうそれは言わないでおこうと。そうも思っていたんだ。
それが凄く身勝手なことだって、充分すぎるほど知ってはいたけれど。
「士度、オレは・・」
顔を歪ませて言いつのろうとしたオレに、ゆっくりと顔を上げて士度がふいに微笑んだ。
「オメーにもし外で会うことがあったら、一言恨みごとぐれぇ言ってやらねえと気がすまねえ思いだった。・・・・オレたちを捨てて、美堂みてえな野郎を追いかけていきやがって、ってな。・・・あ、これは言ったっけか」
確かに、阿久津の一件の後、士度はそう言って。
でも、許すと、そう言ってくれた。
カヅッちゃん共々。
オレや花月が許しても、あとの二人は黙っちゃいない・・・・とも。
マクベスはその後いろいろあったけれど、わかってくれて。
柾は・・・。今もどうしているかわからないけれど。
いろいろな想いがいっぺんに頭の中で溢れてて、ぐるぐる渦巻いてて、うまく今の自分の気持ちが言葉にできない。
できそうもない。
でも、蛮ちゃん。
オレ、士度だからなおのこと、正直に言いたいって、そう思った。
「オレ・・・。外に出てからも、ずっと・・・。みんなのこと、忘れたことなかったよ・・。勝手だってこともわかってたし、裏切ったと思われてもしようがないって、そう思ってた。でもあの時は・・・。もう他に何も考えられなくて」
瞳を伏せる。
あの時の気持ちを、じっと思い出した。
本当は、わざわざ思い出さなくても、いつも胸にあるんだけど。
「・・・・・・美堂のこと以外・・・か?」
「・・・・うん」
静かに訊かれた問いに、静かに答える。
そう。あの時は、もうとにかく必死で。
オレは無限城にいない方がいいんじゃないかとか、常々そんな風に思いつめていたこともあったけれど。
それすら、自分でも、もう会いたい言い訳にしか思えなくて。
それ以上に、蛮ちゃんに、どうしてももう一度会いたくて。
会ってどうするとか、出ていった後のロウアータウンのこととか、もう考えられないくらいだったんだ。
心と身体全部が、蛮ちゃんを求めてた。
蛮ちゃん以上に大事なことなんて、あの時のオレにとっては他になかったから。
もちろん、それは今でも変わらないけれど。
「士度。オレは・・・ごめん。本当に・・。どう謝ったらいいかわからないけれど、でも、オレ・・」
様々な想いに苦しくなって、でもあやまりたくて、でもそれでもわかってほしくて。
それをどう言ったらいいからわからずに途方に暮れたみたいにぼんやり自分の手を眺め、言葉を切ったまま唇を噛み締めるオレをじっと見・・・。
士度は唐突に”はー・・・っ”と緊張の抜けるようなため息を落として、どっかりとソファの背にもたれ掛かった。

「あーあ・・ だから駄目だってんだ。オレはー」

「士度?」
「お前を今更責めてえワケじゃねえんだって! だからー、悪かったって言ったろ、さっき!」
オレは、士度が言いたいことがよくわかんなくて、なんか呆然と士度を見てしまった。
そのオレの目を見てぎょっとしたような顔をしていたから、きっとオレは知らないうちに涙ぐんでいたんだと思う。
「だから、そうじゃなくて、士度。悪かったのはオレの方で・・」
言いかけた言葉を、手と声で士度が遮った。
「ちがうんだってよ! 悪かったのは、オレの方で、オレはそれをオメーにずっと謝りたかったんだ! お前に謝らせたかったわけじゃねえ! ああもう、どーしてオレは・・」
こんなだからマドカにも気の利いたことの一つも・・・・となにか違うことをブツブツと呟いて、頭を手でがりがり派手にかく士度を不思議そうにオレは見つめた。
「そうじゃねえんだ、銀次。お前に置いてかれたことでオレや花月も苦しんだけど、でもそれは間違いだったって、美堂といるお前を見てそう思った。そんなつもりじゃなかったにしても結果的には、ずっとオレたちは、お前をあの下層階の支配者として君臨させ、『雷帝』としての生き方にがんじがらめに縛り付けていたんだと、そうわかったんだ」
「そ、それは・・」
「お前だって、つらかったんだろ?」
諭すように言われて、ぐっと言葉につまる。
自分の手を、電撃を放つ両手の中を見て、ゆっくりと答えた。
「つらかったわけじゃない・・・。あのころは、自分がつらいとかそういうことさえ、よくわからなかった。こうするしかないんだと、戦うしかないんだと、そう思っていたから。・・・蛮ちゃんが、そうじゃないだろうと言ってくれるまでは・・」
「おまえが出ていった後、オレたちは、どうしておまえが出ていったのだろうとそればかり考えていた。そうしなければならない”何か”があったとか、そんなことは考えもせずに。・・お前が無限城に奪還の仕事で戻った後で十兵衛が言ってたよ。”雷帝が選ぶ道に一度として間違いはなかった。どうしてそれを疑ってしまったんだろう”ってな」
「そんなことはない―。オレだって、間違ったり迷ったり、ずっと、そうやって・・」
「銀次。だがな・・。もしも、お前がまだ昔のまま無限城に雷帝として在ったとしたら― オレは、マドカに巡り会うこともなく、マクベスは己の生きている意味に気づくこともな、花月も十兵衛や俊樹とあんな風に分かり合えることはなく― 今でも毎日毎日・・。あの中で戦いに明け暮れていたんだ・・」
「・・・・・!」
「オマエが1人荷を背負って、あそこを出るという行動に出なければずっと―。たぶん永久的にずっと、な・・。オレたちは戦い続けていたんだろう」
「士度・・!」
「お前がその流れを変えてくれたんだ。そして、オレもマドカと出会って、お前の気持ちがわかるようになった。どうしても何を犠牲にしても、誰かのそばにいたいとか、そばにいて守りてえとか、そういうのがな」
「うん・・」
「だから、感謝している・・。銀次。それが言いたかったんだ。オレは―」
士度がやさしく言ってくれた言葉は、心に染み込むようにオレの中に入ってきて、オレの心の中でどうしても消えることがなかった小さな氷のカタマリでできたしこりを、そっと溶かしてくれるようだった。
ぎゅっと拳を握りしめて、その言葉に応える。
「士度・・。オレこそ。・・そんな風に言ってもらえる時が来るとは思わなかった・・。ありがとう、士度・・」
声が震えた。
蛮ちゃん・・。
蛮ちゃん。
オレ、いいのかな。
そんな風に言ってもらっていいのかな。
オレは、ただ、自分の我が儘を通しただけなのに。
それを許してもらって、いいんだろうか・・。

