2013年2月27日更新


所在地
〒355-0366
埼玉県比企郡
ときがわ町大野1229

幸築舎
代表 山口喜徳

TEL 0493-67-1779
FAX 0493-67-1780


伝統構法建築 幸築舎 大工 山口喜徳
伝統構法の概観

伝統構法

継承発展
させて
いく為に




説明

 伝統構法とは、縄文時代の遺跡にその高度な技術の一端を見ることができるのですが、長い時間をかけて育まれてきた日本の誇るべき技術です。文化の中でもとりわけ一般の人の生活の中に生き続けてきて今もあるという貴重な技術であり、大切なものです。それぞれの職人が、自然素材や気候風土と向き合い、それぞれ自分の仕事に責任を負いながら作り上げてきたのです。

 大工は、建物を解体するとそれを造った大工の考え方が解ります。ほんの細かな部分にも作った職人の考え方を捉える事ができるのです。そのような観点で昔からの建物の推移を見ていると、明治維新というものがどういうものであったかも捉えることができます。大切な文化(江戸時代まではあった技術と、そこにある素材と向き合う考え方、より良いものを求めていくものづくりの基本、誠実さなど)を捨てていったことが見て取れるのです。

 木と対話しながら作る事、そして、切れる刃物と、誠実な心で手がける事、これは全国共通の伝統構法の基本的考え方だと思っています。

 そして技術的に現代の構法と違うのは、「総持ち」という考え方です。部分を考える時でも全体への力の伝わり方を捉えており、全体を考える時も部分を同時に考えたりします。
 ですから、壁量計算的な考え方や、許容応力度計算的に根拠にしきれない細かな数値を使って、細部からだけ追っていく考え方で、伝統構法を捉えてはいけないのです。「大変危険だ」と強く申し上げます。限界耐力計算も含め、相応しい計算方法も、正しいと思える検証方法も、まだ見当たらないというのが当方の現時点での見解です。大先輩の中には、「計算などできるものではないのだから、する必要はない。」とおっしゃる方もおられますが、私どもは、今後においては、検証を行いながら、ある程度の建物の特徴を捉える為に計算は必要であると考えています。それは、住宅の場合は、個々に形や設計がかなり変わるため、大工としても計りきれない部分もあり、確認作業は必要だと思うからです。その計算方法の確立の為にも、研究の動向を見守っていきたいと思っています。

 それに関連しますが、木を見て作るものであるにも関わらず、「仕様を決めて安全確保をする」などという話が持ち上がっています。伝統構法大工は、耐震性、耐久性を向上させる為に、日々素材と向き合い細かい所まで努力しているのです。「仕様に沿って造れば安全」といえるような建物ではありません。「木と木を組んで木で締める」技術は、仕様として書き込めるようなものではないのです。

 大きな地震の被災地をいくつも見てきましたが、残っている建物は、壁があるとかないとかではなく、ちゃんとした仕事がしてあるもののように見受けられました。当方が「ちゃんとした」と申し上げる仕事とは、「仕上げが綺麗な仕事」とは違います。素材選びも含め、構造に手抜かりなく、細部までしっかりした仕事をしてあるものを言います。手を抜いたところは見事に地震の際に表に出てきてしまうのだということも知りました。地震の怖さを知り、絶対に倒壊することのない建物を目指さなければならないと、以前にも増して思うようにりました。

 伝統構法の建物は、歴史が証明しているように、長寿命です。巨大地震にも絶え風雨にも絶えて使い続けられてきたことが、各地で確認できます。それは、先人達が各地の気候風土に合わせて工夫してきた結果です。

 「伝統構法」という言葉を、利潤追求や地位獲得の道具として使っている人たちも見受けられます。素材と向き合うことのない仕様規定型のものを、”伝統的構法”という名称で国と共に法的位置づけの検討をしている人たちもいます。本物の「伝統構法」がわからない人たちによって行われている為に、「伝統構法」を「伝統的構法」に含めてしまって、本来全く別のものでありながら、一つにしようとしています。仕様規定で計算せよとなった場合には「伝統構法」建築はできなくなる可能性が高いので、私どもは、それをとても懸念しております。

 私どもは、本物の文化の継承・発展を実践していきたいと思っています。間違った法規制により、誠実な大工達が仕事として本物の伝統構法技術を、継承発展させることができなくなる可能性があります。多くの方々に正しくご理解頂けることを願うばかりです。

仕事
 伝統構法とはいっても、継承だけをしているのではなく、常により良いものを探求しています。ですから、次の仕事では、必ずと言っていいほど、前の仕事を改善して行う部分があるのです。けれども、それは進歩として受けとめ、ご理解頂きたいと思います。
 伝統構法の建物を東日本で初めて限界耐力計算を使って合法的に建てました。2棟目、3棟目も、石場立ての家の建築確認を通しました。構造計算の不備により、納得のいかない部分ができる可能性もあります。計れていない大切な部分も見えてきています。
 おかしいと思ってもそうせざるを得ず、責任は当方が追わなければならず、結果的に建て主様に対して、心苦しい思いで納得して頂かなければならない事態は無くしていかなければなりません。一緒に検証していく事が一番ですが、それが間に合わずとも、おかしな所は「おかしい」と国に訴えるようにしていきたいと考えていますし、本来現場の声を、国や研究者が聞く場があってしかるべきだと思っていますので、そういった場の設置を、呼びかけ続けたいと考えております。

