悲運の皇子と若き天才の死
目次 主な登場人物
第1章 一枚の絵
第2章 有馬皇子の謎を追う
第3章 藤白峠の死
第4章 答えを求めて
第5章 座談会
第6章 日記
第7章 日記の続き
第8章 三人死んだ

解説 山前譲(推理小説研究家)
ISBN878-4-06-277187-0

2012/2/15第1刷
講談社文庫 に1-105
552円(税引)
308ページ
出版社「時代」編集・長谷見明
明の祖父・長谷見伸幸
「時代」編集長、編集仲間・岡田由美
S大・畠山教授、作家・渡辺浩
明の曽祖父・長谷見裕太郎
大河内薫、父・大河内勝男

歴史上の人物
有馬皇子、中大兄皇子、斉明天皇、蘇我赤兄
東条英機、小磯首相

捜査陣
十津川警部・亀井刑事・西本刑事
雑誌編集者・長谷見明は、実家の屋根裏で、祖父・伸幸の遺した絵を発見。
そこには、飛鳥時代、罠にかけられ、十九歳の若さで死んだ有間皇子が描かれていた。
そして若き天才画家と呼ばれていた伸幸も、太平洋戦争末期、理不尽な召集を受け、二十五歳で戦死。謎を探る明だったが…。
十津川警部、驚愕の結末。 (表紙裏文参照)

本作品は、講談社創業百周年記念書き下ろし作品として、2009年3月にノベルズとして、刊行されました。
この作品も、あまり十津川警部の登場シーンはありません。なもので、 「雪国」殺人事件の次に、この作品を読んだので、若干、消化不良ぎみです(笑)。

作品は、いきなり事件が発生する訳でなく、主役の長谷見明が、祖父・長谷見伸幸が書いた絵の発見と、 曽祖父・長谷見裕太郎がやっていた料亭「さくら」についての座談会への参加を編集長に頼まれるというシーンから始まります。
(明の)祖父は、足の身体障害があったのにも関わらず、沖縄への戦争に召集され戦死した天才画家。なぜ、召集されたのか?
又、その祖父が召集前に描いた1枚の「有馬皇子(ありまのみこ)」を描いた作品。なぜ、うつろな表情をした姿が書かれているのか?
そして、中盤に起きる殺人事件。なぜ、座談会に参加するはずだったノンフィクション作家が殺されたのか?
大化改新が起きる前の時代と、太平洋戦争末期と、現在と、三つの時代を跨いだ作品となっています。

少し書いてある内容を整理しながら読まないと、訳がわからなくなってしまいそうでしたが、戦時中の料亭「さくら」と登場する人物の 関係は、曽祖父が書いた日記の登場で、わかりやすくなった気がします。
「十津川警部 姫路・千姫殺人事件」や、 「十津川警部 五稜郭殺人事件」「十津川警部 湖北の幻想」など、「歴史」をテーマとした中では、異色の作品かもしれません。

評価
☆☆☆ 星3つ(星5つで満点)   3つの死の接点は?