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       *** 金木犀のブランデー酒 ***

風の通り道もないほど花密度の濃い金木犀は、木そのものが
香りの貯蔵庫のようで、その隙間を通り抜ける選ばれた風だけ
が仕事人として秋を届ける。

その自然の創り出した香りには及ばないけれど、昔、金木犀の
ブランディー酒を作った事がある。

散る前に金木犀の花を摘み、花びらを傷つけないように洗って
ブランデーに漬けだけのとても簡単なものだけれど、小さな花
がゆらりと浮かんでいる様子は、中々素敵で趣があった。

色が抜け白い花びらに姿を変えた金木犀のお酒は、秋を封じ
込め一層深くなった琥珀の色をガラス越しの光に反射させて
セピア色の写真の様にノスタルジックな雰囲気を醸し出して
いた。

秋の抜け殻のように.瓶の底で寄り添う花は朽ちる事なく、姿を
そのままに保ち、気高さという花言葉のように凛として美しい。

雰囲気を味わい、秋を飲む・・
金木犀のお酒は、ゆとりの味として記憶の中で眠っている。
          

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