わ行 わをんで始まるタイトルの映画
ワーキングガール

幕が上がると、軽快な音楽に乗せてマンハッタンの景色が広がる。自由の女神、ビル郡に、早足で街を行く人々…。
「さあ、アメリカンドリームが始まるよ!」高らかな前口上。
そこへ、胸がデカくて脚の細〜いブロンドのメラニー・グリフィスが、ゴテゴテのスーツにスニーカー姿で登場。当時話題になった、ニューヨークのOLの通勤姿だった。
街や会社やパーティや、都会の暮らしの雰囲気が、全編通して活き活きと伝わって来る、『ワーキングガール』は魅力的なコメディだ。

秘書のグリフィスの上司は、同い年で高学歴エリートのシガニー・ウィーバー。『エイリアン』のイメージが、あまりにも強烈だったこの頃に、鼻持ちならないけどオチャメなヒールを、本当に楽し気にやっていて、大好きになった。
シガニーからメラニーに乗り換える色男が、これまたハリソン・フォード。強くてキツくて野心も行動力も満々の女二人に挟まれて、殆ど決闘に立ち会うお姫様状態。
『レイダース』とかでも思ってたけど、この人の困った顔が、好きなのよ。賛同する女性は、きっと多いはず。

上司に留守を頼まれた高級マンションで、トップレス(これがハンパな乳じゃないのよ)で掃除機を掛けるメラニー。エレベーターホールで舌打ちするH・フォード。出し抜かれたと知って、脚にギプス姿で憤然と乗り込んで来るS・ウィーバー(すわ、皆殺しか!?と、とっさに思ってしまう)、社長さんとH・フォードの「ギスギス女!」合唱…楽しくて、笑えるシーンが満載だ。
ラスト、出世して出かける朝、恋人ハリソン・フォードがお弁当を持たせてくれて、「知らないおじさんについてっちゃダメだよ」。ッック〜ッ!幸せを絵に描いたって、この事ね。

正直言って私は、メラニー・グリフィスは好かん。いくら幼少期よりブロンドグラマーが大好きとは言え、品が無さ過ぎていただけない。
でも、この役はピッタリで、何がなんでものし上がったる!って感じがすごく出てた。
彼女のやり方は、「アンフェア?」って部分も無きにしもあらず、だけど、事情を考えると許せちゃうように造ってあるしね。

ワールド・オブ・ライズ

ディカプリオは相変わらずと言うかますます四角くなって、ラッセル・クロウはまだまだ色気が増し増しで、そして今回、サラーム役のマーク・ストロングが物凄い魅力的
と、相変わらずリドリー・スコット監督の男惚れ演出が炸裂。
ちょっとツンデレなアイシャちゃんも可愛かったし女優さんもマジ美人。

ストーリーはちょっと分かりにくく、終始グレーゾーンを行き来してる印象だが、それがいい。ちょっと疲れたけど。
嘘つきで自己中で行き当たりばったりで、作戦(と言うか小細工)失敗ばかりしている謎の集団CIA(笑)。
仲間に足を引っ張られ終始カリカリ怒ってるかと思いきや、合間に現地の女の子のお尻を追い回してこれといった葛藤も見せない工作員(レオ)。
ほぼバーチャル上で指事を出しつつパクパク食べ続け、現場で流れる血に全く無関心なメタボ本国職員(クロウ)。
がさがさドタドタした"ザ・アメリカ"勢に対し、常に高級そうなスーツに身を包み、背筋をスーッと伸ばして立つ現地協力者(ストロング)の美しい事。
米本国では不評だったという噂も頷ける、「アメリカかっこわるいじゃん」映画でありました。

終盤の拷問シーンはシャレにならない怖さ。
なにしろ私たちはもう、現実にこういった映像がネットで流されているのを知っている(見てはいないにしても)。
来ると分かっているのに、なかなか始まらないのがまた怖いです。
そしてレオ君危機一髪!で、駆けつける奇兵隊は、アメリカではなく現地のサラームだった…レオがイヤんなっちゃうのも分かりますわ。

