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はじめ通信8-1015
久々に・・「この期に及んで!?」H
それでもまだやるの?全国学力テスト!

●この間、全国学力テストに象徴される”競争教育”の破綻ぶりを示す出来事が相次いで起こりました。
 第一は、なんと言っても中山前国土交通大臣が、「(文科大臣だった時に)全国学力テストを提唱したのは、日教組が強いところは学力が低いのではと思ったから」と告白し、自説が証明されたから「(テストの)役目は終わった」とまで述べた、まさに自爆的な発言です。

●「日教組が強いところは学力が低い」などという彼の「自説」が2回の学テで証明されるわけもないし、実際にテストの点数も教組の組織率と関係あるなどとは、文科省さえ言えませんでした。
 彼の真意がどこにあったにせよ、中山氏が全国学テを導入したのが子どもの学力の測定による教育政策の改善ではなく、「組合つぶし」というきわめて政治的な意図に基づくものだったことを自身が認め、今回の発言自体も、政治的に大きな反響を呼ぶことを予期しながらあえて述べていることからも、政治的思わくをもって学テの幕引きを提案したと受け止めるべきでしょう。

●第二は、私が中山氏の”学テ幕引き”発言のきっかけの一つと思う、テスト結果公表問題での橋下大阪府知事と市町村教委との対立問題です。これはいずれ全国で紛糾するでしょう。
 大阪では、学テをやる前から枚方市が独自に先行したテストで、学校ごとの公表をしないとする市教委の方針が、保護者からの裁判に負けて覆ったという経過もあり、必ず公開問題の矛盾が起きることが見えていました。予想通り市場原理主義者の橋下知事は(無神経に)公開を迫り、文科省に従順な市教委が抵抗する図式になりました。

●どちらも本質的な教育上の視点による議論がないままで、突っ張りあっているように思えてなりません。教育上の観点に立ちきれば、全国テスト参加による弊害は、参加しないデメリットより、市町村にとってはるかに大きいことは、今やあまりに明白です。

●10月6日付の毎日新聞の「記者ノート」という小さいコラムに「中山氏の発言は、テストに関する文科省の自己矛盾を浮かび上がらせた」として、「テストはもともと競争原理に根ざした存在なのに、『序列化が進むのはよくない』として市町村別結果の一律公表を禁止じてきた」文科省の「アクセルとブレーキを同時に踏むようなこの態度」を批判しています。これははじめ通信の学テシリーズの1、2で私が指摘していた点です。
 コラムは「それにしても、この発言を聞かされてなお、解答用紙に向かわなければならない子どもたちが、あまりにかわいそうだ」と結んでいるのは、全くその通りです。
 しかし、こういう学テに関する記事が、ここまで書きながら、全国テストと、これまで行なわれてきた抽出テストとの比較を論じ、学テの「目的」としての文科省の説明や本来の調査としての役割は、抽出テストで問題なく果たせることまで指摘する論者があまりいないのは、不思議でなりません。

●全国ゆいいつ不参加の犬山市では、四月の「この期に及んで」でお知らせしたように、新市長の下で、学テ加入派が教育委員の過半数を占め、来年に向けて、加入への地ならしというべき議論が行なわれつつあるそうです。地元の共産党市議さんは、「今日の学テをめぐる混乱を見て、来年もし国が強行したとしても、参加しない自治体が増えてくれればよいのですが」と話していました。
 来年度の学テを見直しさせる可能性は大きくふくらみましたが、教育政策のあるべき姿という点では、まだ多くの議論が不足していると思います。

●国の教育政策の役割として、教育予算を確保し教育条件を整備することの大切さを、殆どの人が指摘はするが、実際には、そちらは遅々として進まず、逆にやってはならない、学テの全員参加や学習指導要領の改訂をはじめ、教育内容をあっちこっちに振り回すことばかりがめだってきました。
 都議会はもっとひどく、30人学級や学校の耐震化を急ぐことには、自民・公明も民主も不熱心で、耐震化促進も四川省大地震での学校被害を見て国が動き出して、ようやく都議会オール与党も重い腰を上げましたが、30人学級のほうは石原知事に気兼ねして、他県の自・公・民が推進なのに東京では断固拒否という体たらくです。
 中山氏が30人学級の意義を認めたおそらく歴代ゆいいつの文科大臣だったというのも、実に皮肉な話です。

●全国学テのような過剰な競争教育を克服する上で、父母の間を含め、以外に参加論が多いのが最後のネックになるでしょう。
 自分達が、競争教育でさんざん苦しめられながら、わが子については過剰競争の克服より競争の勝者を期待するほうが現実的だと思えてしまうところが「教育の恐ろしさ」というべきかもしれません。まだまだ教育に関する国民的議論が広がったとはいえない現状を、変えていかねばと思います。 

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