トップページへ  水害シリーズ(11)へ  水害シリーズ(9)へ戻る  はじめ通信目次へ   

はじめ通信10−0923
堀船水害はなぜ再発したか(その10)
雨量観測点を石神井川流域に据えなおせば5年前から
100ミリ対応が当然だった

●水害シリーズNO.8で、石神井川下流の工事区域には1時間50ミリ程度の集中豪雨による水流は5年に一度、65ミリ程度なら10年に一度しかやってこないとして、50ミリ降雨に耐えられる護岸を整備したとしていますが、その根拠となる雨量観測点の3箇所は、はたして適切なのか、練馬や板橋の観測点をなぜ入れないのかという問題提起をしました。

●首都高による2005年9月水害の最終報告を読むと、この時の護岸の決壊が、自らの手抜き工事が原因であると認めながらも、一方で石神井川流域の観測点で50ミリを超える「想定外」の雨量があり、これが集まって下流に押し寄せたことを強調しています。

 しかしそこに列挙された石神井川上流の観測点(右の図を参照)には、平成10年の水理実験の「50ミリ対応」の根拠となった「志茂橋」も「荒川」も「所沢」も出てきません。これらの観測点は石神井川流域ではないので、当然です。

●つまり首都高は、工事区域の「50ミリ対応」の護岸の高さを決めるのには荒川流域の3地点の雨量データを使い、実際の集中豪雨が「想定外」だと決め付けるためには石神井川流域の雨量を使って説明しているわけです。
 これがご都合主義でなくて何でしょうか。















●そこで水理実験報告書に出ている図を参照しながら、3つの観測点の、観測年ごとの最大雨量で、40ミリを超えるデータが記録されている日時に、石神井川流域も含めて他の観測点ではどの程度の雨量があったのか、その相関関係を調べました。

 国と都の公表データとにらめっこしながら、苦労して一覧表を作って見ました。

観測年

月日

志茂橋

荒川

所沢

板橋区

常盤台

江古田

練馬

石神井

 

60

7/20

18

11

61

 −

 −

 −

 0

  1

 

62

8/24

59

20

14

 −

 −

 −

14

 35

 

49

 −

 −

 −

 

1

8/1

39

44

19

 −

 −

 −

58

 65

 

2

47

 ?

 ?

 −

 −

 −

 ?

 ?

 

3

8/1

48

16

13

 18

 26

20

 1

 −

 

9/19

36

45

24

 43

 33

 39

 33

 35

 

8/20

21

15

47

 27

 26

 38

 39

 39

 

4

7/15

12/8

22

20

12

41

75

19

 16

 21

 15

 
17

 25

 20

 23

 19

 39

 23

 

5

6/21

72

14

2

 43

 42

 0

 8

 4

 

8/27

39

55

 20

 34

 40

 41

 33

 29

6

7/18

27

58

 15

 18

 14

 8

 9

 4

 

(太字はその地点の最大雨量。 ?マークは日付が確定できず他地点のデータが不明。)

●さらに水理実験ではH8(1996)年までのデータを使っていますが、それ以後も都のHPにデータが出ているH19年まで、3つの観測点で40ミリを超えている場合を調べてみました。

観測年

月日

志茂橋

荒川

所沢

板橋

常盤台

江古田

練馬

石神井

 

10

8/28

44

17

41

58

24

15

17

21

 

11

8/29

52

52

0

68

47

79

49

42

 

8/24

15

31

45

32

48

58

71

22

 

12

9/11

69

13

35

51

28

62

24

27

 

7/4

34

43

1

26

17

26

26

12

 

14

8/4

74

17

5

25

24

12

17

 −

 

15

10/13

42

61

15

52

42

59

47

36

 

16

9/4

81

43

13

62

39

65

41

23

 

10/9

42

66

24

40

46

46

46

39

 

17

9/4

54

68

51

60

76

57

81

109

19

8/24

11

46

0

0

0

0

0

0

 

7/29

29

16

61

23

35

25

28

63

 

●今度は逆に、石神井川流域の観測点で時間50ミリを越えた場合に、他の観測点の雨量を調べてみると、今まであげた以外に7例も出てきました。
 特に平成11721日は、江古田と練馬で100ミリを超えているのに、志茂や荒川ではそれほどではなく、これら二つのグループの間に、大きく異なる降雨傾向があることが分かります。

観測年

月日

志茂橋

荒川

所沢

板橋

常盤台

江古田

練馬

石神井

 

62

7/25

19

28

14

 −

 −

 −

59

28

 

3

8/23

18

34

4

9

6

 −

10

56

 

6

7/7

32

15

0

46

66

34

66

 

11

7/21

31

22

2

68

29

128

131

5

 

7/22

23

9

1

24

17

59

1

 −

 

13

7/18

30

12

1

35

63

61

79

 −

 

17

8/15

10

26

25

35

43

98

63

73

 

●以上の数値を見ると、水害の起きた2005(H17)年94日以外は、荒川流域の観測点の最大降雨と、石神井川の流域の雨量は、ほとんどかみ合っていません。
 これは、石神井川流域の雨が、典型的な都市型豪雨で、江古田や練馬中心に割合限られた区域に集中して降るのに対して、荒川流域の雨は、台風などで都内全体が豪雨になった場合に多くなるということです。また所沢の観測点は、どちらとも異なる傾向を示しています。

●したがって少なくとも石神井川流域ではこの間、平成11年、17年、今年22年と、5〜6年に一度は100ミリ以上の豪雨が発生し、そのうち2回は大規模な水害を起こしているのですから、「5年に一度の豪雨による石神井川の氾濫に備える」というなら、基準の観測点を荒川流域ではなく石神井川流域に据えなおし、100ミリ対応は当然必要ということは明らかです。
 このことは、5年前の水害の後に、真剣に検討されるべきだったのではないでしょうか。

トップページへ  水害シリーズ(11)へ  水害シリーズ(9)へ戻る  はじめ通信目次へ