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本文へジャンプ 2011年 7月31日 

 


 
    ◇ お盆(盂蘭盆会) ◇

       
陰暦7月15日。現代では多くの場合8月15日を中心に
         祖先の霊を供養するお馴染みの仏教行事です。
         仏弟子目連が餓鬼道に墜ちた母の霊を救ったという
         
『盂蘭盆経』にもとづく行事だといわれますが、
         仏教とは違った日本固有の農村行事や租霊信仰とも
         結びついて現在に至っている習俗で、
         
「お盆」という呼び方も、『盂蘭盆』の略ではなく
         先祖霊に供え物をする器を『ぼん』と呼んだことに
         由来するという説もあります。


   
2011.7.31 第十三話追記


      
第一話 【お盆とお施餓鬼】

      お盆の頃、多くの寺院で
『施餓鬼(せがき)法要』
      厳修されます。
      お盆は正しくは
『盂蘭盆会(うらぼんえ)』といい、
      お施餓鬼は
『施餓鬼会』と呼ばれ、
      もともとは別のものでした。

      お釈迦様の弟子・
目連(もくれん)が、
      【餓鬼道】に墜ちて苦しんでいる自分の母親を見つけ、
      お釈迦様から大勢の僧に供養することを教わり、
      その僧たちの力をもって母親を救ってもらった。

      ・・・という伝説に基づいて行われるようになったのが
      
『お盆』です。

      ちなみに、目連が僧たちに供養した日は、
      僧たちが3ヶ月の修行を終え、
      その
【力】が最高に充実したときでした。
      この日が
旧暦の7月15日で、
      この日をもとに現代のお盆の風習(8月13日〜15日前後)が
      定着していったとされます。

      一方、
『お施餓鬼』というのは、
      同じくお釈迦様の弟子・阿難(あなん)が、
      すさまじい形相をした焔口(えんく)餓鬼から、
      「お前も3日後には死んで、俺の姿のような餓鬼になるんだ。」
      と告げられることに始まります。
      驚いた阿難は、やはりお釈迦様に教えを請い、
      
陀羅尼(だらに)というお経(お施餓鬼で読まれるお経で、
      一種の呪文)を教わり、それを称えることによって
      無数の餓鬼に食物や飲み物を施し、
      死からまぬがれることができた。

      ・・・という伝説に基づいて成立した仏教行事です。

      簡単に言えば、
      お盆は
『先祖供養』
      お施餓鬼は
『無縁仏などへの供養』
      ・・・ともいえますが、基本はひとつ。

      
『人のために何かをして、幸せを感じられるあなたは
       とても、【幸せな人】なのです。』



      第二話 【目連の母は何故餓鬼道に墜ちたのか?】】

      『お盆のいわれ』について第一話で述べましたが、
      では、お釈迦様の弟子・目連の母は、
      どんな理由で餓鬼道に墜ち、苦しんでいたのでしょうか。

      目連の家は資産家でした。
      出家に際し、目連は母親にこう言い残していきます。
      
【乞うものは、すべて施すように】
      最初は目連の言うように、布施を続けていた母ですが、
      宝蔵が残り少なくなり、底をつきそうになったとき、
      『目連のために』と、
ひとつだけ残しておきました。

      ・・・これが【罪】です。

      我が子はかわいい。
      それ故に
エゴイズム(自己中心主義)が生まれ、
      親は【餓鬼】になってしまいます。
      だとすれば・・・
      “自分の親
だけを救おう”とするエゴイズムでは、
      子供もまた、自分の親を救うことはできないのです。
      餓鬼の世界に住む、
すべての親たちを救おうとしてはじめて
      我が父母を救うことができるのだ。