”いーんだよ! 人は所詮我が儘で自分勝手なイキモノなんだ。通る我が儘は、通しゃいい。通らねえ時は、なにかそれなりのワケがあんだろ。そん時ゃそん時で、また考えりゃいいんだ。だいたい、ドッチかっていうとよ。テメーは人に合わせすぎなんだよ。もっと自分勝手で我が儘でいーんだ。なあ?”

蛮ちゃんみたいに?
考えたら途端に、一瞬して身体の緊張が解れた。
そういえば、そんな風に以前に言ってもらったこともあったっけ。


「美堂が、好きかよ」
そんな思いを読まれたのか、ふいに問いかける士度の言葉に、思わずバカ正直にめいっぱい素直に答えてしまった。
「え・・? うん!!」
あまりに力いっぱい答えたせいか、士度が片手で頭を抱えて思い切り嫌そうな顔をした。
「ったく、嬉しそうな顔してよー。どこがいいんだか、あーんなヘビ野郎の」
からかいも含んだ物言いに、けど、それに水をさされることなく、にっこりと笑ってオレが答える。
そういうことだけは、もう自信たっぷりに。
「全部いいよ、オレは」
「あー・・。そーかよ」
「うん!」
「けどな、銀次」
いきなり神妙な顔になって、溜息混じりに、ちょっと言いにくそうに士度が言った。
「ん?」
「いまだにあの野郎の黒い噂はゴマンと聞くぜ。根も葉もねえってことはないだろ。あんまり無防備に・・」
「いいんだ」
「いいって・・」
そういうことは、ずっと言われてきたから。
そして、それが根も葉もないことばかりじゃないって、オレはもう知っている。
でも。
それは、もう、全部過去のことだ―。
「オレは、蛮ちゃんが好きなんだ。あんな人は、他にはいないし―。どうして好きだとかいいのかとか、そういう理由とか理屈みたいなことはオレにはむずかしくてよくわかんないけど・・・。もっとこう、感情じゃなくて本能的なところで好きっていうか・・。過去のことも、今は信じるとか信じたいとかそういうコトじゃなくて。いろいろ傷つけて傷ついてきた過去があるからこそ、今の蛮ちゃんがいると思うし、オレに出会ってくれたと思うから。だから蛮ちゃんのそういうとこも、オレは全部好きになれると思う。過去も、受けとめていける。一緒だったらもう何もかも、他のことは全部容易くクリアしていけそうな、そんな気がしてるんだ。そして、そんな風に思えるオレ自身も、自分で好きだと思えるから―」
「銀次・・」
「士度はきっとそうは思わないだろうけど。蛮ちゃんは、口は悪いけど、本当はとても優しいんだ。きっと基本的には誰に対してでも。そんな素振りは見せないけどね。でもそういうとこは、誰もワカらなくても、オレが知ってるからいい」
「そうか・・」
「うん・・」
「幸せそうだな・・」
なんだか士度の目が、急にお兄さんとか、そういう風に細められて。
どうしてだかちょっと淋しそうに、でも、あたたかく微笑んで、オレを見てそう言ってくれた。


オレ、そう言われて、嬉しかったよ。
すごく、すごく嬉しかったよ。
蛮ちゃん、あのね。
オレはね、本当に蛮ちゃんと出会って、蛮ちゃんと一緒で幸せなんです。
出会えて本当によかったと。
今日、あらためて思った。

士度、ありがとう。気づかせてくれて。
それから、士度と話させてくれて、マドカちゃんもありがとう。

「うん! オレ、すっごく幸せだよ。たぶん今、マドカちゃんのそばで士度がすごく幸せなのと同じようにね!」
「な・・・! ば、ばっかヤロー・・!!」

お返しに満面の笑みを浮かべてそう言ったら、士度は照れて真っ赤になっちゃった。
けど、それを見て、オレはますます幸せな気分になったよ。
ねえ、蛮ちゃん。
人を好きになるって、いいよね。
蛮ちゃんも、オレのこと、そんな風に思ってくれてるといいんだけどな―。


なんだか早く会いたくなっちゃった。
会いたいよ、蛮ちゃん。

早く、早く帰ってきてよ。
ねえ。お願いだからさ――






蛮ちゃん。
オレは今、猛烈に、ホームシックならぬ蛮ちゃんシックです――













※注意。
士度の言っている「美堂が好きかよ」の”好き”と、銀次が言う”好き”の意味合いは、実は天と地ほどの違いがあるのですが、知らない方がシアワセなので、敢えて士度には何も気付かせないようにと配慮しております。(笑)
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