組織移植も臓器移植法による法制化を

2003.09.24. by てるてる

先日、千葉県船橋市立医療センターで臓器移植法に基づく脳死判定を受けた男性から、肺が岡山大学で、肝臓が京都大学で、腎臓が国立佐倉病院と東京女子医科大学で移植された。国立佐倉病院では、以前より、心停止下の膵島移植がおこなわれていた。今回は、脳死患者からの、膵島(ランゲルハンス島)細胞の摘出と冷凍保存がおこなわれた。

臓器移植法改正News!
脳死判定:24例目の臓器移植へ 千葉・船橋
脳死移植:膵島細胞を分離、治療実現なら国内初 国立佐倉病院

膵島移植は、臓器移植ではなく組織移植なので、臓器移植法で規定されていない。

「膵島移植の指針」膵・膵島移植研究会編(膵島移植班1998年)

組織移植もまた臓器移植法で規定するべきであるとの主張が、脳死・臓器移植反対側、推進側、双方から出ている。

脳死・臓器移植反対側の主張は、「『本人の生前意思表示プラス家族の同意が必要であり、法的脳死判定手続をしなければならない』という臓器移植法の適用を、組織摘出・移植まで広げるべき」というものである。

守田憲二さんの「死体からの臓器摘出に麻酔?」より組織摘出も法的規制が必要

脳死・臓器移植推進側の主張は、まず問題点として、臓器移植法の規定に基づいて日本臓器移植ネットワークから派遣または委嘱されて働く臓器移植コーディネーターと、別の組織で働く組織移植コーディネーターとが、別々に臓器提供希望者の家族にはたらきかけるため、家族の負担が重くなる現状を挙げている。それゆえに、臓器も組織も担当できる移植コーディネーターを養成することと、組織移植を臓器移植法のガイドラインで規定することとを主張している。

2002年8月9日(金) 「複数コーディネーターは家族に負担 煩雑な承諾手続き解消を」日本組織移植学会

脳死患者からの臓器提供の条件が、本人の事前の書面による意思表示と家族の同意を必要としているので、この条件を家族の同意だけでも提供できるように法改正を求める意見と、おとなは本人の事前の書面による意思表示と家族の同意を必要とする条件を残し、こどもは親の同意だけで臓器提供できる条件を追加しようとする意見とがある。そのどちらの場合でも、ガイドラインで、本人の事前の書面による意思表示がなくても家族の同意で組織提供できるように規定することを求めている。

Yahoo! のe-group, kokkai2より4962件目のメッセージ
http://www.egroups.co.jp/message/kokkai2/4962
Date: 2003年9月11日 (木) 午後10時37分
Subject: 「臓器の移植に関する法律」の改正についての私見
(NPO日本移植支援協会賛助会員、社団法人日本臓器移植ネットワーク賛助会員、斎藤正明氏)
改正案に取り入れて頂きたい事項
○他の人の同意(代諾) この場合の遺族の定義と優先順位
○生体からの移植
○移植不適合臓器の取り扱い
○移植コーディネーターによるドナー家族へのケアー
○中絶胎児からの臓器の提供摘出について
○ヒト組織の提供について
臓器移植推進連絡会案(少々私が書き直していますが)
臓器の移植に関する法律
「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)
第11 その他の事項
6、組織移植の取り扱い
法が規定しているのは、臓器の移植等についてであって、皮膚、血管、心臓弁、骨等
の組織の移植については対象としておらず、また、これら組織の移植のための特段の
法令はないが、通常本人又は遺族の承諾を得た上で医療上の行為として行われ、医療
的見地、社会的見地等から相当と認められる場合には許容されるものであること。
したがって、組織の摘出に当たっては、組織の摘出に係る遺族等の承諾を得ることが
最低限必要であり、遺族等に対して、摘出する組織の種類やその目的等について十分
な説明を行った上で、書面により承諾を得ることが運用上適切であること。

 

臓器移植法の改正については、本人の事前の書面による意思表示と家族の同意が必要という条件を、脳死患者からの臓器提供だけでなく、組織提供にも、こどもにも、心停止下にも、適用するように求める意見がある。

私は、本人の事前の書面による意思表示と家族の同意が必要という条件を、脳死患者からの臓器提供だけでなく、組織提供にも、こどもにも、心停止下にも、適用するように臓器移植法の改正を求める意見に、おおむね賛成である。しかし本来は、おとなは、本人の事前の書面による意思表示だけで、移植または研究目的の、臓器および組織の提供ができ、こどもは、本人の事前の書面による意思表示と親または親代わりとなる人による同意を得て、移植または研究目的の、臓器および組織の提供ができるように法改正すべきであると考える。

なお、2000年には、ぬで島次郎氏が、「厚生科学審議会先端医療技術評議部会の報告 組織バンク事業を通じたヒト組織の移植等への利用のあり方について(案)」に対して、意見書を送っている。そこでは、次のように述べられている。

「『ヒト組織の移植等への利用のあり方について(案)』に対する意見」ぬで島次郎

A. 「1はじめに」の第4、第5段落を、以下の内容を盛り込んで書き改める;
 *人体とその一部は、人の尊厳の源である人格及び人権の座であり、国はそれらの
保護を通じて人の尊厳と人権を充足、促進する義務があること。広範に広がる人体の
利用に対しては、臓器であれ組織であれ、医療目的であれ研究目的であれ、一貫した
共通の倫理原則に基づき、統一した法令による規制を構想するべきこと。
 *ヒト組織及びヒト細胞の利用の規制は、臓器移植法を改正しその規制対象範囲を
拡大することによって行うべきこと。
 *本報告案は、上記方向での臓器移植法の見直しのための参考資料として、厚生大
臣を通じて国会に報告されるものとすること。
B. ヒト組織採取原則を以下のように改める(2(1)、3(1)4)、3(2)1)(1)及び2));
 *すべての場合について本人同意を原則とする。
 *死後の提供は、同意能力の十分な成年者を対象とし、現行のドナーカードに所定
の記入欄(脳死後か心臓死後か、提供する組織の種類も列挙)を設け、同意の意思表
示を組織についても明確に求める。心停止前の保存液注入まで同意内容に入れている
別添1の同意書式例は削除する。
 *生きている人からの提供は、原則として同意能力の十分ある成年者を対象とする。別添2の同意書式例は本人同意のみに改める。
 *生きている提供者として未成年者ないし同意能力の十分でない成年者を対象にす
る場合は、想定されるケースを予め例示し、医療目的に限り、その医学的必要性と倫
理的妥当性について、事前に採取施設の倫理委員会から承認を受けたものに限り、例
外的に認めうることとする。採取施設はこれらの例外の実施については個人のプライ
バシーを除き、事前に情報公開する。

「厚生科学審議会先端医療技術評議部会の報告」pudding

 

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*参照

臓器移植法改正News!

臓器移植とリサイクル

日本の移植コーディネーター


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