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はじめ通信11−0227
堀船水害はなぜ再発したか(シリーズNO.18)
対策協議会に二人の大学研究者が協力支援を開始

●2月に開かれた「7・5堀船水害対策協議会」に、協議会が要請した二人の災害研究者からの、直接の聞き取りをもとにした報告書が提出されました。
 私はその写しをいただいて読ませていただき、大いに励まされるとともに勉強にもなり刺激も受けました。私と問題意識の共通する点を中心に、今後への展望を含めて感想などを書いておきたいと思います。

首都高が説明責任を果していない問題を指摘

●協議会のメンバーが二人の専門家に面談して、水害の原因究明や被害の調査、今後の対策などでぶつかっている問題について、見解を伺ったところ、二人とも共通して、首都高が住民に対して必ず説明すべき以下の点が、資料でも説明でも出ていない点を厳しく批判したとのことです。
 @河川付替え工事全体の安全性を保障する計画水量や水位などの根拠の説明。
 A5年前の水害時の流量や水位データの分析と、その後工事計画に教訓がどう生かされたか。
 B5年前と同じ規模の水量を想定した水防対策が検討されていたのかどうか。

 これらの説明をまともにしないで、今回の水害状況の部分的な説明だけでは、河川管理者やその委託を請けての工事施工者として、あまりにズサンだという指摘は、非常に大事だと思います。

●結局、都は首都高に護岸の安全まで含めて任せてあると言い訳し、首都高は、50ミリ対策までしか指導されていないと言い訳している中で、現実の水害のデータをまともに分析しようとしない姿勢が生まれ、また分析すれば抜本的な対策に踏み出さざるを得なくなることもあって、意図的な怠慢が続いていたのではないかと思います。
 いずれにせよ、首都高の「説明責任は果たした」等という弁明は成り立ちません。
(写真は5年前の水害後1年近く経って手抜き工事の原因を認めた首都高とのやり取り。笠井衆院議員(右から3人目)の控室で田村智子参院候補(当時)、そねはじめ、山崎たい子区議、のの山けん区議候補とともに)

隅田川との合流水位を3・11mとしたことの問題

●もう一つは、隅田川との合流水位について、基本計画のAP3・967mを採用せず、3・11mに切り下げた理由への疑問です。
 私が首都高から取り寄せた資料にも、都の新柳橋の架設工事の資料にも、おそらく20年以上前に国の研究機関が出したと思われる、合流水位を志茂橋・小台・所沢という荒川流域の観測点のデータを基に推計するというやり方が採用されていましたが、報告書では、これに対して二人の災害専門家が「石神井川流域の観測点を加えないのはおかしい」と指摘したということです。

●おそらく首都高が使った水位計算方式は、二つの河川の合流水位を調べるとき、大きい河川を優先するという20年前当時の考え方なのだと思います。
 しかし近年では隅田川流域と石神井川流域の豪雨の降り方がまったく異なっており、石神井川の集中豪雨のほうが都市型水害の危険性がはるかに高いという現状にそぐわないことは、素人目にも明らかだと思いますが、それを災害の専門研究者も指摘したことが重要だと思います。

●今日では実態に合わない出発水位の計算方式をいつまでも使い続けている理由はどこにあるのでしょうか。
 もし基本水位高の3・967mを使ったり、石神井流域の練馬や板橋の観測水位を導入すれば、現状の護岸の高さの模型実験では50ミリ降雨でさえ模型から水が溢れてしまうことが予想されるので、最初から出発水位を恣意的に下げるために荒川の3ヶ所の観測点にしがみついているとしか考えられません。

構造物や杭の影響を「控除」する手法にも批判が

●このほか首都高や都の資料で、河川内の構造物の支柱や杭などの影響を「控除」して水位計算を行っている例が多いことも指摘されたようです。
 私も、堀船地区の河川工事が、前例のないほどの難工事であるにもかかわらず、なぜこれほどスピーディーに進めていけるのか疑問でした。
 その秘密の一つが、河川内の構造物の影響を「控除」して災害リスクをシミュレーションし、首都高の災害対策をとんでもなく安易なものにしていたおかげなんだと改めて気づかされます。

●だからこそ、河道や水路の切り換え工事などを水害の危険な季節にかまわず行っていることも、河川内に構造物が多数存在し、中には使わなくなった杭などをきちんと処理しないうちに、リスクの高い切り換え工事などを並行してやってしまうなどのやり方が、「シミュレーションでは安全」のお墨付きがえられたのではないでしょうか。(左の写真はバイパス水路入り口付近の水位が下がった時に顔を出した河川内の矢板と鋼管の頭の部分:7月14日撮影)
 二人の研究者が、強調しているとおり、水害時の河川状態をつかむために、たとえ困難でも極力現実の川の構造や流れをできるだけ正確に再現して分析する努力がなければ、科学の名に値しないということでしょう。

堀船水害の実態を正確に把握せず何ゆえ「天災」といえるのか

●また「50ミリを越えた豪雨だから天災」と決めつけるのは合理的では無いという点も鋭い指摘だと思いました。
 たとえ板橋で100ミリ超の豪雨があったとしても、堀船地区の水流が50_対応の流量として設定された480トン/秒を上回っていたかどうかは、正確には溢水した水の氾濫状況や、それに到る水位の変化などを調べ、堀船地区の流量を割り出さねば確定しないからです。

●だからこそ、都や首都高は、もろもろのデータを開示して、第三者の分析を認めるべきとの主張も今後の再発防止の上でも重要になってくると思います。
 現実にこの二人の研究者以外にも、先日の区議会の防災対策委員会で講演した芝浦工大の守田教授のように、第三者である研究者が、この水害の分析に乗り出してきつつあり、都が、住民の側に協力するなら情報は出さないなどという態度をとるなどということはあってはなりません。

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