これ、言うなれば「21世紀の『アラビアのロレンス』」の構図なんだけど、少しも進歩しないどころか拗らせてますわ、特に白人サイドが。
カタルシスも無ければ悲哀も無い。
乾いた憤りだけが残るけれど、それもそんなに強烈に肌を刺す痛みではなくて、泥沼にふさわしいモヤモヤ感が秀逸だった。
ラッセルクロウの好演は無論の事、こういうレオ君、嫌いじゃないです。

ワールド・トレード・センター

言わずと知れた、9.11テロの実話を元に作られた映画。
と、いう程度の予備知識で観て、構成の大胆さにビックリした初見時。
主人公がニコラスケイジかぁ、と思ったら開始20分で救助準備段階で瓦礫に埋もれ、薄暗い中身動きもできず顔も煤だらけでラスト10分前まで埋まってるという。
と、思えばオリヴァー・ストーン監督でしたか。なるほど。

体当たり飛行機もビル崩壊も殆ど画面に出てこない、スペクタクル度低めの演出で、終始"被害に遭った側目線"で展開される本作。
情報も入らず俯瞰で物を見る事もできず、おそらく現場はこんな感じだったろう(そしてそのまま亡くなった人も多数であったろう)リアリティに、むしろ手に汗握った。
あの自殺しちゃった人はなんだったのか…正直薄暗くて、本当に状況を把握しきれなかったのよ(汗)。
それはそれとして、意識はあっても体の自由が全く効かず、負傷した自分の身体を知りながら何もできない、という状況の切なさたるや。
一方残された家族も同様、現場へ向かった事だけを知らされて後の情報が入って来ない、ただ待つしかない切なさ。
妙なサービス精神で欲張る事無く、動きの少ない地味な切り口で、それでも飽きさせずドラマに引き込んでくれる手腕はサスガだ。

主演はまあ、安定のニコラスケイジだが、本作ではかなり身体を絞ったのか、顔つきもシャープで精悍に見える。
勤続20年余の警察官で、頼れる上司、という顔をしている。
期せずして"相棒"になるマイケル・ペーニャの個性的な容貌と愛嬌ある表情に、かなり救われ、また思い入れさせられた。
ところで"ヒメノ"ってドコ系の名前だろう?
ケイジの奥さんも綺麗だったが、ヒメノ夫人役の妊婦姿のマギー・ジレンホールが可愛らしくてちょっと見直した。お多福ちゃんと思ってました、すみません(これ前にも書いたっけ)。
このヒメノ夫妻の、生まれて来る赤ん坊の名前を巡るやり取りが愛情いっぱいで、ちょっと泣けた。

やはり人間、最期の時は家族なんでしょうねぇ。
納得し感動すると共に己の先行きが恐ろしくもなる。
それとは別に、無辜の人々の命を奪い、その何倍もの人々を涙にくれさせたテロ行為を憎む気持ちと裏腹に、アメリカという国のそれは散々して来た事では、という思いが付き纏い、ああオリヴァー・ストーンの術中に堕ちたな、と苦笑いが漏れたラストシーンだった。

ワイルドシングス 

いやはや。
二転三転どころか、でんぐり返り過ぎて悪酔いしそう(笑)。
そして、ものの見事に悪いヤツばかり。
ここまで作り込み過ぎると、無理矢理とか言うよりも、どこまで積み上げられるかがゲーム感覚で面白くなってしまう。

プリプリの女子高生達も可愛かったが、マット・ディロン&ケヴィン・ベーコンの並びがとっても目の保養、楽しかった。
割といきなりのエロシーンだったりするんだが、お好きな人には楽しめる、そうでない人には邪魔にはならない程度の配分だったし。
フロリダという舞台設定も、特殊な空気感があり、景色の美しさも相まって退屈させない。
ブラ一枚で歩き回る"お嬢様"も、ディロンの素敵なアロハシャツも、この土地なら言い訳無用。
ウッカリ水に落ちたりすればワニが寄って来る!怖い怖い。
始めのうちこそ、ディロン目線でハラハラしたりもしたが、最初にひっくり返った辺りから寄る辺を見失い、後半はもう皆が皆クセモノなんでどーでも良くなって来た(笑)。
そういう意味でも、キャストの誰一人として無駄にしていない、ある意味すごい構成力だと思う、ちょいと普通と方向性がズレてはいるが。
そんなワケで、最後に勝つのが誰でも全然不満は無く、ちゃんとビル・マーレイまで責任編集してくれて、文句は無いです。
そうそう、懐かしのロバート・ワグナーも嬉しかった。
ちょいと食い足りなかったのは、女刑事が結局ウロウロしただけで終わったところかな。