誠実
 兎にも角にも、誠実に行動していく事だと考えています。
伝統構法技術
幸築舎の仕事〔材の使い方、組み上げの考え方、工夫〕
 まず、これを掲載するにあたり、誤解が生じる事を恐れますので、一番にお伝えしたい事があります。以下は、あくまで現時点での幸築舎山口の考え方であり、文章としてでは伝えきれない事もあります。「間違っているかも知れない」という疑いをもってご覧頂きたいと思います。当方としても今後書き換えとなる内容もあると考えます。これは、常に山口も、「間違っているかも知れない」、「もっといい方法があるかも知れない」と思って仕事をしておりますので、皆様もその視点を外さないで下さい。
 「木によって、その状況・条件によって、相応しい方法を考える。総持ち構造である。」というのが、伝統構法にとって、大変重要で大切な基本的考え方としてあると考えています。短絡的な考えで、「真似」をしないようお気をつけ下さい。

 当たり前という事も多いですが、こういったことも書き入れる事にします。

総持ち構造の説明

 例えば田の字形の家があったとします。真ん中の柱が地震の時どのような動き方をするかを考えてみましょう。これまでの検証方法では、水平加力実験を行って考えてきました。一つの壁平面を押したり引いたりするのです。けれど田の字で立体として考えた時、もし地震時の力を再現するように水平加力実験を行うとしたら、何処を押したり引いたりするのでしょう。おかしな話ではないでしょうか。真ん中の柱への影響は、全ての部分の材の性質、大きさ、組み方、仕事の精密さ、等々と関わってきます。そして、その上、梁組みがどのように行われているのか、天井の張り方はどうか、脚固め、大引の組み方、根太の配り、床の張り方等々もそれに影響を及ぼすはずです。さらに上部からの重さがかかって揺れるのであり、それぞれの壁の重さも大きく関係します。地震の波の形も色々で、それによって建物の振られ方が違ってきます。従って、水平加力実験の結果だけを受けて計算できるものではなく、また、その壁量計算的なものの考え方は、伝統構法には相応しいものではないのです。振動実験を行わなければ、正しい結果が得られないと私どもは考えています。(大工仲間から、航空工学のような考え方が必要ではないのか。建築の構造の世界は遅れているらしい、という話しも出ています)。大工は常に立体で考えています。動きの伝わり方を考えて、どこかでつっかって悪さをしないか、力が全体に伝わらず途切れてしまったり、その力によって継ぎ手や仕口が壊れたりしないか等々色々考えています。細部から全体へ全体から細部への往復思考を繰り返すというのはそういう事です。こういった考え方で2階、そして屋根まで、家全体を考えていくのです。そしてそこには、常に、木との対話が必要となるのです。ですから、木を扱わない者にはわからないと申し上げているのです。
 もう一つの例として、木の椅子があったとします。仕口をゆるゆるに作った椅子と、仕口をきっちりしっかり作った椅子では、使っていてどちらが壊れ易いでしょうか。伝統構法の家は足元をとめないのが基本だと私どもは考えています。この条件で、椅子と同じ様に考えた時、ゆるゆるで揺れていいんだという考えの人が出てきていますが、本当にそうであるか、木を扱っている方なら想像がつくのではないでしょうか。材の乾燥により、どうしても長い年月のうちに少しずつは、ゆるんでくるものです。それを始めからゆるく造るなどという事は当方は考えられません。それから、木の椅子の構造を考えた時、仕口から仕口への筋交いが入っているものは多分殆どないと思います。椅子は家具の中で一番強度を保つのが難しいものです。それでも強度を保つ為の方法は筋交いではないのです。



組み立て方を考える時には、大黒柱の所から、下から上まで、立体で考えていく。
山口は模型を作りながら決めていく。
あくまでも組み方によるが、竿接ぎは基本として、放射状にオスを外側に向けていく。
ある部分を組んでおいて、それを組み上げる所は、初めから決めておく。


脚固め
梁方向、桁方向共に通したいので、格子状にワタリアゴに組んでいる(全体でもたせる為)。
脚固めの材も、根太も、垂れ木に使わないと、束が浮いてきてしまう。
材を欠き取るために使う方向に更に注意をしないと、下の材は、上に向かって反り上がろうとするので、気を付ける。
脚固め
壁がない所は、脚固めに大きい材(予算がない時にはダブルで)入れる。

脚固め
大きな材を通せない所は補強として柱の横にダブルで入れてみたが、効いているかどうか(有効に働くかどうか)は解らない。
脚固め
ダブルに重ねる場合は、ズレ止めで、ダボを入れる。束のホゾで一体化させる。