      そう
【悟り】を得た目連は、大勢の僧たちに供養をして、
      我が母を含むすべての餓鬼を救ってもらうことができた。

      ・・・と、伝えられています。


      第三話 【なが〜いお箸】

      お盆の精霊棚の脇に、
      
なが〜い【おがら】のお箸が置いてあります。

      あれを見るたびに思い出すのが、
      【地獄】と【極楽】の食事風景の話。

      まず、
【地獄】・・・

      お箸が長すぎて、
      つまんだ食べ物がなかなか自分の口元まで届きません。
      おまけに、肘と肘とがぶつかり合って大騒ぎ、
      そこいら中で
ケンカが始まっています・・・
      まさに“地獄”そのままの様相・・・

      一方、【極楽】・・・

      みんなニコニコ
笑顔で食事。
      「あなたからお先にどうぞ」と、自分の箸でつまんだ
      食べ物を、向かいにいる人に食べさせています。
      「今度は、あなたね。はい、どうぞ。」
      ・・・こうすれば、【なが〜いお箸】でも大丈夫・大丈夫・・・

      つまり、地獄にも極楽にも
『同じものがある』わけなのです。

      それを、
どのように使うかによって、
      その場所が
【地獄】にも【極楽】にもなる・・・

      ・・・そんな【お話】、いかがでしたか・・・?


      第四話 【お中元】

      
『中元』とは、本来は【7月15日】のことを意味します。

      中国の道教の教えから来たもので、
      【1月15日】の
『上元』、【10月15日】の『下元』とともに、
      『三元節』と称されるそうです。

      伝承(?)によると、
      この三元節は、それぞれ3人の神の誕生を祝った日で、
      【中元の神】には
『人を許す役割』があったといわれます。

      このあたりが、
      仏教の考え方『地獄や餓鬼道に墜ちたものたちを救う。
      =盂蘭盆・施餓鬼』に似ているという話もありますが、

      日本には1年をふたつに分け、
      1月と7月をその始まりとする考え方があったため、
      1年の半分を無事過ごせたことへの感謝と、
      新しい半年への期待を込め、先祖の霊に御供えをしたり、
      親しい方々へ贈り物を贈った週間が、
      現代の
【お中元】に結びついた、ともいわれるようです。


      第五話 【七夕(たなばた)】

      もちろん、中国に由来する『織り姫・彦星』の七夕ですが、
      一方で
【お盆】と関係の深い行事と考えられることもあります。

      今では8月が中心の【お盆】ですが、
      元来は7月15日(旧暦)を中心に行う行事。
      その
お盆の始まりの日を【7月7日】として、
      この日にお墓の掃除や仏具の手入れをして、

      お盆を迎える準備
をした、
      ・・・という話も残っています。

      【七日盆】という言葉もこれに由来するようですが、
      七夕の竹(笹)を海や川に流す
『タナバタ送り』も、
      お盆の
『精霊流し』と同じ意味の行事と考えられています。

      また、この日には
【水】に関する行事が多く執り行われるのは、
      お盆を前に、身に付いた汚れを落とす
【禊ぎ(みそぎ)】の名残、
      ・・・だといわれると、何となくわかるような気もしてきますね。


      第六話 【迎え火・送り火】

      地域によって諸説あるため、
      質問を受けるとちょっと困るのですが、
      一般的には
8月13日の夕刻に【迎え火】
      
16日の夕刻に【送り火】を焚くようです。

      もちろん、その目的は、
      ご先祖さまが
道に迷わぬようにと、足下を照らすこと。

      迎え火・送り火を総称して【門火】という言葉を使う
      地域もあるようですが、
      (この場合は玄関で火を焚くようですね)
      迎え火はお墓の前で焚きます、という話もあります。

      また、この火をまたぐと、1年を無病息災で過ごせる、
      ・・・という言い伝えがあったりしますし、
      やはり、その地域に密着して、
      いろんな【迎え火・送り火】があるようです。

      ご先祖さまの足下だけでなく、
      
自分自身の足下も
      しっかりと照らしていきましょう、ね!