こけおどしのサスペンスシーンや、ドラマ的には「ここでその顔?」という場面もあったけれど、ソレも含めて楽しませてもらった。
後はアレだ、ヨット部の貧乏少年が、活躍してくれたら完璧だったな。ってドコ目指して完璧なんだか(笑)。
そして最後に、足りないパーツを開いて見せるように、数々の"種明かし"がフラッシュバックされる。
するとまあ、見事に誰が誰に踊らされていたかが良く見えて来る。

とっても殺伐とした、心がカサカサする内容なんだけど、美しい景色、青い海、見目良い男女と、絵がとても綺麗で、なんだかいいモノを見たような気になってしまう。
普通なら「反則だよ〜」と言いたくなるような殺人の顛末も、青い海に滑る白いヨットを一人操る華奢な女性の絵面が美しくて、爽快感すら感じてしまった。

ワイルドシングス2

全く期待はしなかったけど『1』の流れで一応チェック。
予想通りのがっかり感でした。
それでも、露出過多の女子高生、節操無いけど小出しのエロ、「誰も信じられない」どんでん返しの積み重ねと、前作のテンプレをキチンと踏襲していて、真面目と言えば真面目に作ってあるのかも。

決定的にして致命的な差は、やはりキャスト陣でしょうね。
同じような事やってても、前作の豪華キャストとは観る前から心構えが違う上に、見た目の豪華さも段違いだった。
別に無名でも、綺麗な子はいると思うんだけど、メイン女子高生二人ともそうでもないし、男に至ってはもう(笑)
目に楽しくないだけでなく、無名な上に顔に特徴の無い子達で、服が変わると誰だか分からない(ミステリ的に致命的)。
と、言うか、前作のケヴィン・ベーコンwithマット・ディロンはご馳走過ぎました。

ストーリーはまず、誰が残るか早い時点で分かってしまうのが残念。
トリックと言えるか疑問だが、父親のDNAの手口はビックリ(無理だろ!という方向で)、飛行機の運転の件も先に出しておく必要はあったのか?伏線。うん。
父親は予想通りだったが母親は意外だった。ちょっと嬉しい。
3人でイチャつくシーンが長い割に刺激的でなくて、こんなんよりビーチバレーや豪邸やプールなんかにもっと力入れて欲しかったかな。ワニの活躍も今ひとつ。
あともちろんキャスト選びも大切。

とはいえ、「ワイルドシングス流」みたいな表現が使えそうな程、このプロットは特徴的で、聞けば『3』もあるらしく、暇でお金がかからなければ見てみようかと思っている。

ワイルド・スピード 

いわゆる 「走り屋」さん達の話…?
と、正直あまり好みでなさそうでスルーしていたんだが、『リディック』を観て色々と「???」となっていたので、同じヴィン・ディーゼル主演という事で観てみました。
つまらなくはなかったけど、やはり内容的には『クローズ・ゼロ』なんかと同じ系列で、私はここのお客じゃないな、という印象。
それでも、路上レースはともかくとして、車の整備やらで盛り上がるのを見るのは楽しかった。
出て来る車や部品の名が殆ど日本名なのも、やらしいと思いつつ、ちょっと嬉しい。
単純に走る車はかっこいいし、女の子達も美人揃いで目にも楽しい。