通し柱で胴差しの材が切れるので、隣の材では同じ列で切れていないように通す。貫が通せるようなら、切れた胴差しの上の貫はなるべく通す。


2階の柱を差シ鴨居の上から立ててみた。(MT邸では旧家もそうしてあった。)
途中の胴差しが差せる事で脚固めと同じ様な効果が期待できる。


長いホゾの鴨居はかなりな揺れ止めになる。込み栓で引き付けると更に効く。
ホゾはなるべく抜いて、少しでも伸ばす。
どこの部材でも同じ列では続けて接がない。
なるべく、地震時に力を分散できるように、全体でもたせるように考えて組み方を決める

玄関の吹き抜け部分
変形を押さえる為、梁組みを多く入れた。
これは気を付けないと、悪さをする場合も考えられる。
反省として、差し口は胴付きが付くかどうか、刻みの段階で確認しておけば良かった。その方が、建て方時、緩ませたまま、不安なく組んでいける。


玄関の手前の差し鴨居はむくりで、奥のは垂れ木にしている。
上からの重さがかかる所は下がらぬように木を使い、足元が浮いてしまうと困る所は下に押し付けるように使う。
明治初期に建てられた旧家も、そのように木を使ってあった。
尚、その鴨居の下の○の付いている半柱は、鴨居の乾燥による縮みや浮き上がりをさらに警戒し、少々寸法を長めにしてある。
特に大きい材の乾燥による縮みを考慮し、それと関わる柱や束の長さをほんの少し長めにしている。材の乾燥の具合や材の性質をみながら予想をたてる。
良く考えないと、大変な事になるので注意。
貫はなるべく長く通し、止める時でも柱5分残しで、なるべく深く入っているようにする。


縦に貫を入れる(差し鴨居上小壁部分など)

差シ鴨居は、鼻栓にすると後でも締められるので胴付きがよく付く。
ホゾの小口に割れが入らないようとりあえずボンドを塗ってある。後日削って、透明な塗料を塗る。
込み栓位置を柱の真ん中にしているが、胴付きを付かせるのには、柱の乾燥による縮みがあるので、これよりもっと胴付きに寄った方が良く付く。
込み栓の大きさとその材の質、柱の大きさと差シ鴨居のホゾの大きさや長さとの関係で、良い位置が決まる。
(が、よく聞く水平加力実験等の柱の引き抜きをみる込み栓実験の結果は、検証の仕方が違うと思っている。)


梁組み部分
ダボの上下に楔を打ち込んで、上下のお材を密着させる。
垂木はビスではなく釘止め
(今回は6寸釘)
合板は使わない
ワタリアゴの上下の材を密着させる為、コーチボルトも使用している。
なるべくなら違う方法を取りたい。
沓石の高さ調整の為、薄い鉛の板を入れた。
基礎屋さんが、お寺の改修工事でこのように使用したと言って、余った鉛の板を持ってきてくださったので、それを使用した。
社寺では桁の材の反りを、外側へ孕んだ状態に使うようだが、山口は古い建物の解体の経験から、住宅の場合は逆に内側に反った状態で使う。梁がアリ掛けの場合は殆ど外れていたからで、小屋組みがどうしても緩んで屋根が開くような力が働く為だろうと判断しているからだ。社寺の場合は軒が沢山出ているので、その軒の重さで桁を逆に内側へ押し込む力が働くので、逆に使うのかも知れない。いずれにしても、小屋組みはしっかり造らなければならないと思っている。飯能の高山不動の小屋組み等は、何重にも組んであり、見事なものだ




今回、柱、束の下を全て石場(ピンコロ)立てにしたが、雨水の浸入を恐れ、ピンコロの高さを少し高めに、上部面積も小さめにとった。本当は、天然石で、周りが緩やかに下がって水が落ちるようになっているのが望ましい。が、予算の関係でそこまではできなかった。次の現場では、外側一周だけピンコロにして、内部は一面持ち上げる事にしている。


下のがその改良型だが、更に改良が必要な為、次回はまた変える。

更にその下はさらなる改良型
外周は御影石使用


床下地は斜め張りにする


こきホゾ
金輪接ぎ込み栓楔締め 


後、込み栓・楔は少し出した所で切り落とす
(面で切ってしまうと抜けやすい)




上記の為の事前実験(カケヤで叩くという荒っぽいやり方)アリをとても大きくしても、楔を打った方に巻け、抜けてしまう
渡りあごの絞まりを良くする
見えずらいですし、無駄かも知れませんが、
ホゾ取りの機械を調整してホゾの付け根を少しだけ残してみました。
これは今後発展させたいものです。








大径材は早く乾燥をさせ、狂わせてから使いたいので、長手方向にも、ホゾの太さ方向、継ぎ手の厚さ方向等にも余分を取って、墨を打ち、挽いて置きます。

ホゾ穴も余裕をみて、穴を空けて、置いておきます。

これにより、材が早く乾きます。
材が狂わせておいてから、もう一度正確な墨を打ち、加工を行っていきます。







下のような角のみ機で、ホゾ穴を空けますが、材料を強く挟むので、材料に割れが入っている場合、別な場所の割れが広がる事があります。それを防ぐ為に、割れを埋めます。
(これは、乾燥が進むとまた開いてきますので、作業用のものであり、割れ隠しにはなりません。)