歌われる温泉
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日本国内の温泉地を並べあげてコミュカルな文句としぐさで笑わせてくれたのがドリフターズの歌った『いい湯だな』だった。北から南まで登別・草津・白浜・別府を並べるのも苦労しただろう。「ハアー、ハハハン」や「アー、ビバビバ」というなんだかわからぬ合いの手がの加わって、盆踊りのようなノリがおもしろかった。
この歌を聴いて自分の愛用する温泉が出てこないとか、あんなものはお手盛りソングだと息巻く気はない。入浴の楽しさをわかちあえば足りる。
こういう明るい歌とちがってなぜか虚しくなる温泉場の歌もある。流れ流れてたどり着いた名もない温泉で働く悲哀、結ばれようもない男と女の後ろめたい関係、治療に出向く切なさ、あるいは湯けむりがあがる寂れた旅情などが歌われた。苦手な演歌だからタイトルをあげられないが、『●●●エレジー』とか『●●の女(ひと)』という部類である。こんな湿っぽい歌は苦手だが弱気になったときに共感したときもある。
そういえば、風呂からあがってくつろいた気分を「もう一杯いかがなんて/妙に色っぽいね♪ 」と歌った吉田拓郎の『旅の宿』もあった。これも意味深な内容だけど、明るく笑い飛ばすから詮索は不要だろう。オフコースのように「君を抱いていいの♪ 」とストレートに言うのも気がひける。 そう考えると『いい湯だな』はほのぼのと明るいのが楽しい。効能や景色を賛美しているわけでない。良い悪いを決めつけるのでなく、どんなものでも前向きに楽しもうという姿勢がある。風呂嫌いだってなんとなく良い気分になる。
参考までに歌詞の一部を引用します
冷てえな 冷てえな ここは北国 登別の湯
いいもんだ いいもんだ ここは上州 草津の湯
あの娘(こ)かな あの娘かな ここは紀州の 白浜の湯
うなろうかな うなろうかな ここは南国 別府の湯
【追記】
フォークやロックで育ったもので音楽ざっかんには「演歌が歌えない」という記事もあります。温泉場や入浴を歌った曲がかなりあるのに風呂好きや銭湯マニアがふれないのも意外です。関係ないからふれないのでなく、そういうものとして生活に溶け込んでいる側面を私は忘れたくない。拓郎の『旅の宿』やオフコースの『YES NO』を覚えている人はいないでしょうね。