でもストーリーは、なんじゃあこりゃあ、レベルだよね?
潜入捜査の刑事が身元を打ち明けるタイミングも「は?」だったし、中国系集団も「悪い事は中国人」な感じでやな感じ(別に中国を擁護する気は無いが)。
そして結局トラック強盗、やってたんかいっ!!!!っていう。
どうすんだよコレ。
トラック相手のカーアクションは頑張ってはいたけど、あんなにトラックが寄せて来たらジ・エンドだと思うんだけどどうでしょうか。って言うか刑事!被害者とやり合ってどうする!?
と、頭デロデロな展開で。
「借りがあるから」とかって、好きな人は好きなんだろうなぁ…いや私も使いようでは好きだけど。トホホ。

結論。
ヴィン・ディーゼルに関する私の疑問符の答えは、要は「好みじゃない」に尽きるわ。
良く分かった。
コレもシリーズがいっぱい出てるようだけど、私はもう見る事は無いでしょう。
精神年齢的に中学生程度までで車好きなら、きっとすごく楽しいんだろうと想像は付いた。

ワタシが私を見つけるまで

まあ、タイトルからして地雷臭プンプンなワケですが(笑)。
案の定、面倒クセェー!って女とその周辺。
まあ、面倒臭いアリスことダコタ・ジョンソンは服装含め、可愛かったけど。

のっけから強烈なおデブちゃんが踊り狂って、凄い存在感と思ったら『ナイト ミュージアム3』の警備員の人ね。
どう見てもかなりのボリュームなんだけど、なんでしょうかこの"現役"感
けっこう好き。
レベル・ウィルソン、結構な美人と思ってたけど、痩せても本当に美人だった模様。恐ろしや。

とはいえ映画の方は…つまらなくはなかったんだけど、面白くもなかった。
群像劇が基本的に好きなんだけど、これに関しては呆れる程に誰がどうなっても気にならないまま終わってしまった。
恋人と「距離を置きたい」と出て行くヒロイン、毎夜クラブで呑んだくれて男漁りを繰り返すデブ、体外受精で出産を目論む女医、ウェブで婚活するメンヘラ女、誰とでも寝るバーテン、優柔不断なヒロインの元カレ、妊婦と知らずナンパして父親になりたがる若いイケメン、読み聞かせ会のオタク、妻との死別を受け入れられず新恋人に当たるシングルファザー………。
誰一人として共感も思い入れもできない。

よく日本は全体主義だとか右へ倣えだとか言うけれど、こと番う(つがう)事に関してはアメリカでの重圧は凄まじいものがあると感じる。
劇中女医は妹であるヒロインに「ブリジット・ジョーンズを見ちゃった?セックスアンドシティまで?」と責めるが、この映画自体が負けず劣らずの脅迫装置だ。
最後に取って付けたようにヒロインが"自立"を自覚するモノローグが入るが、見ているこちらは全然自立を見せられた気がしない。
途中鋭くコキ下ろしたデブも無条件に和解を受け入れてしまうし、大事な仲直りの場面でレズネタジョークは本当にいただけない
バーテンがメンヘラに本気になる理由も分からないし(彼女の魅力が分からない)またかよと思ったのは一人で産もうとしていた女医が若いイケメンと結ばれること。
そもそもあの女医さんは相応の相手を捕まえて普通に結婚すればよろし。

しかし、女医が赤ちゃんに語りかけるシーンは良かった。
って言うか赤ちゃん役者過ぎ
まるで悲恋の恋人同士のように見つめ合ってたよ!
あれはヤられるわ(笑)。
でもあの女医、どう見てもかなりの子供好きの部類よね、バカバカしい

ほぼ全員が綺麗な服を着て結構な職に就いて、夜な夜な派手に遊び廻って、「私孤独で辛いんです」と言われても「はぁそうですか」としか返せない。
キスもセックスも即行過ぎてドン引きだし別れ話もいちいち筋が通らな過ぎてバカかコイツと思うし。
なんとなくモヤモヤと、何を楽しんでいいのやら分からずボンヤリした印象の映画だったんだけど。
これだけはハッキリと言える。
君たちのジョークは全然面白くないんだよ。

