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はじめ通信10−0922
堀船水害はなぜ再発したのか(シリーズ9)

新柳橋付近での東京都護岸工事用桟橋の水流への影響について

●9月15日に、首都高より住民に示された、都の新柳橋での工事桟橋による影響についてのシミュレーションは、机上計算で、しかも75日に溢水した日本たばこ付近の護岸についてのみデータが示されました。
 それによると、新柳橋と日本たばこの間に整備されたあすか緑地の影響により、桟橋による水位上昇はむしろマイナス効果となり、5・28mという数値が出されました。

●しかし桟橋の影響をシミュレーションする場合、最も水位上昇が考えられるのは桟橋のすぐ上流部分であり、都が今回水害発生以前に、桟橋設置の段階で、桟橋による水位上昇が直近の5・8mの護岸を越えることがないかどうかをシミュレーションするのが当然です。
 つまり桟橋問題で問われているのは、河川内の構造物として日本たばこ付近の溢水にどの程度影響したかはもちろんですが、首都高の管理区域で溢水が起きずに濁流が桟橋付近に到達した場合でも溢水が起きないような安全性の確認が行われていたかどうかではないでしょうか。

●そこで新柳橋の桟橋の実態を踏まえ、70mに渡り桟橋の右岸側を26本のH型鋼で、左岸側を鋼管矢板で支えられていることによる水流への影響を試算してみました。
 試算には物部長穂氏の「水理学」の計算式を用いました。(水害シリーズNO.5〜6を参照してください)
 <首都高が平成10年の水理実験で河川内の桟橋杭の影響の机上検討(水理実験報告書のp76〜参照)に使った計算式は、物部方式より水位の影響が大きめに出るので、相対的に値の小さいほうを採用しました>


採用した計算式は以下のとおりで、H型鋼と鋼管矢板の26列について各段階での水位上昇を計算して積み上げました。

nQ~22G×〔αρCd(bB)〕Bhn-1~2α×n~2G
Q
(流量):480m~3
G
(重力加速度):9・8m/s~2
α(橋脚の角度):90度=0・785rad
ρ(水の密度):0・98
C
d(抵抗係数):上記文献により2・0を採用
b(橋脚の幅):H型鋼が0・5m、鋼管矢板が1・0mを想定
B
(川の幅):20m
n(水位高):h0(新柳橋)をAP.40m+APマイナス30m=7・0mと設定
n(各橋脚直前の流速):1Q/(0h1)×B

●以下に26の杭の列を通過する各段階での水位上昇の計算結果を示します。

 計算の結果、新柳橋の真下の水位と、そこから70メートル上流の桟橋の先端付近との水位の差が1・978メートルとなり、この桟橋先端付近の水位は図に示したように、川底から8・8mの護岸を、わずか17・8センチですが越えることになります。

 もし都が桟橋設置に当たり、少なくとも50_降雨による水流でも水位上昇が護岸を越えないよう前もって対策を検討していれば、首都高がステップ3の段階で採用した桟橋を支える橋脚や鋼管矢板に鉄板を張って支柱を壁状にする対策は行うべきだったことは明らかです。

番号

n(柱前の水位)

     (m)

n(柱前の流速)

    (m/s)

 凾

     (m)

備考

  7・1040

  3・378

  0・104

 

  7・2030

  3・338

  0・0990

 

  7・2996

  3・288

  0・0966

 

  7・3931

  3・246

  0・0940

 

  7・4840

  3・207

  0・0912

 

  7・5721

  3・109

  0・0882

 

  7・6576

  3・134

  0・0856

 

  7・7411

  3・101

  0・0835

 

  7・8224

  3・069

  0・0813

 

10

  7・9017

  3・038

  0・0793

 

11

  7・9793

  3・008

  0・0776

 

12

  8・0552

  2・980

  0・0759

 

13

  8・1295

  2・952

  0・0743

 

14

  8・2013

  2・926

  0・0718

 

15

  8・2725

  2・902

  0・0712

 

16

  8・3425

  2・877

  0・0700

 

17

  8・4112

  2・853

  0・0687

 

18

  8・4781

  2・833

  0・0668

 

19

  8・5440

  2・810

  0・0660

 

20

  8・6091

  2・788

  0・0651

 

21

  8・6731

  2・767

  0・0640

 

22

  8・7360

  2・747

  0・0629

 

23

  8・7979

  2・728

  0・0619

 

24

  8・8589

  2・709

  0・0610

 

25

  8・9189

  2・691

  0・0600

 

26

  8・9781

  2・673

  0・0592

 

●桟橋の前後の水位差は:h26−h0=1・9781(m)
●26番直近の水位h26は、8・978mで、8・8mの護岸を越える水位高となる)

<新柳橋付近の護岸工事用桟橋の略図>

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