      第七話 【生見玉(いきみたま)】

      その昔、お盆の頃になると、
      家を出ていた息子や娘が里に帰ってきて、
      一泊して両親と食事をともにしたといいます。

      ・・・これが
「生見玉」といわれる行事で
      「古事盆」と呼ばれることもあるそうです。

      
『親に元気な姿を見てもらう』

      ・・・という伝統的な儀式は、
      お盆休みを取って故郷に帰る、という形で
      現代に
受け継がれているのだと書物は続けます。

      ご先祖さまを迎え、偲び、尊ぶと同時に、
      自らの元気な姿を見てもらうことこそ
      文字通りに
【古事】と考えられていたのでしょうね。

      皆様も、良き
【お盆】を・・・


      第八話 【「踊り念仏」と「念仏踊り」】

      一遍上人や空也上人によりはじめられたという『踊り念仏』は、
      念仏や和讃を唱えながら踊り、悪霊を踏み鎮め、
      また追いやるものでした。
      (この
“踏む”という動作に“踊り”が使われたのでしょうね。)

      この宗教的な儀式が、
      「農耕儀礼」から「民俗芸能」へと転じたものが
『念仏踊り』で、
      唱える文句も、恋歌や数え歌など、娯楽的なものへと
      移り変わり、また、服装や持ち物も質素から華美なものへと
      変化していったとか。

      どちらも【盆踊り=今回の仏教質問箱】の起源とされるもの
      ですが、先祖供養であり、なおかつ
“お楽しみ”でも
      あったのですね。

      
『楽しく先祖供養が出来る』
      ・・・のが、本来のお盆だったのかもしれません。

      皆様も、良き
【お盆】を・・・


      第九話 【無縁棚(餓鬼棚)】

      お盆には、仏壇の前に
『精霊棚』をこしらえ
      先祖の霊を迎えるという風習がありますが、
      その際、精霊棚(盆棚)とは別に
      無縁仏のために
『無縁棚』をお飾りすることがあります。

      もちろん、供養してくれる縁者のいない「無縁仏」の霊を
      弔うことが目的ではありありますが、
      
『無縁仏が租霊に紛れ込まないように』との
      気遣いでもあったようです。
      また、盆踊りにしても、先祖霊と交歓すると同時に
      無縁仏を慰める意味もあったとか。

      古来、私たちの祖先は
      
『自分の先祖だけを大切にしていればよい』
      ・・・と、そんな自分勝手な考え方は
      
持っていなかったようですね。

      今一度、“我が身・我が世代”の
『あり方』
      しっかりと、振り返りながら・・・

      皆様におかれましても、良き
【お盆】を・・・


      第十話 【仏餉袋=ぶっしょうぶくろ】

      光松寺では
、お盆(盆せがき))に限らず、
      お彼岸のせがき法要やお十夜法要に際しましても、
      前もって
【仏餉袋】をお配りし、法要の時に
      ご持参いただくようにお願いいたしております。

      で、この【仏餉】、・・・

      中には「ぶっこう」と読みを誤解されている場合も
      あるのですが、正確には
「ぶっしょう」と発し、

      ◆【仏餉】=仏事において本尊などに供えられるもの
              仏供(ぶっく)・仏飯(ぶっぱん)に同じ

      ・・・と、解説されます。

      本来、
【餉】という文字は“かれいい(乾飯)”といって、
      旅などに出掛ける際の
お弁当を意味していたそうで、
      そこから“仏さまにお米をお供えする”=【仏餉】、
      ・・・という言葉が根付いていったのかもしれませんね。


      第十一話 【お墓のお掃除について】


      行数の関係で、箇条書きになって申し訳ないのですが、
      (『ひかり』は寺報ですので、この文章を載せる際、
       こう表現しました。)