私だけのハッピー・エンディング

ケイト・ハドソンは本当にチャーミングな女優だと思う。
特に今回のような役柄だと、表情の引き出しが物凄く多くて、しかもその変化の流れが滑らかで美しい。
もちろん、笑顔は最高
世界一のキューティーガール(当社比)のママ=ゴールディ・ホーンよりも、役者としての素養は上なのかも。

と、ヒロインのケイトは素晴らしいのだが。
ストーリーも大筋では、(正直あまり好みのタイプではないが)悪い話じゃないと思う。
でも、何と言うか、終始居心地の悪い思いに苛まれた。
なんと言うか、あまりにも教科書的というのかな。良い意味で驚かされる所が殆ど無かった。神様がウーピー・ゴールドバーグ姿で出て来る事くらいかな?マーリー脳内って(笑)という驚きね。
…まあアレだ、自分の脳内を探ってみれば、確かに神がアノ(自分のご贔屓芸能人)形で現れてくれたら話を聞くわなと。そうは思うけれど。

人物配置も、女友達(未婚、既婚の母親取り揃え)確執有りの両親、気のいいゲイ…と、もはや映画の定番。昨今ゲイってどうしても必要なのか???いえ、彼は悪くはなかったけど。
そして恋人ね。ガエル・ガルシア・ベルナルは誰だか分からなかった程シッカリ役作りしてて、存在感もあったしキュートだったんだけど、彼が全く迷いや弱みを見せないし、なんかファンタジーに感じた、あの存在。
両親との和解に関しても、特に父親とはちょろっと台詞の応酬で「え?氷解!?」みたいな、そんなんなら無くても良かったんじゃ?というか、そもそもどうしてソコまでパパを嫌ってたかが見えないので(これまた台詞で冷たいと言いはしてたが)和解されても感動できない。
イケメンで素敵なパパじゃん、お金も持ってそうだし。
それと、彼女が死ぬ間際に本当の恋をしたのは、たまたまそういうタイミングだったワケじゃなくて、死ぬと知ったから選んだんだよね。
その辺り、ちゃんとキメて欲しかった。彼の態度同様ファンタジーで終わった印象で。

独身の友人が子供に夢中な友人に「羨ましい」と漏らした後で、その未来を閉ざされたマーリーにハッとする、あの場面は面白かった。
未来が無いという事はそういう事なんだよね。
まあ、生きながらえたからといって、明るい未来が訪れるとは限らないと、歳を重ねた今なら分かるけれど。30代でソレを理解するのは無理だと思う。どうしたって、人は良い方の可能性に期待するし、だから皆生きて行けるのだろうし。
元々私、生き死にを扱う物語は苦手なのかもしれない。
それは興味が無いからではなく、今現在生きて元気に活動している人には、絶対に分からない事があるから、という気がするから。そしてあまりに重すぎて辛いから。

ラストシーンも印象的だが、いささか綺麗事じみていて、ちょっと悲しくなった。
自分の葬式を川の対岸から見ながら楽しくダンスを踊るヒロイン。
ご免なさい、どう考えても私、若くて死ぬ事に「ついてない」以外の感想が抱けない。
でも、人生の価値は長さではなく濃さだというのは何となく分かる。
死ぬのは一人でも、その瞬間に愛する人が傍にいてくれたらそれは幸せだろうなとも。
考えてみたら私の人生も、楽しかったのは40歳くらいまでだったかな………なんてね。

私の中のあなた

これは、切ないなぁー……。

アナも良いがケイトも素晴らしい。もちろんキャメロンのママは最高(私的に彼女のベストアクトかも)弟も地味な役回りながら好演だし。パパも泣かせる。
脇役も、医師も判事も弁護士も犬さえも、好演。
寄ってたかって泣かせにかかって来る(笑)。
誰もが真面目で善良で、だけど誰にもこの場を救えない。
ケイトのBFも素敵だった。
二人の出会いからの恋のそれぞれが本当に切なくてキュンキュン、「生きたいだろうな」と切実に思った。
プロムの時の、はしゃぐ女達を見ながら黙り込む父親の姿がもう、もうね。最大級に泣ける

