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** 金木犀 **
もしも香りに色があるとしたら、金木犀の香りは何色だろう、、
私には、橙色を霞で薄めたような淡い茜色のような気がして
ならない。例えば夕焼け雲のような・・
あまやかな香りは空気の粒子まで染め、濃密な気配が漂う道を
歩いていると何処へと連れていかれそうな怪しい気分になる。
けれども心を酔わせていても置いてきぼりにされる。
短い命なのだ。
小さな木を植樹して今は屋根まで届くほどに大きくなった.金木犀
の花の散り際を、不思議な事に目にしたことがない。
束の間の秋の狭間に香りの記憶を刻みつけ、潔く散りゆく。
気がつくと、やがて訪れる冬の枯葉の為に寝床をつくるかのよう
にいつのまにか木の根元に橙色の絨毯を敷き詰めているのだ。
ゆっくり深く息を吸いこみ、心にも寝床を作ろうか。
自然の連鎖は、人生に似ているに違いない。
金木犀のお酒
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