      お墓、特に
『墓石』のお掃除に関しては、
      
『水洗い』が基本で、

      ◆水を含んだ
“スポンジ”“柔らかい布”
        丁寧に拭く。

      ◆水で表面を洗い、汚れを落としてから
        
乾いた布で拭く。

      ◆落ちにくい汚れは、タワシを使っても良いが、
        
金ダワシは墓石を痛めるので不可。

      ◆彫刻や文字の彫ってある場所は
        
歯ブラシを使うと良いが、
        無理矢理押し込むと墓石を傷つけることが
        あるので注意。
        (
割り箸でこするという方法もあるとか。)

      ◆
家庭用洗剤は墓石を痛めるので不可
        (墓石用の洗剤もあるが、
         あまり
お勧めはできません、と石材店の社長さん。)

      ◆お酒等を
直接墓石にかけるのも不可
        (特に国産高級石?には、
影響が強いのだとか。
         墓石に直接かけずに、墓地の周りの
地面
         まいていただくのが良いように思います。)

      あと、石材店さんのお話によると、

      ◆
“汚れ”は、悪いものでも、恥ずかしいものでも、
        
決してありません
        長い年月、大切にされてきた
“証(あか)し”でも
        あるのです・・・とのこと。

      “きれい”より、
“ていねい”に掃除すること。
      ・・・そう心掛けるだけで、十分なんですよ!



      第十二話 【卒塔婆=そとうば】

      
“とうば(塔婆)”や“そとば”とも呼ばれ
      墓地や法事などでもお馴染みの
『卒塔婆』は、
      サンスクリット語の
“ストゥーパ(=塔)”
      音訳したもので
      ごく簡単に説明すると、

       “遺骨を守る『塔(とう)』を模したもの”

      ・・・といったところでしょうか。

      その昔、人々はお釈迦様の
ご遺骨(仏舎利)
      
『塔』に祀り、そこに手を合わせていました。
      そして、このことから『塔』に対する
崇拝が生まれ、
      『塔』という
建物自体神聖化されていき、
      信仰の対象となっていったのです。
      その後、インドなどでは、
      エライお坊さんのお墓に塔を建て、それを
『供養』
      考えるようになっていったということです。

      つまり、卒塔婆とは、

       “大切な故人のために
       本来なら本物の塔を建てるところを、
       塔の形を模した卒塔婆をたてて供養する”


      ・・・そんな
“追善”の意味を持ったもの
      ともいえるのですね。

      光松寺の施餓鬼法要等で皆様が手にする卒塔婆は、
      
“水塔婆(みずとうば)”と呼ばれる、
      見た目はごく薄く短い卒塔婆ですが、
      実は、
“大きく立派な塔”を手の中に
      抱いているのですよ。

      良き
“追善供養”となりますように。


      第十三話 【おがら】

      “おがら”とは、皮を剥ぎ取った麻(アサ)の茎のことで、
      この麻は、古来より
清浄な植物とされ、
      悪いものを寄せ付けない(魔除け)とも
      考えられていました。

      そこで、お盆の始まりの日(13日説多し)に、
      墓地で
焙烙(ほうらく)と呼ばれる素焼きの皿の上で
      このおがらを焚き、清浄な空間を作り出して
      ご先祖さまの精霊を呼ぶ
“迎え火”に使われるように
      なったとのこと。
       (墓地が遠方の場合は、
        玄関前や庭先で迎え火を焚きます。
        また、諸事情で火を使えない場合に、
        代わりとして灯すのが
盆提灯です)

      そして、お盆の最後の日
       (15日説が多いですが、京都ではご存じの通り16日)
      に、お帰りになるご先祖さまを見送るため、
      またこのおがらで
“送り火”を焚くわけですね。

      なお、このおがらですが、

      
◇松明(たいまつ=迎え火・送り火)として
        使われる以外にも、

      
ナスやキュウリで作るお飾りの牛や馬の足

      
また、15pほどに切って御膳のお箸として、

      
その他、ご先祖さまが降りてくるハシゴ
        このおがらで作る、

      ……などとして使われることも地域によってはあると
      書物が解説してくれています。




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