人は人間の力ではどうしようもない事(「死」はその最たるものだ)に出くわすと、人より以上の存在を見つめたくなる。
そういう、いわば一歩深いところへ行った人々の口をついて出る、秀逸なセリフがいくつもあった。
「この先はホラー」もその一つ。でも、私から見たら最初からホラー設定だったんだけど。
遺伝子操作でドナー用の子供を産むとか怖すぎる。
でも目の前の我が子を救いたい一心は、分かるような気はするし、どこまでも行きかける母親と歯を食いしばって踏み止まる父親との対比は説得力があった。
ビーチへ行くシーンのやりとりも緊迫感があり、息を詰めて見た。そして泣いた。

親を訴える、というくだりが、ちょっとセンセーショナルに宣伝に使われたように記憶しているが、実はちょっとしたドンデン返しもあり、難病の姉とドナー用に切り刻まれる妹、それぞれの辛さと優しさが開示されヒシヒシと胸に迫る。
体外受精にも抵抗のある私としては、あまり覗きたく無い世界ではあったが、真摯な脚本と演出、演技を観て、すっかり説得され納得してしまった。
が、原作小説は全然違う展開になるようで、結末が大胆に変更されているそうな。これまたビックリだ。
今度読んでみようか、でも読みたくないような。

正直、ドナー用の子供という時点で嫌悪感があり、かなり見るのをためらった末おっかなビックリで観始めたのだが。
誰もが正し過ぎず誰も悪くない、でもすんでのところで踏み外しそうな、この脚本はとても私好みだった。
そして出演者全てが、本当に好演
キャメロン・ディアスは歳を重ね、飾り気の無いこんな役もスンナリはまる女優になったが、わずかに見せる笑顔は変わらずキラキラと眩しくて、そこがまた切ない。
抗がん剤のせいで脱毛に悩む娘のために自らの髪を刈り上げる姿はショッキングながら胸のすく思いで見た。
なによりキャメロンさんの"落ち武者姿"が拝めるなんて、貴重(笑)。

人生を大切に生きなければ、と、素直に思えた。

笑の大学 

こんな純朴で意欲に燃える青年を、死地に追いやる戦争。

芝居の殆どが主演の二人だけ、という構成で、場面も殆ど検閲官の部屋を出ない。演じる方は大変だったと思うんだが。
役所さんはもう当然の安定感。そしてかなり、笑わせてくれた。ここまでやっちゃう!?ってくらい(笑)。
稲垣君は『十三人の刺客』でも良かったが、こちらは全然違うタイプを演じて、またいい。
要所要所で黒い瞳がチカッと光るのが、何とも印象的だ。
堅物の検閲官がだんだんと壊れてノリノリになって行く課程と、飄々とした喜劇作家がチラチラと見せるシタタカさや熱さのシンクロが絶妙で、「くだらないけど面白いっ!」いえ、くだらなくなかったです、ちょっとあざといくらいに。

三谷幸喜脚本。舞台が元の映画は私はあまり好みでない事が多いので、なかなか見る気になれず後回しになっていた。
『古畑』は大好きだったが、『有頂天ホテル』や『マジックアワー』は全然乗れなかったし。
正直二人の会話のみで進む構成は長く感じた部分もあり、笑いの要素も少々クドさを感じたが、軽妙な会話はさすがと言うべきか、予想のつく最後まで無理なくちゃんと引っ張ってくれた。
むしろヘンにいじらず舞台らしさをそのままにした作りには好感が持てたし、シーンの合間に差し込まれる戦時中の町の様子は映画らしい効果があって、楽しくも興味深く見た。
時間的にはほんの少しの廊下のシーンは、素晴らしく効果的。

本当に舞台的だし(舞台は三谷さんの最高傑作と呼ばれているそうだが)映画的ダイナミズムは全くない映画なので、わざわざ撮る意味があったのかという向きもあるとは思いますが。
舞台だったら私は見なかった、というだけでも、映画化の意味はあったと思うぞ。

笑の大学(byココアちゃん)

