魚 「お山は動けず退屈しないのかしら」山 「わしには足が付いてないからな、仕方ないさ」
魚 「お山はそんな体に生まれてきて悲しくないのですか。僕はこの狭い池にしかいないから外が見たいのです」
山 「こんなに大きいと随分と遠くまで見渡せるものだ。これで十分さ」
魚は池の外へ行こうと時々、水面からはねるのであった。
あるとき、たいそうな雨が降った。雨は3日3晩降り続け、山は土砂崩れを起こし、低くなってしまった。
山 「ちょっと低くなったけど、おいらはまだ山だよ」
池には水がたまり、やがて、水が溢れ、川となった。魚はその川を伝ってもっと大きな池を目指した。魚がたどり着いた池は、前の池より少し小さかった。戻ろうとしたが、既に川はなくなっていた。
魚 「少し小さくなったけど、違う池に来られて良かったよ」