【廃墟マニヤ File043】
S静峡(山梨県)
(その1)
私はまったく知らなかったのですが、ここは心霊系(というか肝試し系)の人の間ではちょっとした有名物件だったようです。レストハウスに残っていた物のせいもあり、ここのオーナーである(あった?)「おやっさん」という謎の人物について様々な噂がネット上を駆けめぐっていました。
実は私も昔、同一人物だという確証はないのですが、人づてにこの「おやっさん」の話を聞いたことがあります。といっても、幽霊やジェイソンのような存在ではなく、ちょっと頑固な山のオヤジという印象でしたが……。
少々思い出話が長いので、興味がない方は下をとばして先に進んでください。
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1980年頃でしょうか、オフロードバイクによる林道ツーリングというのがちょっとしたブームになりました(おそらくホンダのXL、ヤマハのXTあたりが発売されたのがきっかけだったような気がします)。そのため「林道ガイド」なる本が何冊か発売されたのですが、その中の一冊でここが紹介されていました。「林道を上っていくと終点につぶれた別荘地があり、縦横に管理道路が残されている」という記述に非常に惹かれるものを感じ、何度か訪れたのですが、いつもゲートで塞がれていて入ることができませんでした。ところが当時の仲間で中に入った者がおり、彼らの話によると「おっさんがいて見つかると怒られるので、行くのはやめたほうがいい」ということでした。
そんなわけで気になりつつも、いつも前を素通りしていました(ゲートも閉まっていましたし……)。そのうちアウトドアブームがやってくると「S静峡」という看板が出て、なにやらオートキャンプ場のようになってしまったという噂を聞き、もう私の求める雰囲気はないだろうなあと、完全に行く気が失せてしまったのでした。
そんな話も忘れかけていた1992年のことです。とある四輪駆動車雑誌の読者欄に、昔そこを訪れた方の話が結構長い文章で載っているのをみつけました。関係のある部分を要約すると「鍵のかかっていない分譲地のゲートを開け別荘地に入っていくと、途中で眼光の鋭い筋肉質の人物に止められた。彼はこの分譲地のオーナーで、敷地内を見回りしているという。しかし、話をしているうちに意気投合して、一緒に敷地内を巡回することになった。オーナーの話によると夏休みの間、この別荘地をファミリーキャンプ用に開放しているとのことで、この日も数組の家族が泊まりにきていた。その後、レストハウスで美人のオーナー夫人からコーヒーをご馳走になり、ここを開発するときの苦労話などを聞いて帰った」というもので、全体としてオーナーは一見恐い雰囲気だけれどいい人だったという感じに描かれていました。
荒れていた別荘地というのも、うまく甦ったんだなあと感心していたのですが、最近ここが廃墟スポットとして紹介されているのを発見。ありゃりゃと思うと同時に、今度こそ行っておこうと決心したのでした。
※その後いただいた情報によると、やはりオーナーの方は亡くなったそうです。
満足度:★★
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