これ、舞台版をテレビで見た。三谷ものでは一番おもしろかった。
映画と同じ(と言っても映画版は見てない)完全二人だけのお芝居ですが。
三谷脚本の真骨頂のテンポが最大限に活かされて、しかも短めなのでちょうどいい。
映画では役所広司とスマップ稲垣だけど、舞台では西村雅彦と近藤芳正で全然綺麗じゃない二人なので返って中身に集中できる、というかごまかしがきかない、というか。
おもしろかったし、感動的でした。

特に終盤、検査官が、脚本の手直しを一緒に始めるあたりなどは見事。
泥棒を追いかけるシーンで、
官「ここ、ちょっと待て―!とありますが、待て!と言って待つ泥棒はいません」
脚「それもそうだ、どういう台詞にしたものか・・・」
官「・・・そっちまわれー!っていうのはどうですか?」
脚「うん!それ、いいね・・・次は・・・」
など、映画でも同じシーンあったかなあ。確かに三谷の映画もの、は私もだめなんだけどね。(コメディで2時間超はキツ
イ・・・15分くらいがいい)
無駄に豪華なキャラ。大金かけるとつまらなくなる法則也。

うふふ、昔知り合いの知り合いがいて、三谷舞台のいい席を何度か手に入れてもらったのだよ。

>

管理人のお返事:舞台版、綺麗じゃないなぁ…(笑)いいんです、舞台は舞台で。どアップが迫って来るワケじゃなし。
私は舞台を観てないんだけど、映画では完全に二人芝居ではなくて、外の風景とか廊下での警備員とのやり取りとか、短いけどとても良かったです。泥棒を追いかけるシーンは笑ったし、あの辺りで役人と(私が)心が重なってのめり込んで行ったように思います。

わらの犬(2011)

オリジナルは未見だが、なんとなくタイトルは耳にした覚えがある。
おお、サム・ペキンパーにダスティン・ホフマンね。観てみたいな。
で、リメイク版はしばしば、「え?今時これは?」という部分が残ってしまったりするモノではあるのだが。

いやーいやいや、いくら何でも(笑)。
ってくらいのエスカレートっぷり。
古臭さは否めないが途中から妙にリアルに感じ出したりもしたけれども。

インテリの都会者をJ.マースデンが好演。妻役のK.ボスワーズも綺麗で良かったが、あの妻の気持ちはだった。
そして嬉しい、ジェームズ・ウッズ!

オリジナルの舞台はイギリスの田舎らしいのだが、本作ではアメリカ。
アメリカ映画の田舎の描写を見るたびに、田舎って怖いなー、と思うんだけど。
いえ、多分日本でも田舎は怖いんだと思うけど、やはりアメリカはスケールが違うと言うか。
男連中はマッチョだし、銃は使い放題。土地も広くて見渡す限り人気が無いとか。
でも、田舎と都会の差も年々縮まっていると思うんだよね。
そういう意味でも、オリジナル版が作られた頃に比べると無理矢理感が増している気はする。
だってTVはもちろんネットもある現在、交通手段も格段に便利になってるし。

ま、それはそうと。
あの妻はナゼ脱ぐ!?
フラストレーション溜まりまくり、という表現なのかもしれないけれど、アレをやって事態が好転するハズは100%無いのに。
って言うかどう考えても悪化に拍車掛けてるよね…。
もしかしたらこの映画、そういう後先考えられなくなる程ストレス溜まった人達の崩壊を描くのが趣旨なのかもしれないけれど、それにしては"田舎者"達の攻撃が弱い(脱ぐまでは)。
レイプを夫に隠そうとする辺りも、現代的ではない(ましてや都会者だし…)気はするが…うーん。

でも『わらの犬』の解説を聞くと、主人公は都会から来た作家の夫でも元チアリーダーの妻でもなく、田舎でくすぶるしかなかった元学園のヒーローの、妻の元カレ。
彼の視点で見てみると、手を離れたと思ったら舞い戻ったGF、くっ付いて来た都会のムカつく野郎、という事で、それなりに整合性は取れてなくもないような気もする。
レイプの後で「俺の顔を見ろ」と繰り返すのが、印象的だった。

これも昔の名残を引きずってるのかな、と思ったのが、知的障害者に対する態度。物凄いモンがあった。
…実際のところ、現代でも"配慮"なんて上辺だけで、人目の無い場所ではあんなモンなのかもしれないが。(特に田舎では、と思うのは、偏見?)

なんだかんだ、終盤の銃撃シーンは引き込まれた。

藁の楯

おばさん臭い」という理由で殺される松嶋菜々子(爆笑)

なんかもうねー、最初から最後までくだらな過ぎて観てしまいましたよ。
豪華出演俳優陣が哀れな程のお粗末な内容。
登場人物が全員バカで「どうしてそうなる…」の連続。
そもそも現代の日本で、10億もらえるからと包丁一本持って殺しに来る人間がそんなにいるのか???
なんかお隣の国の映画みたいだった。

何度も「こんな奴守る必要あるのか」との問いが繰り返されるけれど、私の答えは最初から「無い」なので全く心が揺れないのですよ。
心情的には、社会正義も職業倫理もどーでもよろし。
「あ、しくじっちゃったー」で終わらせとけば良かったのよ。
もしくはブチ殺して、賞金もらうのが悔しいなら被害者遺族とかに全額渡すとか。
もちろん私の考え方は極端で、それでは話が成り立たないのはわかっているけど、じゃあこの話が成り立っているかと言うと違うと思うのよ。
大沢、藤原の大仰な演技も嫌いだしな。松島さんはタダの大根だし。
藤原達也ってまだ若いのに、なんでしょうかこの「またコイツか」感は。

三池監督は、当たり外れは大きいものの、こういうのは撮らないと思って信用していたんだがダメでした。
邦画の一番悪いところは、歌舞伎の愁嘆場よろしく「そこで皆黙って待機?」みたいに延々と長台詞のやり取りが続くところだと私は思っているんだが、何人も殉職者を出した凶悪犯を手錠一つで道路に転がして放置って。しかもあれだけ大人数の警官が周囲を取り囲んでいる中で刃物持って走って来る(ボコられ済みの)凶悪犯を誰一人止められないとか(笑)
警察バカにするにも程があるって。

もうなんか道歩いててウンコ踏んだ気分。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ

なんとも長〜いタイトルで、びっくりした。
ゴージャスな画面と、一世代数人の半生を追う物語。スケールも大きく、ストーリーもしっかりしており、迫力も切なさもタップリ。ノスタルジックなムードも一杯。いい映画でした。

なにがすごいって 、 子役がすごい。
大人になってからの俳優に、よくぞここまでとばかりに良く似た子供を連れて来ているのよ。
人物の人数が多いのに、一目で長じた先の配役が分かっちゃうくらい、デ・ニーロの子役はホクロまで付けてたし。ジェームズ・ウッズに似た子供!ってすごい。
紅一点の子役は当時アイドルだったジェニファー・コネリーで、この役は子役のキャスティングが先だったかも!?(でも成人後のエリザベス・マクガバン、やっぱり良く似ている。)
ジェニファーのバレエのシーンは、本当に美しく、「一目惚れ場面」にふさわしい。
もう一つ、美しいダンスシーンがあって、こちらは長じて成功した主人公が初恋のジェニファー(だった女性)と再会して、ゴージャスなホールで踊る場面。これも夢のように甘く美しい。
そして、それに続くのは、これまた印象的なタクシーでのレイプ未遂シーン。とほほ。
しかし内容はとほほでも、やはり美しい絵であった、ったくもう。

デ・ニーロはどこに行っても「名優」の名は欲しいまま、なんだけど、なんか日本人的には、あの演技ってクサすぎない?違うかな。
私はジェームズ・ウッズの方が好みだな、『サルバドル』も良かったし。

マフィア関係のせいか?『ゴッドファーザー』と並べて語られたりするけど、私はだんぜんこっちが好き。コッポラさんはディティールに凝り過ぎで、気が散るのよ。